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すると葵さんは再び…‥
「おぇっ…ゲホッ…」
「佐藤…‥紺野、授業は出なくていいから佐藤の傍にいてやれ」
松下の意外な言葉だった。
「はっ、はい」
すると松下は、すれ違いざまに僕の肩に“ポンッ”と手をのせた。
しばらくすると葵さんの嗚咽が聞こえなくなった。
それから直ぐに葵さんは、ハンカチを口にあてながらトイレから出てきた。
「葵さん…大丈夫?」
「紺野さん、どうして?」
そう言った葵さんの顔色は真っ青で、かなり具合が悪そうだった。
「松下が授業はいいから傍にいてやれって…‥」
「そうなんですか…ありがとうございます」
葵さんは、この未来は見えていなかったようで、意外にも驚いていた。
そして、手洗い場まで行くと水を口に含んですすぎ始めた。
そんな後ろ姿を眺めていたら、葵さんがどんな未来を見て、こんな状態になったのか知りたくなった。
きっと葵さんに触れれば、僕の身も危険にさらされる事もわかっていた。
でも僕はこの時…愚かにも、葵さんだけツライ目にあわせる訳にはいかない…そう思ってしまった。
いけないと思ったけど僕は、葵さんの体に触れてみた。
ドンッ!?
佐藤家のマンションで葵さんの体に触れた時と、全く同じ衝撃に僕は襲われた。
そして、頭の中をとてつもないスピードで映像が流れた。
ダメだっ…‥
やばい…‥
このままじゃ…意識が…‥
「紺野さん!」
葵さんが僕の名前を呼びながら体を揺さぶってくれているのはわかった…。
だけど、この映像を止める事が出来ない…。
次第に意識が遠ざかっていくのがわかった。
「紺野さん!」
パシッ!?
僕を呼ぶ大きな声と同時に、左頬に何かがぶつかって割れたような衝撃と破裂音がした。
ハッ!?
それと同時に、僕の薄れかけていた意識も一瞬で目覚めた。
目を見開いて横を向くと、右手をおさえている葵さんの姿があった。
「ごめんなさい…。危険を感じたので、叩いちゃいました」
どうやら葵さんは、僕の頬を叩いて呼び戻してくれたらしい。
「僕は平気です。それより手は大丈夫ですか?」
「人を叩くの初めてだったんです。叩かれる方は痛いに決まってますけど、まさか叩く方もこんなに痛いなんて思ってもみませんでした…」
「葵さんの苦しみに比べたらこんな痛みは、大した事ありませんよ」
「本当にごめんなさい…」
「いいんです…」
「あの…‥もしかして私に触れた事で何か変なものを見ませんでしたか?」
「・・・・・。みっ‥見ました。未来の映像を…‥」