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ひより
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鷹槻れん

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世羅 鈴🎨🎤
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#ロマンスファンタジー
百はな🍑
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悲痛な声が漏れた途端──。
本来のソフィアの背後に、鏡の破片のような光景が次々と浮かび上がった。
断頭台へ送られる姿。 炎に包まれる姿。 毒に倒れる姿。 暗い路地で、追手に襲われる姿。ほんの一瞬で切り替わっていく、無数の悲惨な結末。
ぞくりと背筋が冷えた。
(これ……全部、この子の人生なの……?)
「ある時は、公爵家からアンナを連れて逃げたわ」
彼女は、自分の華奢な腕を抱きしめる。
「でも、突然土砂崩れが起きて馬車が転落して……結局、連れ戻されたわ……」
「…………」
「またある時は、カイル殿下に尽くし、聖女とも仲良くしようと努めたわ。でも……殺人事件の濡れ衣を着せられ、処刑されたわ」
「……何をしても、シナリオ通り死ぬってこと?」
問いかけると、彼女は小さく頷いた。
「ええ。そして死ねば、必ず結婚式の前日に戻されるの」
(何よ、それ)
(無理ゲーにも程があるじゃない)
「……破滅エンドを繰り返したってこと?」
「ええ、100回もね」
「……100回も!?」
彼女の瞳から、涙がこぼれ落ちた。
「もう、どうしていいのか分からなかったの……」
「でも――101回目だけは、違った。あなたが来てくれたから」
「……私?」
「あなたなら……私の運命を、変えてくれるかもしれない」
「……事情はわかったわ」
その手を取り、力強く握りしめた。そのままぐいと引き寄せ、震える肩をしっかりと抱きしめる。
「安心して。私は前世で一度死んで、せっかく二度目の人生をもらったんだもの。今度こそ、好き勝手に生きさせてもらうわ」
「……え?」
「101回目は、このクソみたいなシナリオをブッ壊して絶対に勝たせてもらう。城からお宝をいただいて、一生遊んで暮らすのよ!こうなったら最高の隠居ハッピーライフを手に入れてやるわ!」
私は不敵な笑みを浮かべて見せた。
「…………ふふっ」
そこで初めて、本来のソフィアがくすりと笑った。
「……あなたが来てくれて、本当によかった」
「任せなさい。こう見えて私、しぶとさだけが取り柄なのよ」
本来のソフィアは、初めて救われたような表情を浮かべ、光の霧となって消えていった。
***
「――ソフィア!」
「…………」
「ソフィア! 目を開けろ!」
誰かが、叫ぶように必死で私の名前を呼んでいる。
「……はあ、うるさいわね……」
ゆっくりと瞼を開ける。
「っ!……目が覚めたか……!」
視界が戻ると、そこには青ざめた顔のカイル殿下と、困惑しきった様子の侍医がいた。
「ソフィア……」
カイル殿下は、私の手をぎゅっと握りしめている。その指先は、小刻みに震えていた。
(……えっ)
(この人、そんな顔もできるの?)
少し前まで、「性悪女」扱いしていたくせに。
「……よかった。本当に……無事で、よかった……」
「…………」
(……なによ。そんな顔されたら、調子が狂うじゃない)
「……信じられません」
侍医が、脈を確かめながら呆然と呟いた。
「本来、あの至宝に施された呪いに触れて、無事で済むはずがないのです」
「…………呪い?」
「皇族の血を持たぬ者が無断で触れれば、強力な術が心身を蝕み、命を落とすことさえあります。それなのに妃殿下は……傷一つない。まさに、奇跡です」
カイル殿下が、深く安堵の息を吐く。
「……すまない、ソフィア」
「何がですの?」
「宝物庫の至宝には、盗難防止のための『呪い』と『追跡魔法』が施されている」
「…………はあ?」
「万が一持ち出された場合でも、必ず場所を特定して回収できるようになっている」
「…………」
カイル殿下は苦々しげに眉を寄せた。
「俺が詳しい説明を怠ったばかりに、お前をこんな危険な目に……。まさか、お前が触れるとは思わなかった……」
(ちょっと! そんな大事なことは最初に言いなさいよ! 危うく二度目の人生も即終了──ゲームオーバーするところだったじゃない!!)
とは言っても。
(盗もうとして勝手に触った私も悪いけど……)
「しかし……妙ですな」
侍医が腕を組み、首を傾げた。
「妃殿下には、呪いが作用した形跡がまったくありません」
「……どういうことだ?」
「何らかの力によって呪いが相殺されたとしか考えられません。これほど強力な術を完全に退けるなど……まさに神の加護としか」
……私は知っていた。あの瞬間。宝物から放たれたどす黒く濁った何かを、内側から弾き飛ばした圧倒的な光があったことを。
(――殿下は、あの光に気づいていない?)
――意思とは関係なく溢れ出した、あの力。どう見ても、魔法にしか思えなかった。
この世界で魔力を持つのは、原則として皇族の血を引く者だけ。ごく稀に平民にも魔力を持つ者が生まれるけれど、治癒と浄化の力を使える平民は、聖女シェリーただ一人とされている。
(でも、私の光は若草色の聖女の魔法とは少し違った。私の瞳と同じ――鮮やかなエメラルドグリーンの光だったわ)
もし、あの力に『呪い』を打ち消す力があるのなら。呪いを浄化して、異世界版GPSこと追跡魔法さえ解除してしまえば……。
(……あの宝物庫、私専用のATMにできるじゃないの!)
***
ちなみに――。
あの光が本当に魔法なのか、当然試してみた。
「…………」
手のひらを前に向ける。
(さっきみたいに……!)
(出なさいよ!)
(なんで出ないのよ!?)
宝物庫で感じた感覚を思い出して念じてみるけれど……。
それでも――。
何度試しても、光どころか火花一つ出なかった。
(……じゃあ、あれは何だったのよ!?)
こうなったら――。
(あの光の正体――絶対に突き止めてやるわ!)
コメント
1件
うわあ、第9話、めちゃくちゃ熱かったです……! 100回もの死のループを経てきたソフィアの告白、そして「101回目は勝たせてもらう」という主人公の決意に震えました。宝物庫の呪いと追跡魔法の設定、伏線として美しいですね。二人のソフィアが対話する鏡の破片の描写も、この世界の構造が浮かび上がってきて惹き込まれました。最後の「ATMにできるじゃないの」には思わず笑顔に。次が待ち遠しいです!