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第七十九話 紅葉の約束
十一月に入った。
街の景色は少しずつ秋色に変わり、
木々の葉も赤や黄色に染まり始めていた。
湊は大学からの帰り道、
駅の窓から外を眺めていた。
「そろそろかな」
ふと思い出したのは、
紬との約束だった。
――今度は秋っぽい写真撮りたい。
あの電話から、もう一週間。
湊はスマートフォンを取り出した。
『紅葉、見に行かない?』
送信してから、
すぐに返信が来る。
『行きたい!』
その短い言葉だけで、
湊の顔が自然とほころんだ。
休日。
二人は紅葉がきれいだと聞いた公園で待ち合わせた。
「お待たせ」
「ううん。俺も今来たところ」
紬は辺りを見渡した。
「すごい……」
赤や黄色に染まった木々。
地面には落ち葉が広がり、
風が吹くたびに葉が静かに舞っている。
「写真撮りたい」
湊はすぐにカメラを取り出した。
「やっぱり湊はそれだね」
「だって、今日の景色残したいじゃん」
「じゃあ、いっぱい撮って」
二人はゆっくり公園を歩いた。
湊は紅葉だけではなく、
落ち葉を拾って笑う子どもたちや、
ベンチで話している人たちも撮った。
同じ紅葉でも、
そこにいる人によって景色の見え方は違う。
それが面白かった。
「ねえ、湊」
「ん?」
紬が一枚の写真を覗き込む。
そこには、
木漏れ日の中を歩く人の後ろ姿が写っていた。
「こういう写真、好き」
「ほんと?」
「うん。なんか、その人にも物語がありそう」
その言葉を聞いて、
湊は少し嬉しくなった。
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#四角関係
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自分が残したいと思っているものを、
紬も感じ取ってくれている。
それが何より嬉しかった。
しばらく歩いたあと、
二人はベンチに座った。
「最近、どう?」
紬が聞く。
「忙しいけど、少しずつ慣れてきたかな」
「写真のほうは?」
「この前応募した企画、まだ結果待ち」
「そっか」
紬は頷いた。
「きっと大丈夫だよ」
「根拠ないじゃん」
「でも、湊が撮った写真だから」
「それ、根拠になってる?」
二人で笑う。
そして、少し静かになった。
湊は紅葉を見上げながら言った。
「俺さ、最近思うんだ」
「何を?」
「写真って、撮った瞬間だけじゃなくて、そのあとも残っていくんだなって」
紬は黙って聞いている。
「今日の写真も、何年か経ってから見たら、今日のこと思い出すんだろうなって」
「うん」
「だから、これからもいっぱい撮りたい」
「私も、いっぱい残したい」
その言葉を聞いて、
湊はカメラを構えた。
「じゃあ、今日も一枚」
「うん」
二人は紅葉の木の下に並んだ。
タイマーをセットする。
カメラから少し離れる。
シャッターが切られる。
一枚。
二人の後ろには、
赤く染まった木々が広がっていた。
「来年も見に来ようね」
紬が言った。
湊は少し驚いてから、
笑って頷いた。
「うん。来年も」
来年。
その先にも。
そんな約束を、
当たり前のように口にできることが嬉しかった。
帰り道。
湊は今日撮った写真を確認する。
その中には、
紅葉だけではなく、
二人が笑っている写真もあった。
湊はその一枚を見ながら思った。
景色は季節が変われば、
きっと姿を変えていく。
でも――
今日感じた気持ちは、
写真の中に残せる。
それが、写真の好きなところだった。
📷 Photo.079「紅葉の約束」
撮影日:11月8日
今年の秋を残すだけじゃない。
「来年も一緒に見よう」
その約束まで写し込んだ一枚。
――次回、第八十話「夢の途中」へ続く。
コメント
1件
第79話「紅葉の約束」、読み終えたよ〜〜!!🍁📸✨ うわあ、この話エモすぎる…!!「来年も見に来ようね」って紬ちゃんが言って、湊くんが「うん。来年も」って返すところ、マジで心臓ぎゅってなった😭💕 当たり前のように未来の約束ができるのって、それだけで特別だよね…! あと「今日の写真は何年か経ってからも今日のこと思い出させる」っていう湊の言葉、写真を撮る人ならではの視点で素敵だった〜!木漏れ日の中の後ろ姿、めっちゃ見たい…って思ったよ🌟 次回「夢の途中」も楽しみにしてるね!! クラリスさん、今回も素敵な話をありがとうございます🌸