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今年度のトライウィザードトーナメントも無事最終日を迎えた。ホグワーツ生一同は、各校の別れを見送ろうと、中庭に集まっていた。
静まり返ったレイブンクローの談話室。暖炉の火が弾ける音だけがこだましている。ソファに腰掛ける生徒が1人。有古くんだった。
イ「ぁ……」
思わず立ち上がった彼と、バチりと目が合う。
イ「あ、…あの……」
あの夜のことを思い出すだけで、涙が溢れてきた。私の潤んだ瞳を見た彼は、取り乱しているようだった。
有「ぃ、イヴァンナ…!?」
イ「ごめんなさい、わ、私…パーティー、台無しにして、」
狼狽える有古くんの袖を引っ張って、嗚咽を堪えて謝罪の言葉を述べようとした。
有「な、泣かなくていい!!顔を上げて…」
イ「…怒ってない?」
有「怒らない!」
イ「わたし、嫌われちゃったかと思った…せっかく、すきって、」
_____
あの夜の熱がぶり返したように、顔が火照るのを感じた。確かあの時、気持ちを彼女に伝えた時、少しはぐらかされてしまったような気がした。
有「もう一度言わせてくれ、イヴァンナ。君が好きだ。あの場の勢いなんかじゃなかったと、証明させて欲しい。」
イ「うん…私もね、好きだよ。有古くんのこと。」
有「ほ、本当に…?」
イ「信じてくれないなら、キスだってできる」
有「信じるっ!…信じたい……」
彼女から視線を逸らした瞬間だった。彼女からキスをしてくれた。
イ「私、本気だよ」
彼女の澄んだアイスブルーの瞳に、嘘の濁りは一切なかった。ああ、そうかと心の中で安堵したことを、彼女は見逃さなかった。彼女はふっと微笑してから、窓の方へ歩いていった。
イ「みんな帰っちゃうね」
ボーバトンとダームストラングの生徒たちが、ホグワーツの面々に見送られていくところを見ながら、彼女はそう呟いた。彼女の台詞に呼応するように俺も窓へ近づき、窓から見下ろすように答えた。
有「降りようか?自分らも」
イ「んー?一緒にここにいようよ」
彼女の提案を、俺は断らざるを得なかった。
トライウィザードトーナメントも無事終了し、ホグワーツは修了式を迎えた。生徒は各々、有意義な夏休みを送ろうとしている。
イ「おはよう、アニ」
眠たそうに目を擦りながら、ルームメイトのアニが起きてきた。
アニ「おはよ、」
各々準備に取り掛かっていると、アニが声をかけてきた。
アニ「そういえば、あんたに渡しそびれてたものがあるんだ」
イ「渡しそびれたって?」
記憶を逡巡させるが、何も思いつかない。
アニ「これ。」
白い布に包まれたそれを受け取ると、はっとした。
イ「こ、これ……」
あの日粉々に割れたはずの髪飾り。元通りに、ヒビもキズもなくなっていた。
アニ「友人の伝手でね。直してもらったんだ」
イ「ありがとう…ありがとう!」
アニ「お礼を言うなら友達に言ってもらえる…?」
後で何か持ってお礼に行かなきゃな。
大広間は既に賑わっていた。すると、有古くんと谷垣くんが一緒に朝食を取っているのが目に付いた。2人は本当に体格がいいから、どこにいてもすぐ見つけてしまう。有古くんもこちらに気がついたようで、かなり控えめに手を振ってくれた。それに応じて私も小さく、かといって彼に見えるくらいに大きく手を振り返した。
アニ「なんだ、上手くいったんだね」
イ「へ!?」
アニの質問の真意がわかった瞬間大焦りしてしまい、そんな私を見た彼女は一瞬笑って先に行ってしまった。