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もしあなたの大切な人と、自分の個性が入れ替わってしまったなら____
これは1人の異能者によるちょっと面倒くさくも別に誰もダメージを受けていない、ある事件の記録である。
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太宰side
あれ、なんか今日はシャキッとしてる……いつものだるさがない……そして何より……”俺”を確実に形作っているあれが、確かに昨日まであったはずのあの気持ちが抜け落ちている____
中也side
なんだか今日はだるくて…端的に言うとサボりたい。真面目も取り柄の1部だと思っていた”私”がこんなことを思う日が来るなんて……休むか……?取り敢えず首領の所に行って、、上がらせてもらおう、そうしよう。なんか、川が見たい気分だ。
国木田side
「あれ?太宰さんが帽子被ってるなんて珍しいですね?今日なにか特別な仕事でも入ってるんですか?」
「気分だっただけさ。」
今日の太宰は、今思えば服装からおかしかった。いつもの砂色のコートではなく、しっかりジャケットを羽織、ループタイではなくネクタイを締め、ご丁寧にネクタイピンまできちんととまっている。いつもお世辞にもセットされているとは言い難い髪はワックスで整えられ正に理想のポートマフィア幹部といった出で立ちである。
「いや、太宰……それは、なんというか、威圧感、というか……?」
「いつもビシッとしろ!って言うのは国木田くんじゃないか。俺もこうすると、結構良い男だろう?」
俺……?おかしい。太宰なのに、目の前にいるこの男は確かに太宰なのに、なんだか中身が違う誰かに乗っ取られているようで……
中也side
『首領、今日は、、もう上がらせていただいても宜しいでしょうか?』
「君、本当に中也くんかい?」
何を言っているんだ……確かに今日は少し心持ちが違うが……
「その格好、太宰くんを思い出すねぇ。きちんとセットしきれていない髪に砂色のコート、ループタイ。まぁ、中也くんにも体調の優れない日は有るだろう。もうゆっくり休みたまえ。」
と、いうことで首領のお許しも出たことだし。なんか、こう、彼奴じゃないけど、川、川行きたい。
太宰side
「社長!俺今日早退します!」
「あぁ……、、俺……?まさか、」
何かに気づいたらしい社長には目もくれずに普段は死にに行く川に、今度は人助けのためにダッシュする。きっと、”手前”はそこに居るんだろう?
中也side
川まで来てしまった。彼奴、こんな絶望的な気持ちだったんだな。ただの馬鹿だと思ってごめん……もう、虚無感という言葉じゃ片付けられないぐらい、正に絶望の地獄に叩き落とされたような、そんな心持ちで、ゆっくりと川へ入っていく。ああ、周りの音が、喧騒が、何一つ聞こえなくなる……大事にしていた帽子、被らない日はなかった帽子、なんで被る気が失せたんだろう……もう、何も、誰もいない……自分だけの世界に……
「中也!」
自分を呼ぶ声と共に、この静けさに似つかわしくない、バシャバシャと音が立てられる。もうちょっとで意識が飛びそうだったのに……誰かに引き上げられて……て、、あれ!?俺なんで死にそうになって……はぁ、、!?
「中也!くたばんないでよ!こっちの寝覚めが悪いでは無いか!」
『それが死にかけの人間にかける言葉かよ』
「自殺は私の専売特許だ!君が奪うんじゃないよ。」
『俺、誰かに操られるみたいにここに来て、川に入った。理由は分からないけど、なんか、凄い心が冷たくて、暗くて、痛くて……』
「やっぱりそうだね。」
『やっぱり?』
「そう、君は異能にかかっていたんだ。心当たりはないかい?昨日異能者にあってたとか」
は……!彼奴か……俺は昨日取引の現場に行っていた。そこで何となく肩を叩かれたんだ。その時は何も変化がなかったから忘れていたけど。
『此奴、』
その後俺は太宰に取引のことを全て話した。太宰は見当通りとでもいった表情で、、
「此奴の異能は、【自分の1番愛する人の個性と自分の個性を入れ替える異能】」
『え、、?でも、太宰と入れ替わって…』
「ちゅ〜やぁ〜?私の事好きなの〜?」
『す、好きじゃない!』
「ほんとに?この際だ。素直に教えてくれ給えよ」
『その、、あの、、』
「ん?」
太宰は餓鬼の話を聞く様にしゃがみ、俺よりも少し目線を下にする。いや、此奴はそろそろ自分の上目遣いの破壊力に気づいた方がいい。
『………き…』
「ん?何?」
『俺、太宰が、好き……』
「やっと言ってくれたねー。私もだよ。」
は……へ……?いま……なんて……?
『んぇ……?』
「だーかーらー私も好きだよって!」
『え、、え、嘘……』
「私で良ければ、御付き合いして頂けますか?」
何処か他人行儀で伝えられたその言葉。暫く噛み砕けなかった。
後日____
「それにしても、、愛があれば恐いものなしなんて言ったのは誰だろうね……それこそ死ぬ程恐いではないか」
『こ、、恐かった……』
ほんとに、そんなこと言ったやつ引っ張り出してぶん殴りたいくらい恐かった。
「うん、気づいてあげられなくてごめんね」
両思いが発覚して思ったが、此奴は好きな人間に死ぬほど甘い。今も姐さんよろしく俺の頭をガシガシと撫でている。
『てか、入れ替わり解けたのに何時まで俺みてぇな格好してんだよ』
「帽子は被ってないよ…?」
『手前はいつもの格好が1番かっこいいから…』((ボソッ…
「はぁ、、そういうこと言うの反則!」
太宰は強引に俺の手を引っ張り……
『は……?ちょ、どこ連れてくんだよ!』
「私ん家〜、あんな可愛いこと言われたら…私の理性のストッパーがかからないよ」
『は、?俺なんも言ってねぇだろ!てか、ほんとにしれっと連れ込もうとするなァ!』