「おじゃましまぁす!」
「いらっしゃい。ちょっと片付いてないんだけど…」
「全然大丈夫よ!僕から頼んだんやし。」
「じゃ、さっそくやろ。」
二人でゲームをすることになってしまった。
しかも俺の家で。
「えー、全然片付いとるやん!」
「そう?ならいいんだけど。」
「こっちの部屋はなにがあるん?」
そう言って、おらふくんがあの石が置かれている部屋へ向かう。
「あ、そ、そっちは、だめっ!!」
思わず大きい声がでてしまった。
おらふくんのドアノブにのばされた手がびくっ、と止まる。
「あ、ご、ごめん….ちょっと、見られたくないものがあるから….」
怖がらせてしまっただろうか。
「あ、あぁ、そうなんやね。ごめんな、こっちこそ急にドア開けようとして。」
「あ、….い、や、ごめん。….ゲームしよっか。」
「うん!」
「あー、また負けたぁ!!」
「ふふ。このゲームはコツ掴めば勝てるよ。」
「えー、そうなん?じゃあもーちょいがんばろっかなぁ…」
「….あ、おらふくんボタン取れそう。」
ふと、おらふくんのワイシャツの袖のボタンが取れかかっていた。
「え?あ、ほんまやぁ。気付かんかった。」
「俺直そうか。」
「え、おんりー裁縫もできるん!」
「まあ、ボタンつけくらいは。」
「すご!僕全然やから!」
「じゃ、ボタンかして?」
「うん。えいっ…あ!」
おらふくんが若干ついていた糸を引きちぎった拍子に、ボタンが転がっていってしまった。
「あー、ごめんおんりー…机の下の方入ってっちゃった…」
そういえば昨日、石を吐いたあと何個かどこかにいってしまっていた気がする。
「大丈夫。ちょっと待ってすぐとるから…」
「あ、僕が取るよ!ちょっとまっとって…」
「あ、おらふく、」
「….?おんりー、これおんりーの?」
顔を上げたおらふくんの手には、ボタンと水色のキラキラと光る宝石があった。
「あ、そ、れは….」
しまった。やっぱり隙間に入っていたんだ。
「….これ、すっごいきれいやね。」
まじまじと眺めながら純粋な瞳で言う。
「…うん、俺もそう思う。」
これは、本音。
「一個だけ、奥の方にあったよ。こんな綺麗なもの、ちゃんと大事にしとかんと。」
「….いいんだよ。」
「いいんだよって….だめだよ、大事なものはちゃんとしまっとかないと。」
「だ、いじなもの…」
「…これ、大事じゃないん?」
大事なんかじゃない。
自分の言えなかった言葉みたいなものだ。
「…うん。べつに…」
大事なんかじゃ…
「….僕この色すっごいきれいやから好き!!」
突然、おらふくんの明るい声が響く。
「…?」
「やから、おんりーもこの宝石のこと、好きになって?それで、大事にしてあげてよ。」
「…っ!」
まるで、
まるで、自分のその気持ちを肯定してもいい、って言われた気がした。
「ね?だめかな?」
気のせいに決まっているのに、
「….おらふくん。」
「ん?なぁに?」
「…..っあのね、」
気付けば全部話してしまっていた。
「そ、そうだったん…!?」
「うん….」
「なんで相談してくれんかったんよ!!」
「え…?」
「僕のこと好きになってから、ってことは僕が原因やん絶対!え、なんやろ…好きになってくれた人が宝石吐いちゃう病みたいな?それともなんか呪いみたいなんかなぁ?うわぁ、おんりーごめん!!」
「え、あ、いや…たぶんおらふくんは関係な…」
「あるよ!」
「え、」
「おれもおんりーのこと大好きやから、それでかなぁ?」
「えっ….?!」
「あ、そうやちゃんと言葉にしたこと無かったね。」
きゅっ、と正座し直したおらふくんと目が合う。
「おんりー、俺はおんりーのことが大大大好きなんやけど、許して?」
「っうん、俺もおらふくんのこと、大好きっ….だから….!」
「….よかったぁ!!」
ぎゅっ、と抱き締められる。
「わっ…!」
「俺は、おんりーの気持ちぜーんぶ、受け止められるから、遠慮せんといて!!」
「…重すぎても知らないよ?」
「大丈夫!僕力持ちやから!!」
「….おらふくん、」
見せたいものがある、と言ってあの部屋へ向かった。
「ここに、今までの石か全部置いてあるんだ。」
「全部…あ、そういえばさっきの石….?」
「見る勇気ある?」
「…うん。当たり前でしょ?」
「….ありがとう。」
ガチャ
「….?」
そこには、なにもなかった。
いままで吐き出してきた石が入れてあったはずの箱だけが転がっている。
「….なーんもないね。」
「ないねぇ….まあ、床が抜ける心配しなくてよくなったから…いっか。」
「…おんりーが自分の気持ちを許せたから消えちゃった、とか?」
「…ふふ。そうかもね。….ありがとう、おらふくん。」
「えへへ、どういたしまして!!これからもよろしくな、おんりー!」
「うん。よろしくね。」
もうあの綺麗な水色を見ることはない。
でももういい。
あんなものよりも、もっと綺麗な人を手に入れられたから。
コメント
4件
いや〜、毎回神ですね。 これは筆が進みます💎🖌
全部読めせて頂きました!! こういうストーリーかけるのほんとに羨まです!!🥰