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行灯の灯りが、少しだけ弱く揺れていた。畳の上、直哉はしばらく動けずに、
浅い呼吸を何度も繰り返していた。
直「……っ、は……」
息がうまく整わない。
胸が上下するたびに、喉の奥から小さな音が漏れる。
直「……ちょ、待って……」
声は掠れて、途中で途切れる。
自分でも驚くほど、力が入らない。
甚爾はすぐ傍にいて、何も言わずに様子を見ていた。
少ししてから、低い声が落ちる。
甚「……呼吸、浅ぇな」
直「……やかましい」
直哉はそう言おうとして、
最後の言葉が息に溶けた。
直「っ……はぁ……」
喉が鳴る。
自分の声が、やけに近くで響く。
甚「……今、喋んな」
甚爾の声は静かだった。
甚「落ち着くまで黙ってろ」
言い方はぶっきらぼうなのに、
距離は離れない。
直哉は天井を見つめたまま、
ゆっくり息を吸って、吐く。
直「……ほんま……」
やっと言葉になる。
直「……人のこと、あんなにしといて……」
途中でまた、息が乱れる。
直「……は、ぁ……」
少し、間があって。
「……悪ぃ」
短い一言。
それだけで、
胸の奥が妙に落ち着いた。
直哉は目を閉じて、
ようやく呼吸のリズムを取り戻す。
直「……次は」
小さく、かすれた声。
直「……俺から、やからな……」
返事はなかった。
代わりに、すぐ近くで息を吐く音。
行灯の灯りが揺れて、
夜は、まだ終わっていなかった