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地雷さんは回れ右
モブ(茂部)にひどいことされます
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「うわーーーーーーー!?」
「んぁ?」
ガバッと起き上がればおれに抱きついていた葛葉もそれに釣られて目を覚ましてしまう。
「なんだ、どしたー? ローレン」
「う、うわーーー!!!!」
おれはというものの、葛葉が少し話してくれたおかげというかせいというか、なんだかとんでもない夢を見た気がする。居た堪れなくなっては掛け布団を頭から被って籠城すれば葛葉が布団越しにおれを摩ってくる。
「え? なに面白いことになってんのおまえ」
ろーれん? とこれまた布団越しに優しく名前を呼ばれ抱き締められれば、おれはその声に誘われるように布団から顔を覗かせる。葛葉と目が合えばふはっ、と葛葉は破顔する。
「なに可愛いことしてんだ」
「く、くっさん……あの…」
「ん?」
「あの、さ……その、おれの、妄想かもしれないんだけど……」
「うん? なにが?」
顔がどんどん熱くなっていってしまう。
おれは昔、それはもう嫌な目に遭った。忘れることの出来ない、他人に触れられるのが苦手になった出来事だ。
けれどこの出来事をおれは最後までは覚えていなかった。目が覚めた時は本部の医務室に寝かされていて、酷い倦怠感に襲われたものの使われた薬物に中毒性も後遺症も見られず、大事には至らなかった。
あの時、あまりにも受け入れられない現実におれは多分夢の中に逃げた。夢の中では葛葉が何度もキスをしてくれて、おれを、その、気持ちよくしてくれる、そんな都合の良い夢で…夢?
「くっさん…む、むかし…まだ付き合う前、おれにキスした…?」
おれの言葉に葛葉は目を捲る。するとその目を細めてへぇ。と笑みを浮かべる。
「思い出した?」
「や、やっぱり…!」
顔がますます熱くなっていく。あれは夢ではなく、やはり現実のことだったらしい。あんな、何度も、まだ付き合ってなかったのに葛葉と……
「よーし思い出したなら俺も聞きたいことがある」
「? なに……ぅ、わ!」
布団から引っ張り出されてそのまま葛葉に組み敷かれる形でベッドに縫い付けられる。なにすんの。そう言おうと思ったけれど葛葉は思ったより真面目な顔をしていて、おれは思わずごくりと喉を鳴らす。
「くっさん…?」
「ローレン、おまえ……あの変態野郎にどこまでされた?」
葛葉の真剣な声に何度か瞬きを繰り返す。ああ、これが葛葉の怒ってる声なんだと嫌でも分からされた。
どこまで。おれは確かにあの変態に薬を盛られて乱暴をされかけた過去がある。それを知ってるのは樋口さんと、レオスと、叶さんと、それから助けてくれた葛葉だけだと聞いた。
葛葉はおれがあんな目に遭ったことを知っていたのに今の今までおれにあの時の話をすることはなかった。本当に葛葉が助けてくれたの? と叶さんに確認するほど、葛葉はこの話題には触れなかった。おれとしても聞かれたくないことだったので、その気遣いがどれだけ有り難かったことか。
でも、もしかしたら。葛葉はずっと聞きたかったのかもしれない。自分の恋人は、一体どこまで汚されたのか。
あの事件の次の日、薬の副作用で体に酷い倦怠感は感じたものの、後ろに違和感を感じることは全くなかった。その事実におれは泣いた。良かった。一番最悪な事態は逃れられたと。
しかし、すぐに絶望がおれを襲った。おれは夢の中で葛葉にキスをされイかされてしまった。
あれは、もしかしたら現実ではあの男によるものだったのではないか。葛葉に確かめれば分かることではあったが、何もしてない。と言われてしまえば終わりだったためどうしても聞くことが出来なかったのだ。
「ね、くっさん。おれもちゃんと答えるから、先に聞いてもいい?」
「ああ。なんでも聞いていいぜ」
「うん。あのさ、…あの事件の時、おれにキスしたんだよね?」
「ああ、した」
「おれの、その。前を触っておれのことイかせた…?」
「…おまえ、全部覚えてたのか?」
葛葉の言葉におれは今日までおれを苦しめていたトラウマにやっと清算が出来る日が来たと喜び、葛葉に思い切り抱きつく。
突然だったため葛葉は上手く受け身を取ることが出来ず、おれに雪崩れ込むようにその身を預けてくれた。
「おわっ、なんだ?」
「ははっ! おれのファーストキスも、イかされたのも、相手はあんただよ、くっさん!」
あんな男に初めてキスをされたかと思うと死にたくなった。あんな男にイかされたかと思うとこの身を呪いたくなった。
けれどそれは杞憂だったらしい。おれに初めてキスをしたのも、あの苦しさから救うためにイかせてくれたのも葛葉だったのだ。これが嬉しくないわけがない。
おれの言葉に葛葉もおれをぎゅうっ、と抱き締める。
「…マジか。あいつ、手出してなかったんだな…」
「危なかったけど、くっさんが助けてくれたからね」
「そっか。ははっ、そうか!」
葛葉と目と目が合う。嬉しそうに顔を綻ばせておれを見つめ、その唇がおれの唇に降りてくる。
葛葉もおれを求め、おれも葛葉を求める。夢の中でおれを救ってくれたヒーローは、現実でもおれを救ってくれて今も腕の中におれを抱いてくれている。それがあまりにも嬉しくて、おれの目からは涙がこぼれた。
おれに触れていいのは昔も今も、この人だけなんだ。
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コメント
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最高…え、普通にかみすぎませんか?
15,837
シアン➣