テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
comi
7,055
耀聖(ようせい)
1,155
声良の書庫
35
ワァーー!!
「スズちゃーん!がんばれー!」
「キャー!カエデさん!」
ティアシャの合図で盛り上がる民衆達。
「まぁ分かってはいたけど、誰も俺たちのことを気にしちゃいねぇのな(笑)」
「ふん!別に言わせておけばいいんじゃない?終わった後にどんな反応になるのか……楽しみじゃない!」
「なんだかんだで昔から負けじ嫌いだもんな(笑)」
「お話のところ悪いですが……手加減は……しなくてもよろしいですよね?」
「それじゃ〜行くっスよ〜!!」
スッ……
「?!」
目の前にいたスズがフィニスの視界から消える。視線をキョロキョロと動かすも見当たらない。
そして次の瞬間……
ガキーン!
フィニスの真横から襲いかかるスズの斬撃を模造刀で受け止めるフィニス。
「おぉ……やっぱりきた……」
「初見でこれを受け止めるっスか!?よく魔力のフェイントに引っかからなかったっスね……」
「あぁ〜……早いだけじゃなくて、そう言う感じだったのか……」
フィニスから距離を取るスズ。
「わりぃ……俺魔力無いから、そもそもそのフェイントしてる事すら知らんかった(笑)」
「なんスかそれ!?」
⸻
手に持った羽根に魔力を込め、宙に何かを描くような形で魔力を込め始めるカエデ。
「ふ〜ん……変わった術式ね」
スラスラと動かした手が止まり、ニティアの方へ視線を移すカエデ。
「よく分かりませんが……こういうのが得意な一族だったようなので」
そう言い、今度は羽根の先をニティアに向け、魔力を込める。ニティアも同様に杖をカエデへ向け、術式を展開し始める。
……
しばらくお互いを見つめあった次の瞬間……
ニティアの狙いを定めさせぬよう、横に駆けながら、羽根先から真っ赤な炎の渦を出してニティア目掛けて撃ち放つカエデ。
「なるほど……」
ニティアがクルクルと回した杖で地面を叩くと、次々とニティアの周りの水分が集まりだす。そして、ひとつの大きな塊となって炎の渦へとぶつかっていく。
ジュー!!
炎が消えていくと同時に、一瞬でニティアが生成した水も水蒸気となって蒸発していった。
「流石ですね……では……これはどうです?」
棒立ちのカエデ。しかし、ニティアの背後から当然無数の炎の玉がニティア目掛けて飛んできた。
「やっぱりそっちが本命よね」
横目で飛んでくる火の玉を見たニティアが杖に再び魔力を込めるも……カエデから発生した無数の炎がニティアへ直撃する。
⸻
「ふんふん♪」
盛り上がる観衆の中、上機嫌で試合を見ているティアシャ。
酒を飲んで少し顔の赤くなったルシオが、空いていたティアシャの隣に腰をかける。
「あの子達は何者なんだい?」
「なんじゃ?カエデとスズのことか?」
視線は城内から動かさず、ルシオの問いに反応する。
「俺はそんな敏感な方じゃ無いけど、カエデちゃんのあの熱気のこもった魔力……相当なもんだろ?それにスズちゃんも。あの速さは尋常じゃない」
グラスに口をつけるルシオ。
「あの2人はじぃじ……先々代が国王だった時代にな。交流をしたいと言ってきた島国から送られてきた奴隷じゃ」
「!?」
ティアシャの口から予想だにしない言葉に驚くルシオ。
「いや!勘違いするで無いぞ!?向こうが勝手に奴隷として送り込んできたんじゃ!しかし、うちのじぃじが、そんなことする国とは交流はできぬ!と断交をし、あの2人を奴隷じゃなく侍女として迎え入れたと言うわけじゃ」
「……なるほどな」
「カエデは向こうの国で、妖の子。まぁこっちで言う魔女狩りじゃの。そんな扱いを受けていた、赤い魔法使いの一族の生き残り。そしてスズは……どこかのお偉いさんに仕えるオンミツ?だか何とかの血筋らしいが、詳しいことは分からぬ。ただ……」
「ん?」
「じぃじが引退し、父上が継いだ後。激しい継承権争いに巻き込まれてもなお、末妹の妾がこうして無事で生きていられるのは、あやつらがいたからと言うことじゃ」
「そんじゃそこいらの人間じゃ、あの2人を掻い潜って王女様を襲うことができなかったと……」
横目でちらっとルシオを見るティアシャ。
「そういうことじゃ♪」
視線を戻すティアシャ。
「あの2人の強さは、民もよく知っておる。それくらい、この国の中でも群を抜いて実力がある2人じゃ。しかし……そんな2人であっても、魔女を撃退はできぬじゃろ」
「お前……あの2人が負けると分かって?」
試合を眺めながら、ニヤリと笑うティアシャ。
「どうだかのぉ……お主らが勝てば、お主らの実力が国中に認められるじゃろうし……あの子らが勝てたら、英雄を凌ぐ英雄として指揮も上がるじゃろうし、あの子らに兵を率いさせ、戦争を仕掛けるのもありかもしれんの♪」
冗談っぽく言うティアシャに、呆れたように笑うルシオ。
「で、どう思う?」
ルシオの正面でひたすら肉を食べているエラリス。
もぐもぐ……ごっくん
「ん?お姫様の言う通りじゃ無い?あの子達じゃフィニスとニティアには勝てないよ」
今度は両手にパンを持つエラリス。
「普通に戦っても無理なのに、スズがフィニス。カエデがニティア。馬鹿正直に挑んでるみたいだし。何もできないんじゃない?」
そう言うと、両手のパンを大きな口へと放り込んでいった。
⸻
「ひぃ〜!全然当たらないっス!!」
開始から一歩も動いていないフィニスに対し、肩で息をしているスズ。
「めちゃくちゃ早いけど動きが単調すぎだよ(笑)」
「はぁ……はぁ……なるほど……なら今度は本気で行くっスよ!!」
再び目の前から消えるスズ。剣を片手に集中するフィニス。
スッ……!
フィニスが後ろで剣を構えると同時に……
カン!
斬撃とは違う軽い衝撃。
「なっ!?」
防いだのは斬撃ではなく、スズによって投げられた崩れ落ちた城壁の残骸だった。
背側に剣を向け、隙だらけのフィニスへ斬りかかるスズ。
「勝負ありっスね!」
パシッ
「へ?」
フィニスの胴を狙った斬撃。しかし、その剣を握っているスズの拳を、空いていたフィニスのもう片方の手によって掴まれていた。
「まぁ、動きは早いけど斬撃が軽いし……こう捕まえればもう逃げられないだろ?」
コツン
そう言って、スズの頭を模造刀で軽く叩くフィニス。
「こ……降参っス……」
剣から手を離し、両手を上げるスズに手を差し伸べてにっこりと笑うフィニス。
その様子を見ていた民衆達がどよめき出した。
「おい……あのスズちゃんが手も足も出なかったぞ……」
「え……やだかっこいい……」
「あんな見えない速さのスズちゃんを……あの人すごくない?」
⸻
「まさか……もう終わりでは無いですよね?」
水蒸気で見えなくなった視界の中、炎が直撃したであろうニティアの方へ視線を向けるカエデ。
「あ、バレてた?」
煙の向こうから聞こえるニティアの声。
「あなたのさっき術式、すごいわね」
「……?!」
ニティアの言葉に驚いたカエデは、再び羽根で術式を構築し始めた。
「まずはペンみたいなもので空中に術式を書き記す。その時点で術式が独立。凄いわよね……私もこの前遠隔魔法を試してみたんだけど、遠隔で操作する手前どうしても魔力の繋がりが出来ちゃって独立はさせられなかったのよね。さすがは赤い魔法使いの一族……ってところかな」
「……?!」
目を見開いて声のする方をじっと見つめるカエデ。
「なぜそれを……?」
「綺麗な赤い髪の毛に、熱気のこもった魔力。その時点でもしかしたらとは思ってたんだけどね。私もそうだから……魔女狩りの対象となった魔法使いについては調べたことがあるのよ」
構築した術式を発動させようとするカエデ……しかし……術式は発動しているのに、炎が生成されない。
「さっきの空中に描いた術式。まずは最初に使った炎魔法の強化効果よね?あの短い構築時間の割に、発動した魔法の力が大きかったから。それで次は空中の術式に残った魔力を使って、あそこから炎を撃ち出した……」
「くっ……どうして?!」
何度も術式を組み込もうとするも、発動しない魔法。いや……炎の生成はしている。しかし、その瞬間に消えていた。
「炎の魔法って、大体最初に小さい火を生み出してから、徐々に周りの空気を魔力で取り込んで強く大きくしていくパターンが多いわよね。最初から大きな炎を作るのは術式構築の効率悪いから」
コン
地面を叩く杖の音。
ニュルニュル……
いつのまにか地面いっぱいに広がっていた水溜りから生み出された水蛇がカエデの足を伝い、身体を拘束する。
「だから、あなたの撃った炎の熱を利用して水蒸気を作ったの。あ!もちろんさっきのも当たってないわよ?あれは最初に発生させた水蒸気と光の屈折で作ったデコイだから。そして、そのまま……あなたの周りの水蒸気量を飽和状態にして、炎の魔法を封じたってわけ♪」
サァー……
カエデの周りに纏っていた水蒸気が晴れていき、目の前には仁王立ちで立っているニティア。
水の蛇に絡まれて身動き一つ取れなくなっていたカエデは、小さなため息をひとつついた。
「まさかここまで手も足も出ないとは……降参です」
コメント
1件
うおおお!決着きたー!🔥 フィニス無魔力でフェイント効かないの最高に面白いし、ニティアの水蒸気で炎封じる戦術も「なるほどなあ」ってなったわ。スズとカエデの過去も気になるし、ティアシャ姫の腹黒計画もニヤニヤしちゃう。次も楽しみにしてます!