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#いるなつ
3e1
718
# 梅雨の妖精
209
その日は珍しく雨だった。
放課後。
窓を叩く雨音を聞きながら、なつは帰る準備をしていた。
🦈「うわー」
隣でこさめが窓を見ている。
🦈「結構降ってるねぇ」
🍍「傘持ってきた?」
🦈「持ってきた!」
得意げだった。
珍しい。
今日は忘れ物がないらしい。
すると。
こさめのスマホが震えた。
メッセージだ。
ちらっと画面を見たこさめが苦笑する。
🦈「あー」
🍍「どうした?」
🦈「らん兄」
🍍「なんて?」
🦈「雨強いから迎え行くって」
なつは思わず吹き出した。
🍍「高校生だぞ?」
🦈「そうなんだけどねぇ」
こさめも慣れた様子だった。
🍍「断ったん?」
🦈「断った」
🍍「で?」
🦈「今みこ兄からも来た」
🍍「なんて?」
🦈「らん兄が心配してるから迎え行こうかって」
🍍「増えた」
🦈「増えたね」
二人で笑う。
その時だった。
こさめの表情が少し曇った。
ほんの一瞬。
本当に一瞬だった。
でもなつは気付いた。
🍍「……どうした?」
🦈「え?」
🍍「なんかあった?」
こさめは少しだけ困ったように笑う。
🦈「ううん」
そして。
🦈「ただね」
窓の外を見る。
🦈「みんな昔から心配性なんだ」
🍍「昔から?」
🦈「うん」
それだけ言って話を終わらせた。
帰り道。
なつは何となくその言葉が引っかかっていた。
昔から。
なんでだろう。
あそこまで過保護になる理由があるんだろうか。
翌日。
昼休み。
なつは購買へ向かっていた。
すると廊下で偶然みことを見つける。
🍍「みこと先輩」
👑「あれ、なつくん」
みことは笑った。
いつも通りだ。
🍍「こさめ?」
👑「屋上」
🍍「だろうな」
すっかり日課になっている。
少し話していると。
みことのスマホが鳴った。
👑「あ」
画面を見る。
すると。
みことの顔色が少し変わった。
ほんの少しだけ。
🍍「どうしたんすか?」
👑「ん?」
🍍「なんかあったんですか?」
みことは数秒迷った。
そして。
👑「昔の知り合いからだった」
そう答えた。
どこか複雑そうな顔だった。
その日の放課後。
なつは昇降口でこさめを待っていた。
一緒に帰る約束をしていたからだ。
しかし。
なかなか来ない。
五分。
十分。
十五分。
さすがに遅い。
すると。
廊下の奥から声が聞こえた。
🦈「だから大丈夫だって」
こさめの声。
少し困ったような声だった。
🍵「大丈夫じゃない」
今度はすちの声。
珍しく強い口調だった。
なつは思わず足を止めた。
すちが高校へ来ることはない。
つまり電話だろう。
🦈「でも昔じゃないし」
こさめが言う。
少しの沈黙。
そして。
すちが静かに言った。
🍵「こさめちゃん」
その声は優しかった。
だけど。
どこか震えていた。
🍵「昔だからだよ」
なつは思わず息を止めた。
🍵「もう誰も傷付けさせないから」
それだけ聞こえた。
その直後。
こさめがこちらへ歩いてきた。
慌ててなつは視線を逸らす。
聞いていたことがバレないように。
🦈「お待たせ!」
いつもの笑顔。
いつものこさめ。
だけど。
さっきの会話。
すちの声。
『もう誰も傷付けさせないから』
その言葉だけが頭に残った
帰宅後。
なつはベッドに寝転がりながら考えていた。
兄たちは過保護だ。
それは知っている。
でも。
ただのブラコンじゃないのかも。
何かある。
そう思った。
その頃。
四兄弟の家。
👑「電話したの?」
みことが聞く。
🍵「した」
すちが答える。
👑「こさめちゃん何て?」
🍵「大丈夫だって」
すちは少し笑った。
でも。
どこか寂しそうだった。
らんが黙っている。
🍵「らん兄」
🌸「ん?」
🍵「また思い出したの?」
らんは少しだけ目を伏せた。
昔のこと。
忘れられるわけがない。
泣いていた母。
震えていたみこと。
そして。
まだ小さかったこさめ。
🌸「……忘れられないよ」
らんは小さく呟いた。
🌸「二度とあんな思いはさせたくない」
静かな部屋に。
その言葉だけが落ちた。
今日は四人兄弟にとっての、最悪の日、らしい。
一方その頃。
なつはまだ知らない。
こさめたち兄弟が抱えている過去を。
そして。
その過去を知った時。
兄たちを見る目も。
こさめを見る目も。
少しだけ変わることになるということに。
てかてか気になったんですけど、私をフォローしてくださってる方
どの話から来ましたか‥?
緑水短編とか、「君に生きてほしいから」とか
ちょっと気になって‥
コメント
5件
だいぶ見るの遅れました🥹 緑水のもう消えちゃったけど余命宣告のやつからです!!
え...ちょっと覚えてない...??? でもうちが始めた頃からの記憶はある!! ん?多分..
緑水の『お酒』のとこからです