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鯛男(タイオ)達が車に乗り込む一時間ほど前、茶糖の家は幸福寺より先んじた敵の襲撃を受けていたのである。
念の為に家の周りを走り続けて警戒に当たっていたリエが、いち早く異変に気が付いて戻り、家族達に危険を報せたのであった。
「みんなっ! 来たよー! なんか変なのばっかり、デカいのもチラホラっ! 全部で四十体くらい! 急いでぇぇーっ!」
即座に色めき立つ家族達は、皆それぞれ打ち合わせ済みだった各々の役目を果たす為に動き出したのだ。
警戒偵察を一手に担っていたリエもホッと胸を撫で下ろしていた、これで初動で後れを取る事は無いだろう、朝早くからご近所の周回コースを何十周もし続け、おかしい奴を見る様な視線を受け続けた甲斐もあろうってモノである。
本当によく耐え抜けたものだ…… 途中で一度、
「あれ、コユキの下の妹じゃん…… あの子小さい頃変わってたんだよね…… やっぱり治ってないんだ、可哀そう……」
そんな呟きが聞こえた時には自分の耳の良さを恨んだものだ……
口惜しかったし、辛かった……
この悔しさを晴らす為には襲い来る悪魔達に完全勝利を収めるしかない、そう思いながらオフロード用のプロテクターを全身に装着していくリエであった。
二階のベランダから一階の屋根の上に降りたツミコの後ろには、リエとリョウコの子供たちの姿が見える。
「一番高い所に腰掛けて大人しくしているんだよ」
ツミコの言葉に素直に頷くのであった。
その動作を確認したツミコは自身の準備を始めるのであった。
業務用の巨大なボールの中に大量の砂糖、今回はちょっと拘って(こだわって)選んだ三温糖を三袋、三キロ分を豪快に入れ、その上から油、こちらも凝ってみたキャノーラ油とベニバナ油、太伯(たいはく)ごま油を徳用ボトルからこれまた豪快に注ぎ、しっかりと混ぜ合わせ乳化した物を、飲む! 躊躇せずゴクゴクと喉を鳴らしてである。
途中で耐え切れなかったのだろう、飲む事を中断して一息入れようとするが、途端にこみ上げてフルリバースしそうになるのを、横に準備して置いた一升瓶の清酒をラッパ飲みする事で何とか耐えきるツミコ、恐らく彼女の肉体がこのスペシャルドリンクに対して拒絶反応を示しているのだろう、主に生命維持の為に……
そんな己の消化器官からの生存本能と言う貴重な警告に耳を傾ける事もせず、ゴクゴク、グァ! コクコクコク プッハァ! を繰り返した結果、へべれけになったツミコが放り投げた巨大ボールの中身はすっかり空になっていたのであった。
「蟹ちゃぁん、カルキノス君んぅ、準備は良いかなぁ~? おぉ猿ぅ君んぅ~、フンババちゃんもぉぉ、大ぃ丈ぅ夫ぅ?」
リョウコの甘ったるい声にカルキノスは両手のハサミを高々と上げチョキチョキと自分が準備完了であると伝え、反して薄らとした子ザルはサムズアップで六日前、違和感を感じてしまった肘が万全の状態である事をアピールしたのであった。
リョウコがいる場所は、カルキノスの後ろを勝手について来る、巨大な柿の大木であり、その幹元には蔓(つる)植物の中でも結構質(タチ)が悪く、完全な駆除は不可能と言われている葛(くず)の株がびっしりと集められまだ若いツルツルを四方八方に伸ばし続けていたのであった。
不意にリョウコに向けて声が掛けられた、リエの物である。
「リョウちゃん! そっちは大丈夫ぅ?」
リョウコは答えて言った。
「うぅ~ん~! 大丈夫そうぅ~! ちゃんとアヴァドン君に教えて貰った『支配者(バシリアス)』でツルツル君たちもぉ、それぞれ個別に命令ぃ? コントロールぅ? 言う事聞いて貰えるみたいだよォぉぅ~」
そう、リョウコとアヴァドンはここまでの期間に、お互いのスキルについて結構な時間を割いて話し合う事で、リョウコは自分がコントロールできる植物たちに、単純ではあるが命令を与える技術を、そしてアヴァドンは動物だけでなく植物や菌類までも使役するスキルをそれぞれ獲得する事に成功していたのである。
「よっし! んじゃあ、迎え撃ってやろうじゃないのぉ! 来いよ、悪魔どもぉ! 大丈夫だよね? お地蔵様?」
「ああ、心配しなくても良いよ、私がリエちゃを守るからね」
リエの横で力強く頷くスカンダ、イスカンダルも余裕の風情で頼もしい事この上なかった。
にしてもリエちゃ、とか呼んでるんだ……
大丈夫なのかなこの二人…… 主に倫理的な意味で……
敵は確実に茶糖の家を目指して近づき続けていた、迎える戦闘担当のメンバーの準備も何とか間に合ったようである。