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行くことになったとして、準備はどうしようか、そしてここは一体どこなのか、そして俺以外はどうするんだろうかと疑問が駆け巡る。
「ああ、そういえばいくつか準備をしなきゃ!」
疑問を見透かすようなタイミングで鈴風さんは言う。
「何日か後に出発しようと思うんだ。だから出発するまでにどうするかとか、どこから回るかとか相談しよう。」
鈴風さんはまるで地名がわかっているような素振りをする。
「…死者なのだろう?準備に数日もかかるのか?」
鍾離さんが疑問を投げかけたことで気付く。
確かに俺達は死んでいる。
となると食事なども必要なくなるのでは?という考えも頷ける。
そもそも、この身体は食べ物を消化できるのだろうか?
「多少の娯楽は必要さ。それに、食以外の準備も、死後のこの身体に慣れることも、どちらも時間がかかる だろう?」
そう言われればそうだ。死んでいる以上、生きていた頃と感覚が違う可能性もある。もしそうだったら慣れるのに時間がかかりそうだ。
「決めるまでは自由だよ。人のまま終わりを迎えるか、人であることを放棄して生き続けるか。いずれ選択しなければならなくなる。さ、身体からは結構水分が飛びやすいんだ。それの補給に使える水でも取ってくるよ。」
そのままパタパタと軽い足音をさせながら鈴風さんは部屋から去っていった。
「人として終わるか、人であることを放棄して生き続けるか。か。」
「どっちだったとしても怖いよ…」
鍾離さんが反芻して、フリーナちゃんがその内容に恐怖する。
…ん?
なんで、鈴風さんは生き続けるって表現を使ってるんだ?だって、俺達はーー
「もう死んでいるのに」
ぽつりと呟いた瞬間静まり返り、放り投げられた言葉がゆっくりと沈んでゆく。
鍾離さんはさっきの俺の呟きで何か察したみたいだった。
微妙な空気が流れ出す。
「はーい!お水だよー!」
そんな空気を切り裂くように水を持ってきた鈴風さんがドアを開ける。
「みんな、どうしたの?」
鈴風さんは水を配り終えた後、きょとんとした顔で首をかしげる。
「キミについていけばおしまいを迎えられるのかい…?」
フリーナちゃんが震える声で聞く
「…おしまいは、どんな選択をしたとしても迎えるものさ。そのおしまいに身体のおしまいがついてくるか否かの差だけだよ。」
「そう…かい…」
答えは得られるのだろうか。フリーナちゃんは静かに考え出した。
「…ふむ。どうせ終わるのならば世界を見て回るのも一つの手、か。」
「多分、記憶の中とは違う光景だけどね。」
「…僕は、ついていきたい。」
「俺もついていくことにしよう。一人でいたとしても暇で暇で仕方が無いのだから。」
「そう。なら、準備をしよう。」
そうして、おしまいを探す旅の準備を始めた。