テラーノベル
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第3話
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ttmn
rtwn(出てきません)
tt → wn
mn → tt
rt →← wn 恋人
第2話の続き
九月の終わり、空は少し曇っていて、風が湿っていた。
その日、緋八マナはスマホを握りしめながら、エントランスの前で深呼吸をした。
(……二週間か。二週間も音沙汰なしなんて、テツらしくない)
普段なら毎日のように「おもしろいミーム見つけた!!」と配信で騒いでいるはずの同期が、姿を消した。
DMを送っても既読はつかず、電話をしても出ない。
忙しいだけと納得するには、あまりにも長い。
マナは意を決して、オートロックのインターホンを押した。
「……だれ」
スピーカー越しに聞こえた声は、いつもの明るさが欠けていた。
低く、乾いた響きにマナは胸を痛める。
「テツ」
「……マナくん?」
一拍の沈黙のあと、扉が開いた。
部屋に入った瞬間、マナは息を呑んだ。
散らかった床。コンビニ弁当の空き容器、ペットボトル、使いかけのカップ麺。
そして、ソファに沈み込むイッテツ。
頬は少し痩け、髪も整えていない。
何より、その目が生気を失っていた。
「……テツ、何があったん」
自然と心配している声色になる。
イッテツは苦笑する。
「なに、その顔。俺が部屋汚してるの、珍しくもないでしょ」
「違う。テツが、こんな……やつれてるの、初めて見た」
マナはソファに腰を下ろす。
イッテツはしばらく黙っていたが、やがて小さく肩を落とした。
「……ウェンくんがさ。リトくんと付き合ってるって、公表してたじゃん」
「……うん。見た」
「僕、ずっと……ウェンくんのこと、好きだったんだ」
その瞬間、マナは胸を殴られたような衝撃を受けた。
(やっぱり……ほんまに、好きやったんや)
どこかで気づいていた。
イッテツがウェンにだけ見せる笑顔、距離の近さ、ちょっとした視線。
けれど、冗談半分だと思っていた。
——まさかここまで本気だったなんて。
イッテツはうつむいたまま、続ける。
「言えなかった。怖かったんだよ。……言ったって、振られるに決まってるし。今さらどうにもならない」
「テツ……」
「でも、ウェンくんがリトくんと一緒に笑ってるの見たら……俺、何やってんだろって思って。配信もできないし……」
その声は、かすかに震えていた。
マナは黙って彼の背に手を置く。
温もりを伝えるだけで精一杯だった。
胸の奥では、どうしようもない感情が渦巻いていた。
(俺は……テツが好きや。ずっと、前から)
(けど、テツはウェンのことしか見てへんかった。俺のことなんか、眼中にもなかった)
目の前でこんなに弱っている彼を見たら、押し殺してきた気持ちが堰を切りそうになる。
「なぁ、テツ」
「なに?」
「……俺じゃだめ?」
イッテツが顔を上げる。
驚いたように目を見開いて、マナを見つめた。
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