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桃「あー”ッ…隣で仕事するけど気にしないでね?」
イライラしているのか雑に頭をかきむしりながらそう俺に告げて、隣の空き部屋へと入っていった。
先程まで慌ただしくわーわーと体調を崩した俺の面倒を見てくれている彼が居なくなったから一気に静まり返って少しだけ寂しい気持ちになる。
…風邪の時あるあるだよな。人肌がものすごく恋しくなって1人になるのがとんでもなく寂しく虚しく、なんか言葉にあらせない衝動に駆られる時。
青「……なぃこ…たん…っ」
軽くボソッと呟いてその言葉の後に、寂しいなんて言おうとしたけどそのないこたんから喋んなって注意されてるから言うのは辞めておいた。
ないこは器用そうに見えて意外と不器用やからあれやけど、ちゃんと申し訳ないって思ってくれとるんよな。
だからこそ今日みたいにめちゃくちゃ世話焼いてくれるんよな、そういうところも全部知っとる。
…からこそ今日くらいないこを1人占めさせてくれてもえぇやんか。
ないこの大好きな大好きな彼氏が高熱で魘されているというのに、仕事ばっかり…
いや、別に仕事するなとは思ってない。っていうか仕事の大切さ。やりたくないのにやらなきゃいけないあの感じとかちょっと前の俺だったら痛いほどに感じてた。
それなのに退職してあの無限の仕事から解放されたからだろうか。
あのしんどさを味わっているはずなのに、仕事なんてやんなきゃえぇんのに。なんて考えてしまう
青「………けほっ、けほ…っ」
喉も痛いし、頭もガンガンする。体は寒いのに布団に入ると熱くなるから体温の調整がむずいし…。
なんかイライラしてきた、別にないこに対して苛ついているわけでもないしないこに仕事を押し付けている世の中に対して苛ついているわけでもない。
これといった理由があるわけじゃないがとにかくイライラする。
今すぐにでもないこに齧り付いて襲いたい。理性が上手く働かないせいでそんな事ばかり考えてしまう。
あぁ、あかん。今ないこが俺のこの部屋に入ってきてしまったら無事で帰せるとは思えん。
というか彼氏として失格に値する行動をする自信しかない。
…ないこが恋しいけど、恋しいっていう気持ちが強すぎるせいで今は入ってきてほしくない。
なんて矛盾したことをぐるぐると頭を回転させて考えていると脳が疲れてきたのか一気に睡魔が襲いかかってくる。
なんて考えたときにはもう遅く、俺は意識をぷつんと手放した。
桃「…まろ〜?」
仕事をやっていたら体調不良の彼をかれこれ4時間放置してしまった。
お昼時から…だからもう夕方16時だ。
やばい!と思いながら急いで部屋の扉を開けてたらぐっすりと眠っていたから思わずふふっと笑みがこぼれる。
それと同時に机の上においてあった水が減っていないことに気が付き優しく彼を起こす。
桃「起きて〜、はよ水飲め〜。」
病人に対する扱い方じゃないのはわかっているがこういうのを看病したことがないため手荒くなってしまう。
…一応俺は兄なんだけどな、妹の看病とか全部親に任せっきりで勉強やら遊びに行ったりやらだったし…
そう考えると俺も中々おこちゃまやな。
とか考えていたら目の前の彼はしょぼしょぼと目を開けて、意識を取り戻す。
青「…なぃ…」
「こ」と発そうとしたタイミングで彼の口を抑える。
だめだよまろ、今まろの声がっすがす。喋るよりも早く水を飲まなきゃ。
って伝えたいのになぜか俺の声もガスガスでうまく声が出なかった。
青「……! あぃぁと…」
にこりと辛そうに笑うその彼の表情に思わず心がどきっと高鳴る。
あぁ、クソ。今日ばかりは俺がリードしてやろうと思ったのに今日もだめ。
いつになったら彼に勝てる日は来るのだろう…
なんてごちゃごちゃ考えながら彼に水入りのコップを雑に渡してやるとまた彼はへにゃりと笑うから俺もまた心がどきっと高鳴った。
end