碧水絹。ごく普通の会社員…と言いたかった。
俺が働いている会社は得体の知れない怪物をぶつ殺したり、捕獲して研究したりする、まあなんというか、物騒な会社だ。
会社名はプロコン社(Protect Control)。
略してPC社と呼ばれている。ゲームコントローラーでもないしパソコンのことでもない。
まあ俺はその会社の結構下の方で働いている。特段忙しい訳ではないがうっかりしたら簡単に人生終了できるので油断は禁物だ。
…今日も俺達は死と隣り合わせの仕事をする
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「碧水くんそっち頼んだ〜」
「あ、はい」
入社2年目の俺、絹。
1年目は模擬練習とか雑用しかしてなかったから知らなかったが…
「こんな沢山いるってやっぱおかしいだろ」
そこら中に謎の生命体がうじゃうじゃいる。この世のものとは思えないような匂いがする。
殴って行くたびに黒いどろどろしたようなものが飛び散り、幾つかが服に付く。
「あ゛〜俺なんでこの仕事したんだ」
薄暗い廃墟ビルの3階で呟いた一言は、意外にも大きく聞こえたようで、それに反応したのか角から数体現れた。
「うそん」
流石にこの数を1人で相手するのは厳しい。先輩が居ればよかったが。
そう思った刹那
(ズバビュゥン)
「…は?」
ピームで目の前の怪物達が一斉に焼けこげたのが目に飛び込んできた。
発射された方向を見るとそこには、それまで見た怪物とは違って、三角形に触手のようなものが生えている一つ目の不気味な奴だった。
「俺を…助けたのか…?」
「いや全然」
「…し、喋ったぁぁぁぁぁぁあ!?!?!?」
「五月蝿いっ」
そう言うとそいつは長く伸ばした触手を俺の足目掛けて貫いた
「い゛っっっっ…!?」
「別に助けてやった訳じゃないんだよなぁ」
(コイツなんだよ!?新手のツンデレかよ!?)
そう思ったのも束の間、痛みが一気に引いて行くのを感じた
「…は?…え、何がしたいん」
「遊びたい♡」
次々と這いずり出てくる怪物を2本の触手で刺し殺しながら放ったその言葉はまるで俺を蔑視している様だった
「じゃあ今何で傷つけて治癒した???」
「え〜そりゃニンゲンって弱いからこうしないといい玩具になってくれないじゃん?」
…まあ確かにそうかもしれない
一通り怪物を殲滅した後、俺は先輩のいる一階へと向かう
「3階完了しました」
「おーやるなぁ碧水くん!…ん?後ろの奴は?」
「…え?」
後ろを振り返るとさっきのアイツがいるではないか!ついてきたのか!?
「お前なんでーー」
そいつは先程とは打って変わって澄んだ眼をしている。まるで純粋な子供の様だ。
戸惑っている俺を背に
「可愛い〜!」
と先輩が衝撃的な発言をする。
「可愛い!?コイツがですか!?」
「何よ!どう見ても可愛いでしょ!」
察した。毎日ゲテモノ見てるから脳がバグってんだ
「この子連れて帰りましょ!」
「嫌です!返します!」
っと言ってそいつを見ると、目がぎらりと光り、光線を放たれるのを悟る。
「あっああ良いですよ!!はい!」
ちらっと見ると光りが鎮まっていたのでほっとした。
「よおし!じゃあ本社へ帰還〜!」
「先輩は呑気だなぁ…」
そんなことを呟きながら俺達は廃墟ビルを後にした。
〜本社玄関〜
「23対象、只今帰還しました〜」
そう先輩が言うと男がやって来た。
「報告を」
「部隊異常なし、他殲滅完了」
「あとー」
先輩が俺の方をちらっと見て笑った。
今俺の腕にアイツがしがみついている。もうめっちゃ痛い。誰か離して。
「新生命体捕獲」
「…え?」
俺は俺の腕にいるそいつをじっと見つめた。そいつも俺を見つめている。
「…こいつ前例ないんですか?」
「そうなのよ!私この子見たことないわ!」
熟練の先輩が初めて見たってことはこいつ相当強いのでは…?
「では引き取らせて頂く。」
そう言ってそいつに手を伸ばそうとした刹那
そいつの触手が伸び男の手を掠めた。
「…」
「え、だ、大丈夫ですか!?」
「あら〜この子碧水くんに懐いちゃってるのかな〜」
「あ、あはは…」
「ふむ、君の階級はいくつだ」
「7です…ね」
(嫌な予感がする…)
「丘浜くん、彼の出動回数は」
「え〜っと確か5…いや6回だった様な〜」
「それだと経過観察程度は任せられる。碧水くん。」
「は、はい。」
「頼めるかな。」
「〜〜〜…」
腕にいるそいつに一瞬目を向ける。如何にも承諾して欲しそうな雰囲気がする。
「…分かりました」
仕事と悩みが1つ増えた瞬間だった。
「ではこれを」
男はバインダーを取り出し俺に渡した。
「観察記録だ。一般記述欄は絶対に記入しておいてくれ。また何か変化や異常が見られてもこれに書いて1棟2階の観測記録室に持ってくる様に。とりあえず3週間。」
「3週間…」
「へえ、3週間?それってもうすtーんぐっ!?」
先輩の口を男が塞ぐ。
「…え?」
「〜〜〜っは!ちょっと!やめてくださいよ!」
何を言おうとしたか、俺は分かった。背筋が一気に凍る。それを読み取ったのか男が口を開く。
「なに、君を死なせる訳ではない。今の状況を見るに君にのみ友好的な様だからまあ、そういうことだ。」
「…」
「君にしか頼めないことだ。宜しく頼んだよ。」
男は俺の肩を叩いて事務室へ入っていった。
「ん〜碧水くん大変そうだね〜」
「他人事みたいに言わないで下さいよー…」
「ま、頑張って!」
ーー俺と先輩はそんな会話をしながら職員棟へ向かった。
…腕にいるやつと共に。
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