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城プル
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ゆ
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血と錆の臭いが充満する「FORSAKEN」の廃市街地。
空に浮かぶ歪んだ赤月が、永遠に終わらない殺戮の舞台を惨劇の色に染め上げている。
人型ネズミのサバイバー・Ratは、破れた白衣の裾をなびかせながら、廃ビルの影をすばしっこく駆け抜けていた。
頭上のヘルメットとサングラスを指先で少しずらし、大きな耳をピクピクと動かす。
長いピンクのしっぽが、緊張感なくゆらゆらと揺れていた。
彼の右手の黒手袋と左手の赤手袋には、発電機を解体した際についた機械油がこびりついている。
「やあやあ、またこの不効率な発電機修理かい? 神様……いや、スペクターの趣味も底が浅いね。もう少し解剖学的なアプローチを試練に組み込んでくれれば、僕もモチベーションが上がるというのに」
Ratが不満を漏らしたその瞬間、背後の暗がりから「シャアッ!」と鋭い威嚇音が響いた。
重厚なトゲ付き首輪と腕輪が擦れ合う金属音とともに、暗闇から姿を現したのはキラーのGatitoだった。
黒猫の獣人である彼は、赤い眼をギラつかせ、背中に魚の骨の柄が入った黒いパーカーのフードを浅くかぶっている。
緑のドミノクラウンの下で、殺意に満ちた瞳が細められた。
「見つけたぞ、ドブネズミ……! 逃げ場ねぇから覚悟しやがれ!」
Gatitoは大きな緑の爪をギチギチと鳴らし、威嚇するように腰を落とした。
本来なら、サバイバーが狂乱して逃げ出すか、絶望に顔を歪める場面だ。
生命の肉と血を貪る凶悪な殺人鬼の登場――しかし、Ratの反応は一般的なサバイバーのそれとは致命的に異なっていた。
「……ん?」
Ratの赤い眼が、サングラスの隙間からGatitoの身体を捉える。
その視線が首元から胸元、そして胴体へと滑り落ちた瞬間、Ratの足がピタリと止まった。
「な、なんだよその目は! 殺されたくねえなら叫んで逃げまわれよ!」
Gatitoがオラついた声を張り上げるが、Ratは恐怖するどころか、まるで超レアな未知の検体を発見した子どものように、赤い眼を爛々と輝かせた。
「すばらしい……信じられない! 頭部と手足は美しい毛並みの黒猫だというのに……なんだいその胴体は! 胴体の皮膚と肉が半透明で、内部の綺麗な肋骨がはっきりと透けて見えているじゃないか!」
Ratは興奮のあまり、青いジーンズのポケットに突っ込んでいたメモ帳とペンを取り出し、猛烈な勢いで書き込み始めた。
「猫の獣人というベースだけでも興味深いのに、透ける胴体に剥き出しの肋骨構造! 内臓の配置はどうなっている? 骨の密度は? 心臓の鼓動に合わせてその肋骨はどんな視覚的伸縮を見せるんだい!?」
勢いに押されたGatitoが思わず一歩引く。
Gatitoは己の屈強さと凶暴さ、そして恐ろしい姿を誇りにしていたが、目の前のネズミから向けられているのは「恐怖」ではなく、あからさまな「観察欲」と「解剖意欲」だった。
「寄るな変態ネズミ!!」
絶叫するGatitoの振り下ろした爪が床を粉砕するが、狂気の科学者RatはすばしっこくGatitoの背後へと回り込み、背中の魚の骨柄のパーカーをめくろうと手を伸ばす。
捕食者と被食者の立場は完全に逆転していた。
遥か上空、赤いシルクハットを被ったFORSAKENの創造主・スペクターは、浮遊する特等席からその光景を眺め、歪んだ愉悦に唇を歪めていた。
「ほう……恐怖ではなく、純粋な求知心で殺意を上書きするか。あのネズミはなかなか愉快な狂気を持っているね」
スペクターの傍らでは、黒いハチワレ模様の猫獣人Mowlが茶色のマントを羽織り、胸の黄色いリボンを整えながら、左目のモノクル越しに呆れたように溜め息をついていた。
「スペクター様、あのアホな黒猫(Gatito)め、完全にサバイバーにペースを握られていますよ。私めがフクロウになって、上からあのネズミを一突きにしてきましょうか?」
無駄に紳士的なお辞儀をするMowlの猫頭を、スペクターは愛おしそうに撫でた。
「いいや、Mowl。少し観察しようじゃないか。捕食しようとする猫と、それを標本にしようとするネズミ……この歪んだ追跡劇が、どれほど美しく壊れていくかをね」
一方、地上ではGatitoが「死ねぇ!」と叫びながら爪を振るい続け、Ratは「ねえ、ちょっとだけでいいから肋骨を叩かせてくれ! どんな音が鳴るのか知りたいんだ!」と目を輝かせて追いかけまわしていた。
絶望の殺し合いの場「FORSAKEN」で、絶対に交わってはならない二匹の、狂った鬼ごっこが幕を開けたのだった。