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先輩に好きと伝えることでしか理由が説明出来ず、思いがけず自白のような告白をしてしまった。



俺だってはい、僕も好きです、じゃあ付き合いましょう。

なんて漫画のような展開になるわけないと思っていた。でも先輩は嫌だとか、そういった嫌悪感を感じている表情じゃなく、何かに怯えているような表情をして後ろに下がったせいで鍵盤に手をついて大きく嫌な音が鳴った。



「だめ···だめだよ。僕といると元貴まで不幸になってしまう···。 ピアノなんて本当にもう辞めるべきだった!」



先輩には似合わないほどの強さで鍵盤の蓋を閉めると鞄を掴み部屋から出ていこうとする。

その腕を俺は慌てて掴んだ。



「待って!あんなに綺麗なピアノなのになんでそんなこと···」


「離して!お願い、元貴まで僕のせいでいなくなったら···僕はどう償えばいいの」



引き離そうと掴んでいる俺の腕を先輩がもう片方の手でひっぱる。

これ以上強く掴んで痛めてもいけない、けど先輩を離すわけにもいかない俺はごめん!と心の中で叫び真正面から先輩を腕ごとすっぽりと抱きしめる。




「嫌だ、離れて!いやだいやだ!」



先輩は子供のように腕の中で抵抗している。けど今こんな別れ方をしたらきっと先輩は2度と俺とは話さえもしてくれない。



「···離さない」


「いやっ、やだ、やだぁ···」



だんだんと疲れてきたのか抵抗する力が弱くなってきて、代わりにひっく、としゃくりを上げて泣いてしまっている。



「俺は、涼ちゃん先輩が好きだから居なくならないよ···なんでそんな風に思うの」


更に強く抱きしめる俺に諦めたのか、先輩は俺を睨んで口を開いた。



「元貴は何も知らないからそんなことが言えるんだよ···3年前の8月20日···僕のせいで先生は死んだんだ。○○ビルの前で!僕のせいで、僕のピアノのせいで!」



死、という単語に一瞬動揺した俺の抱きしめる力が弱まった瞬間、最後の力を振り絞って先輩は俺を突き飛ばしそのまま部屋を出ていってしまった。

よろめいた俺はすぐに追いかけることが出来ずに先輩の遠ざかる足音を聞きながらピアノの椅子に座りこんだ。



1人になった俺は言われた言葉を反芻する。

わからないことばかりで考える事は、山積みだけど落ち込んだり諦めたりするつもりなんか全くなかった。


置いていかれた鍵を拾って職員室に返しに行く。先生にお礼を伝え部屋の貸し出し表の先輩の名前の下に大森元貴、と大きく書き足した。


それは先輩が囚われている何かに対して絶対負けない諦めたりしてやらないからな、という宣戦布告のような気持ちの表れだった。


出逢えたことには意味がある

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