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第14話
〖亜紅魔館〗
――視点は離れる。
亜霊夢のいた世界。
亜幻想郷。
そして、紅い月の下。
静かに佇む――亜紅魔館。
そこには、今よりも少し大人びた住人たちの姿があった。
亜咲夜「霊夢が別世界へ行ったようです」
紅茶を置きながら、亜咲夜が報告する。
ソファに腰掛ける亜レミリアは、静かにワインを揺らした。
亜レミリア「そう……」
亜レミリア「まあ、辛いことを忘れられるなら、いいんじゃないかしら」
その顔には、昔のような悪戯っぽさよりも、長い年月を生きた者の優しさが滲んでいた。
亜レミリア「ましてや……」
亜レミリア「目の前で魔理沙を見送ったんだからね」
その言葉に、館の空気が静かになる。
――二年前。
魔理沙の最期の日。
幻想郷中の者たちが、彼女の元を訪れていた。
魔理沙の家、寝室。
痩せ細った身体。
ベッドに横たわる霧雨魔理沙。
だが、その顔は穏やかだった。
亜魔理沙「そんな暗い顔するんじゃ……ないのぜ」
ベッドの隣。
亜霊夢は魔理沙の手を握り、俯いていた。
亜霊夢「バカ……」
亜霊夢「暗い顔しないバカがどこにいるのよ……」
涙を堪えながら、必死に笑おうとしていた。
亜魔理沙は、周りを見渡す。
亜魔理沙「わざわざ来てくれて……感謝するのぜ……」
亜レミリア「最後くらい、友人の顔を見に来なきゃ目覚めが悪いもの」
亜魔理沙「ふふっ……レミリアらしいな」
そして。
魔理沙は亜パチュリーの方を見る。
亜魔理沙「一生借りるって言って……借りてた魔導書……」
亜魔理沙「棚に置いてあるから……持ってくんだぜ」
亜パチュリー「泥棒が、わざわざ返してくれるのね」
亜魔理沙「ハハハッ……」
亜魔理沙「相変わらず……きついなぁ……パチュリーは……」
小さく笑う。
その笑顔は。
いつもの霧雨魔理沙だった。
そして。
亜魔理沙「みんな……」
亜魔理沙「そろそろ限界なのぜ……」
亜霊夢「嫌よ……」
亜魔理沙「泣くなよ……」
亜魔理沙「笑ってくれ……」
その言葉を最後に。
2024年6月25日。
17歳。
霧雨魔理沙は。
大勢の人々に見送られながら。
静かに。
そして穏やかな顔で。
その生涯を終えた。
⸻
――現在。
亜紅魔館。
亜レミリアは窓の外の月を見上げる。
亜レミリア「今を楽しみなさい、霊夢」
亜レミリア「そして」
亜レミリア「明るくなって帰ってきなさい」
亜咲夜は優しく微笑む。
亜咲夜「私たちは、いつまでも待っています」
亜パチュリー「本の貸し出し期限なんて、いくらでも延ばしてあげるわ」
亜美鈴「帰ってきたら、またお茶でもしましょう」
亜小悪魔「いつでも歓迎しますよ」
そして。
亜レミリアは、優しく笑った。
亜レミリア「あなたの笑顔を見るまでね」
誰も急かさない。
誰も責めない。
ただ。
娘のように。
妹のように。
友人のように。
彼女の帰りを待っていた。
――それが。
大人になった幻想郷の住人たちの、優しさだった。
if
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コメント
1件
お疲れさまです、ifさん。 第14話、読み終わりました。 魔理沙の最期のシーン、すごく胸にきました。 「笑ってくれ」って言える強さと、それを見送る亜霊夢の涙。 あの静かな別れがあってこそ、今の「待つ」という優しさが響くんですね。 レミリアたちが急かさず、娘のように見守るラストが美しかったです。 「あなたの笑顔を見るまでね」——この台詞、ずっと心に残りそうです。 また次の話も楽しみにしていますね。