テラーノベル
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体育祭まで、あと一週間。
「次、リレーの練習!」
先生の声に、クラスが一気に盛り上がる。
「俺アンカー!」
「じゃあ石川は?」
「……俺?」
冴が名簿を見る。
「第三走者。」
「お、いいじゃん!」
奏斗は嬉しそうに笑った。
「俺、第四走者。」
「じゃあ最後、俺たちか。」
「うん。」
冴が小さく笑う。
「負けないよ。」
「こっちのセリフ!」
-–
グラウンド。
「位置について!」
パンッ!
一人目が走り出す。
バトンが渡る。
二人目。
そして――
「石川!」
冴が走り出した。
速い。
普段は静かな冴からは想像できないくらい、真剣な表情。
「頑張れー!」
「石川ー!」
歓声が響く。
順調に走っていた。
……そのとき。
冴の足が、ほんの少しもつれた。
「……!」
それでも止まらない。
そのまま奏斗へバトンを渡す。
「神崎!」
「任せろ!」
奏斗が走り出す。
-–
ゴール。
「二位!」
「惜しい!」
クラスから歓声が上がる。
奏斗はすぐに振り返った。
「石川!」
「……?」
「大丈夫?」
「大丈夫。」
「本当に?」
「うん。」
冴は笑う。
でも。
少しだけ顔色が悪い。
「……。」
奏斗は納得できなかった。
-–
昼休み。
「石川。」
「ん?」
「足。」
「?」
「さっき、ちょっと変だった。」
「……見てた?」
「見てた。」
「大丈夫。」
「でも――」
「大丈夫だから。」
いつもの言葉。
それを聞いて、奏斗は一瞬黙る。
(昔は。)
(冴は何でも「大丈夫」って言ってた。)
蓮の言葉を思い出す。
「……じゃあ。」
奏斗は少し考えてから言った。
「今日は俺に頼って。」
「え?」
「足、痛いなら保健室行こう。」
「……。」
「無理しなくていい。」
冴はしばらく黙っていた。
やがて。
「……少しだけ。」
「え?」
「足、痛い。」
奏斗は目を見開く。
「やっぱり!」
「大声出さないで。」
「ごめん。」
「でも。」
冴は少し笑った。
「言えた。」
「……。」
「神崎になら。」
その言葉に、奏斗は一瞬黙った。
「……うん。」
「言ってくれてありがとう。」
-–
保健室。
幸い、大きな問題はなかった。
先生からも、今日は無理をしないように言われる。
教室へ戻る途中。
「神崎。」
「ん?」
「ありがとう。」
「だから、それ禁止。」
「……ふふ。」
「また笑った。」
「笑ってない。」
「いや、今のは笑った!」
冴は少し早足になる。
「待って!」
奏斗が追いかける。
二人の声が廊下に響いた。
-–
放課後。
グラウンドでは、まだ練習が続いている。
「石川、今日は見学な。」
「うん。」
奏斗は隣に座る。
「……神崎。」
「ん?」
「本番。」
「?」
「一緒に走ろう。」
「もちろん。」
「今度はちゃんとバトン渡す。」
「当たり前。」
「……。」
「でも。」
奏斗は笑う。
「無理はなし。」
冴も笑った。
「分かった。」
-–
少し離れたところで、颯太と蓮が二人を見ていた。
「……なあ。」
颯太が言う。
「俺たち、完全にいらないよな。」
「うん。」
蓮も即答した。
「むしろ邪魔しないほうがいい。」
「だよな。」
二人は顔を見合わせる。
「……帰るか。」
「そうだな。」
静かにその場を離れていく二人。
-–
夕方。
グラウンドに残った奏斗と冴。
「体育祭。」
「うん。」
「楽しみだな。」
「……うん。」
二人は並んで空を見る。
体育祭本番まで、あと五日。
二人の関係も。
少しずつ、少しずつ。
前へ進んでいた。
-–
第26話 おわり 🌸
次回・第27話「本番」
ついに体育祭当日!
リレー直前、冴が奏斗に言った。
「絶対、バトン渡すから。」
そして迎えた最終種目。
二人の走りが、クラスの勝敗を左右する――❤️🔥
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水族館マニア
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#バッドエンド
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コメント
1件
ただいま読み終えました〜!体育祭の練習、冴くんの「大丈夫」がなかなか崩れなくてハラハラしたけど、奏斗くんが「今日は俺に頼って」って言ってくれたシーンでじーんときました。冴くんが「言えた」「神崎になら」って小さく笑ったところ、すごく好きです。最後の颯太くんと蓮くんの「邪魔しないほうがいい」にも笑っちゃいました。本番、二人のバトン渡し、絶対見たいです!