テラーノベル
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体育祭当日。
朝から校庭は大にぎわいだった。
「暑っ……!」
「水飲めよ!」
「分かってるって!」
クラスメイトたちが走り回る中、冴は自分の足を軽く確認していた。
「……大丈夫。」
その隣から声がする。
「石川。」
「ん?」
「無理してない?」
「してない。」
「本当に?」
「……本当に。」
「ならよし。」
奏斗は笑った。
「今日、絶対勝とうな。」
「うん。」
-–
午前の競技が終わり、いよいよ最終種目。
クラス対抗リレー。
「第三走者、石川!」
「第四走者、神崎!」
二人が呼ばれる。
「頑張れー!!」
「絶対一位取れよ!」
歓声が飛び交う。
冴はスタート地点に立つ。
隣の選手たちも構える。
「位置について――」
一瞬、静かになる。
「よーい!」
パンッ!
走り出す。
-–
一走、二走。
順位は三位。
そして――
「石川!」
バトンが渡る。
冴が走り出した。
「行けー!!」
「石川ー!!」
風を切る。
前の選手との距離が少しずつ縮まっていく。
931
#パニック
水族館マニア
248
#バッドエンド
752
一人抜く。
「すげぇ!」
もう一人。
「あと一人!」
冴は必死に走る。
そして、バトンゾーンへ。
前方には奏斗。
「石川!」
「神崎!」
冴が手を伸ばす。
――バトンが渡った。
「任せろ!」
奏斗が飛び出す。
-–
一位との差は、ほんの少し。
「神崎ー!!」
「行けー!!」
奏斗が走る。
前の選手も速い。
差は縮まらない。
それでも奏斗は諦めない。
(絶対。)
(追いつく。)
後ろから、冴の声が聞こえた。
「神崎!!」
奏斗が一瞬だけ振り返る。
「頑張れ!」
その声を聞いた瞬間。
奏斗の足がさらに前へ出た。
「……!」
ゴール直前。
並ぶ。
そして――
「ゴール!!」
-–
「……どっち!?」
クラス全員が結果を待つ。
係の生徒が順位を確認する。
「一位――!」
一瞬の沈黙。
「B組!!」
「うおおおお!!」
歓声が爆発した。
「勝った!!」
「やったー!!」
奏斗は息を切らしながら、その場にしゃがみ込む。
「……疲れた。」
そこへ冴がやってくる。
「神崎。」
「石川……。」
「勝ったね。」
「……うん。」
二人とも笑う。
「バトン。」
奏斗が言った。
「ちゃんと渡してくれたな。」
「約束したから。」
「そっか。」
奏斗は嬉しそうに笑った。
-–
少し離れたところ。
「……青春してんなぁ。」
颯太が腕を組んで眺めていた。
「そうだな。」
蓮も笑う。
「二人とも、前よりずっと自然になった。」
「だよな。」
「……。」
蓮が二人を見る。
「でも。」
「?」
「まだ本人たちは気づいてないみたいだけど。」
颯太が笑う。
「何に?」
「さあ。」
蓮は答えず、二人のほうへ視線を戻した。
-–
午後。
閉会式が終わり、みんなが片付けを始める。
「疲れた……。」
奏斗が机に突っ伏す。
「お疲れ。」
冴が水を差し出す。
「ありがとう。」
「今日、頑張ってた。」
「石川も。」
「俺は普通。」
「普通じゃない。」
「……そう?」
「うん。」
冴は少し考えてから言った。
「かっこよかった。」
「……。」
奏斗が固まる。
「神崎?」
「……今の、もう一回。」
「言わない。」
「なんで!」
「恥ずかしいから。」
冴は顔をそらす。
その耳が少し赤くなっている。
奏斗も、つられて笑った。
「じゃあ、俺も一個。」
「何?」
「今日。」
「石川がバトン渡してくれたの、嬉しかった。」
「……。」
「ありがとな。」
「……うん。」
二人の間に、静かな時間が流れる。
体育祭の喧騒が遠ざかっていく。
-–
帰り道。
「神崎。」
「ん?」
「今日。」
「楽しかった。」
「俺も。」
「来年も。」
「……。」
冴が少し笑う。
「また一緒に出られるといいね。」
「絶対出よう。」
「うん。」
夕暮れの道を、二人は並んで歩いていった。
その背中は、夏休み前よりほんの少しだけ近くなっていた。
-–
第27話 おわり
次回・第28話「風邪」
体育祭の翌日。
奏斗が学校に来ない。
「……神崎?」
いつもいるはずの席が空いている。
冴は妙に落ち着かない。
そして昼休み、冴のスマホに一通のメッセージが届く。
『ごめん、今日休む。ちょっと熱出た。』
冴は画面を見つめて――
「……。」
初めて、自分から**「大丈夫?」と連絡する**ことにする。
コメント
1件
読了しました🌙 体育祭の熱気がすごく伝わってくる回でしたね……!冴が奏斗にバトンを渡す場面、約束を果たす感じがグッときました。奏斗が「かっこよかった」って言われて固まっちゃうとこ、可愛すぎて笑っちゃいました。颯太と蓮が「まだ本人たちは気づいてないみたいだけど」って言うのも、読者としては「こっちは気づいてるよ!」って思いますね(笑)。 最後の帰り道、二人の距離が縮まった感じが温かかったです。次回、奏斗が体調崩すみたいで、冴が自分から連絡するって……成長ですね。続き楽しみにしてます!