テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
696
⭐︎
1,620
ろと。
13,917
kurara
1,236
警報が鳴り響く。
赤いランプが点滅する。
研究所全体が震えていた。
モニターには次々と警告が表示されている。
《封鎖解除》
《実験体解放》
《戦闘プロトコル起動》
研究員達の顔から血の気が引いた。
「先生!!」
「止めてください!!」
「制御できません!!」
だが。
榊は笑っていた。
静かに。
満足そうに。
「いいんだよ」
その言葉に。
誰も理解できない恐怖を覚える。
「データさえ残れば」
「失敗も成功も関係ない」
ヒロトが拳を握る。
「狂ってる……」
榊は首を傾げた。
「最初からだよ」
その言葉には妙な説得力があった。
⸻
ガコン。
ガコン。
遠くで重い音が響く。
カプセルが開く音。
足音。
唸り声。
何百もの気配。
モトキの耳が動く。
「来る」
レイも頷く。
『いっぱい』
そして。
廊下の奥から姿を現した。
獣人達だった。
狼。
熊。
豹。
鳥。
様々な特徴を持つ実験体。
だが。
その目は虚ろだった。
理性がない。
ただ命令だけで動いている。
ヒロトが息を呑む。
「こんなの……」
全員被害者だ。
モトキと同じ。
ヒロトと同じ。
レイと同じ。
それなのに。
兵器として使われている。
涼架が苦しそうに目を伏せる。
「……ごめん」
その声に。
モトキが振り向く。
「違う」
即答だった。
「涼ちゃんのせいじゃない」
涼架は何も言えない。
モトキは続ける。
「悪いのは榊だ」
その言葉に。
レイも頷いた。
『うん』
ヒロトも前を見る。
「助けよう」
短い言葉。
だけど。
それで十分だった。
⸻
実験体達が突進する。
その瞬間。
レイが前へ出た。
赤い瞳が光る。
空気が震える。
だが。
今回は違った。
以前のように力任せではない。
涼架が教えてくれた。
守るための使い方を。
レイは拳を握る。
『とめる』
実験体達の動きが鈍る。
衝突を避ける。
吹き飛ばす。
必要以上に傷つけない。
レイは少しずつ成長していた。
⸻
一方。
F-01は榊へ向かって歩く。
誰も止められない。
研究員達は逃げ出していた。
榊だけが動かない。
F-01は静かに言う。
「終わりだよ」
榊は笑う。
「終わり?」
「違う」
モニターを指差す。
そこには世界地図。
各地の研究施設。
秘密基地。
隠されたデータサーバー。
「私が倒れても」
「研究は残る」
F-01の表情が変わる。
初めて怒りが見えた。
「だから何」
「何人傷つければ満足する」
榊は答えない。
答えられない。
⸻
その頃。
モトキは涼架の前に立っていた。
周囲では戦いが続いている。
けれど。
二人だけの時間みたいだった。
涼架は弱々しく笑う。
「情けないねぇ」
「何が」
「助ける側だったのに」
モトキは少しだけ笑った。
「たまには助けられてよ」
涼架が目を瞬く。
モトキは続ける。
「オレだって成長したんだから」
狼耳がぴくりと動く。
少しだけ昔みたいな空気。
涼架の目から涙が零れる。
「……そっか」
三年前。
檻の中にいた少年。
今はもういない。
モトキは強くなった。
ヒロトも。
レイも。
みんな。
前へ進んでいた。
⸻
その時だった。
研究所全体が大きく揺れる。
轟音。
天井が軋む。
F-01が振り返る。
モニターには新しい表示。
《自爆シーケンス起動》
世界が凍りついたように静まる。
誰もが言葉を失った。
そんな中、榊だけが笑っていた。
「終わらせるなら」
その目は狂気そのものだった。
「全部終わらせよう」
研究所が崩れ始める。
残された時間は。
もうほとんどなかった。
コメント
1件
第22話、一気に引き込まれましたね。特にモトキが涼架にかける「違う」「涼ちゃんのせいじゃない」って台詞、あの即答感がすごく良かったです。檻の中にいた三年越しの信頼関係がちゃんとあるんだなって伝わってきて。それにレイが「守る力」を身につけてるところも、涼架の教えが生きてるんだなとじんわりしました。研究所の崩壊、自爆シーケンス…次が気になりすぎます…!