etさんはこの前の勉強会が終わった後も、毎日、毎日、俺にしつこく話しかけてきた。
「yanくん!連絡先交換しない?」 「…いや無理」 「えー、じゃあ電話番号は?」 「それも連絡先じゃね?」
これが、いつもの会話、日常。
さすがにもう、慣れてきたのか、俺が彼女から逃げることはほとんど無くなった。いや、席替えをして、彼女とは隣の席になったから、「逃げ場を無くした」の方が妥当な言い方だろうか。
この前までの俺だったら、「まじで最悪」としか思わないのに、最近はjppって言うもう1人のうるさい奴が話しかけてくるようになって、「この席も、学校も、悪くないな」って思えるようになってきた。 今まで1人で食べてたご飯も、jppと食べるようになって、高校生活2年目にして、楽しいと、初めて思えた。
※ ※ ※ ※ ※
ある日の放課後、etさんに「一緒に帰ろ」と迫られ、わざと面倒くさそうに返事をする。
いつものように「無理」って言えばいいのに、なぜかその日は「別にいいけど」なんてため息付きで言ってしまった。
「…珍しいね。私の誘い断らないなんて」
「…別に。たまにはって思っただけ」
「…ふ〜ん?」
口角を上げて、高い声で、煽るような返しをしてくる。
「…yanくん、なんか変わったね。jpと一緒に居る時間めっちゃ楽しそう」
「…普通」
「でもjpと話す時めっちゃ笑ってるじゃん。私と話す時は目が死んでるのにねー笑」
「…うるせぇ、黙れ」
なんでだよ、とカラカラと笑うetさん。
「…yanくん、学校楽しい?」
「…まぁ、嫌ってわけじゃない」
我ながら、捻くれた返事だと思う。素直に「楽しい」って言えばいいのに。 でも、etさんは、俺の言葉を静かに聞いて
「…そっか!」
…とだけ言ってきた。…なんだそれ。聞いてきた割にはあっさりとしていて、それでその話は終わった。
なぜそれを聞いてきたか疑問に思っていたが、etさんはすぐさま別の話題に移っていたのでまぁ…いいか、と考えを放り出し、彼女の話に耳を傾けた。
その後、俺がいつも通うバス停まで、etさんと会話しながら歩いた。結構道のりがあって、疲れるはずなのに、「余裕、余裕!」といつものように明るく振る舞っていた。
バスが来るまであと5分。
「じゃね、yanくん。今日はありがとう」
薄っすらと笑みを浮かべるetさん。それが、いつもよりも優しくて、少しだけドキッとした。
「楽しかったよ。…バイバイ」
寂しげな声で、それだけ言うと道を引き返すように、早足で帰っていった。
また一緒に帰れないかな、と思った。でも、心のどこかで、それはもう出来ないんじゃないか、と不安になる自分がいる。
だって、etさんは 「またね」って、また会えるって確信できる言葉を…言わなかったから。
でも、たまたまかもしれない。たまたま、言わなかったのかもしれない。 そうやって、自分に都合のいいように考えていると、バスが目の前で止まる。複雑な気持ちを抱えながら、一歩足を踏み出した。
次の日から、etさんは一切学校に来なくなった。
コメント
2件
えとさぁ〜ん😭学校来てー!