テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
253
朝の光がカーテンの隙間から差し込む。
「……すち、起きる時間」
らんが小さく声をかける。
布団の中で、すちは丸まったまま動かない。ぴくり、と指先だけが動く。
「すちー、朝だよ」
もう一度。今度は少し近くで。
「……や」
小さな声。顔はまだ隠したまま。
その様子をドアにもたれて見ていたいるまが、ため息をついた。
「ほらな、こうなると思った」
「うるさいな、今やってるから」
らんは慣れた手つきで、布団の端を少しだけめくる。
「今日はね、パンあるよ」
ぴく。
反応。
「……チョコ?」
「うん、チョコ」
一瞬の沈黙のあと、布団の中からそっと顔が出る。
寝ぐせだらけの髪と、まだ半分閉じた目。
「……ほんと?」
「ほんと」
そのやり取りを見て、いるまが小さく笑う。
「現金なやつ」
「いいの、それで起きるなら」
すちはゆっくり起き上がると、らんの服の裾をぎゅっと掴んだ。
「……いっしょ」
「うん、一緒に行こ」
立ち上がるときも、手は離さない。
リビングに行くと、テーブルの上にパンが並んでいる。
すちは一直線にチョコパンに向かう……かと思いきや、途中で止まった。
「……」
視線はテレビ。ついていない黒い画面。
「どうした?」
いるまが聞く。
「……きのうの、つづき」
「あー、アニメか」
「みる」
すちは真剣な顔で言う。
「先にご飯」
らんがやさしく言うが、すちは首を振る。
「みる」
少し強い声。
空気がぴんと張る。
いるまが口を開こうとした瞬間、らんが軽く手で制した。
「じゃあね、10分だけ」
「……10ぷん?」
「うん、10分見たらご飯」
すちは少し考えて、こくんと頷いた。
「……やくそく」
「約束」
らんがリモコンを渡すと、すちは大事そうに受け取る。
テレビがついて、昨日の続きが流れ始める。
その横で、いるまが小声で言った。
「甘くね?」
「これくらいがちょうどいいの」
「わがままになるぞ」
らんは少しだけ笑う。
「違うよ。“安心する”の」
「……」
「すく笑っている。
「……まぁ、泣かれるよりはマシか」
ぼそっと言う。
10分後。
「すち、約束の時間だよ」
らんが声をかける。
すちは一瞬だけ固まる。でも、すぐにリモコンを見て、テレビを消した。
「……できた」
少し誇らしげな顔。
「えらいじゃん」
らんが頭を撫でると、すちは少しだけ目を細める。
「……えへ」
その様子を見て、いるまがそっとパンを差し出した。
「ほら、チョコ。冷めるぞ」
「……いる、ありがと」
小さな声。
いるまは一瞬だけ目を逸らす。
「……別に」
ぶっきらぼうだけど、少しだけ優しい声だった。
朝の光がカーテンの隙間から差し込む。
「……すち、起きる時間」
らんが小さく声をかける。
布団の中で、すちは丸まったまま動かない。ぴくり、と指先だけが動く。
「すちー、朝だよ」
もう一度。今度は少し近くで。
「……や」
小さな声。顔はまだ隠したまま。
その様子をドアにもたれて見ていたいるまが、ため息をついた。
「ほらな、こうなると思った」
「うるさいな、今やってるから」
らんは慣れた手つきで、布団の端を少しだけめくる。
「今日はね、パンあるよ」
ぴく。
反応。
「……チョコ?」
「うん、チョコ」
一瞬の沈黙のあと、布団の中からそっと顔が出る。
寝ぐせだらけの髪と、まだ半分閉じた目。
「……ほんと?」
「ほんと」
そのやり取りを見て、いるまが小さく笑う。
「現金なやつ」
「いいの、それで起きるなら」
すちはゆっくり起き上がると、らんの服の裾をぎゅっと掴んだ。
「……いっしょ」
「うん、一緒に行こ」
立ち上がるときも、手は離さない。
リビングに行くと、テーブルの上にパンが並んでいる。
すちは一直線にチョコパンに向かう……かと思いきや、途中で止まった。
「……」
視線はテレビ。ついていない黒い画面。
「どうした?」
いるまが聞く。
「……きのうの、つづき」
「あー、アニメか」
「みる」
すちは真剣な顔で言う。
「先にご飯」
らんがやさしく言うが、すちは首を振る。
「みる」
少し強い声。
空気がぴんと張る。
いるまが口を開こうとした瞬間、らんが軽く手で制した。
「じゃあね、10分だけ」
「……10ぷん?」
「うん、10分見たらご飯」
すちは少し考えて、こくんと頷いた。
「……やくそく」
「約束」
らんがリモコンを渡すと、すちは大事そうに受け取る。
テレビがついて、昨日の続きが流れ始める。
その横で、いるまが小声で言った。
「甘くね?」
「これくらいがちょうどいいの」
「わがままになるぞ」
らんは少しだけ笑う。
「違うよ。“安心する”の」
「……」
「すく笑っている。
「……まぁ、泣かれるよりはマシか」
ぼそっと言う。
10分後。
「すち、約束の時間だよ」
らんが声をかける。
すちは一瞬だけ固まる。でも、すぐにリモコンを見て、テレビを消した。
「……できた」
少し誇らしげな顔。
「えらいじゃん」
らんが頭を撫でると、すちは少しだけ目を細める。
「……えへ」
その様子を見て、いるまがそっとパンを差し出した。
「ほら、チョコ。冷めるぞ」
「……いるにぃ、ありがと」
小さな声。
いるまは一瞬だけ目を逸らす。
「……別に」
ぶっきらぼうだけど、少しだけ優しい声だった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!