side.Kt
会議終わり、ちらりとまぜちを見る。彼はあっきぃ、ぷりちゃんと楽しそうに話している。心の片隅が痛む。そして無性に寂しくなる。
まぜちの動画に出てくることが多いのはあっきぃやぷりちゃん、それにころんくん。4人の仲がいいのは十分理解している。それでも、あっきぃ達が羨ましいと感じてしまう。AMPの歌ってみたやころんくんとのコラボ歌ってみたを聞く度に傷口を抉られるような痛みに襲われる。こんな事でクヨクヨする自分が1番嫌い。
「はぁ………」
ため息をついたら幸せが逃げるとか言うけどこればっかりは精神論じゃどうにもならない。しんどいものはしんどい。僕のことなんてどうでもいいのかな…。僕、これでもまぜちの彼女なんだけどなぁ…。
こんなに辛いなら付き合わなかった方が良かったかもしれない。惨めに振られた方が前を向けたかもしれない。苦しむのは僕だけでいい。
「俺ら、先帰るね!!けちゃも!!」
「そんじゃまた!!」
「ちぐ…?」
あっちゃんと僕を引っ張り出して会議室から出たちぐは神妙な顔をして僕に問いかけてくる。
「けちゃ、気づいてないかもしれないけどめちゃくちゃ顔暗いよ。なんかあったの?」
「だいぶ話しづらそうだったから連れ出してきた。急だったかもしれないけど」
2人にはバレバレなのかもしれない。ここは2人に相談するべきか…。
「長くなるから僕の家で話したい……」
「いいよ。お酒も買っちゃう?」
「買うか!!TAK飲み会も兼ねて!!」
そこからスーパーでビールとかおつまみとかお菓子とか買って僕の家まで行く。段々と僕も楽しくなってきた。家についてからはすぐにリビングのローテーブルに買ったものを広げて乾杯する。すぐに酔いが回り、頭がふわふわしてくる。心が無防備になってくる。
「けちゃ、なんで悲しそうな顔してたのか言える?無理強いはしないけど…」
「俺らは何も否定しないよ。話せるとこから話してみて」
もう全て、話してしまおうか。
「僕って、まぜちの彼女にふさわしいのかな…。誰とでも仲良いし人脈広いし。まぜちが他の人とコラボする度に息苦しくなって悲しくなって。僕だけひとりぼっちで取り残されてるみたいで……」
目の前が歪んでいく。あっちゃんが優しく肩をさするのに比例して涙がぼろぼろ零れてくる。
「そりゃ、僕なんかまぜちの人脈からしたら新参者でしかないし…あっきぃとかぷりちゃんとかとコラボした方が喜ばれるかもしれないけどさ……。僕だってまぜちのそばにいたいよ…」
心の奥底で隠していた誰にも言えない悩みが言葉になって自分自身を傷つける。
「僕、ほんとにまぜちのそばにいていいのかな……。別れた方が幸せなのかな……」
今まで言ってこなかった本音を自分で言ったくせに涙は堰を切ったように止まらなくなる。そんな僕の涙をハンカチで拭ってからあっちゃんが言った。
「そんなことない。きっとまぜはそれを望まないよ」
あっちゃんは僕の目をしっかり見つめて続ける。僕の背中をさすりながら。
「けちゃの気持ちは痛いほどわかる。でも、今の状態で別れたらけちゃもまぜも納得できない。俺らに出来ることがあるならなんでも手伝うよ。俺らだから話せることもあるだろ?」
「あっちゃん……」
あっちゃんの言葉にちぐも続く。
「そうそう。けちゃは悲痛に考えすぎちゃってるよ。俺らにはなんでも話していいの。TAKは3人じゃないと成り立たないからね」
「ちぐ………」
2人の優しさが心に沁みる。内側がぽかぽかと熱を持ち始める。僕ってこんなにも仲間に恵まれてたんだ…。
「2人とも…ありがとう」
「「どういたしまして」」
そのうちに酔いがMAXになって目の前がクラクラしてくる。眠くなってきてすぐに僕は夢の中に落ちた。
side.At
すやすやと眠るけちゃをソファに寝かせて俺の上着を被せる。その表情はどこか幸せそうだった。
「けちゃ寝ちゃった?」
「少し疲れてたみたいだな。このまま寝させてあげな」
ちぐが傍に寄ってきてけちゃの髪の毛を掬う。ニコニコとしてちぐは言った。
「それにしても、色々大変な2人だね。まぜたんの独占欲すごいのにけちゃそれに気づいてないもん」
「な。連れ出した時のまぜの形相が修羅だった」
仲直り出来るといいな、そう思って1度けちゃの頭を撫でた。俺も今日はもう寝ようかな……。
side.Kt
「ね、ねぇまぜち!!」
「ど、どうした?」
「あの…話があるから……」
「いいよ、俺らちょっと席外すな〜」
ド緊張してめちゃくちゃたどたどしくなってしまった。とりあえず話さないと……!!
「あ、あのさまぜち…。僕ってまぜちの彼女にふさわしい?」
「ふさわしいも何も…俺の彼女はけちゃ以外認めないぞ?」
予想外の答えにぽかんとする。当人は”何を当たり前のことを”とでも言わんばかりの表情である。
「けちゃが暗い顔してたのって…俺が原因?」
「いや、その……」
「ゆっくりでいいから話してみ」
「まぜちが動画であっきぃとかぷりちゃんと楽しそうにしてるの見ると…悲しくなって、僕なんか蚊帳の外なんだなって思って嫌になって……」
言葉が詰まりかけた瞬間まぜちに抱きしめられた。わけも分からず頭にクエスチョンマークを浮かべていると、「ごめん。そんな思い詰めさせてごめん」と謝られた。
「え?なんでまぜちが謝るの…?」
「動画撮ってる時は確かに楽しいよ。でも俺は裏でけちゃと一緒にいる時が1番好き。コロコロ表情変わるけちゃが面白いし、すごく可愛いから。俺はけちゃしか彼女にしないよ」
急に脳内処理量を遥かに超える愛を伝えられてキャパオーバーになる。顔が熱い、耳まで真っ赤になってしまった。
「お前が離れようと思っても俺が絶対離さないから」
「ひゃい………」
まぜちが持つ僕への愛は並大抵のものじゃない事を今日ひしひしと感じたし、離れようものならどうなるか理解出来た。
「やっぱ好きだなぁ……」
「え?なんて?」
「なーんにも!!」
気づいたらまぜけちゃタグのランキングにも載ってて嬉しい限りでございます……。
ぼちぼちシリーズものにも挑戦していきたいと考えているので見かけたら暖かい目で見守ってください。
コメント
2件
初コメ失礼いたします( . .)" 以前から主様の作品大好きで読ませていただいていたのですが、このお話めちゃくちゃぶっ刺さって思わずコメントしちゃいました笑 これからも投稿楽しみにしてます!