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部屋に入ると、静けさに包まれた。
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「タオル使え」
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差し出される。
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「ありがとうございます…」
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濡れた髪を拭きながら、落ち着こうとする。
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でも無理だった。
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距離が近すぎる。
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沈黙が、逆にうるさい。
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「……なんで断ったの」
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またその話。
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今度は、逃げなかった。
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「ちゃんと好きじゃないからです」
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まっすぐ言う。
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彼は少しだけ目を細める。
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「じゃあ誰ならいいの」
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「え…」
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「どういうやつなら」
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一歩、近づく。
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「好きになるの」
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言葉に詰まる。
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わからない。
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本当に、わからない。
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「……」
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その沈黙を見て、彼は少しだけ笑った。
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「わかってない顔」
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次の瞬間——
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腕を引かれた。
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「っ…!」
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気づいたときには、壁際に追い込まれていた。
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距離、ゼロ。
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「俺はさ」
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低い声。
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「他のやつに取られるの、普通に嫌なんだけど」
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心臓が止まりそうになる。
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「なんで…」
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やっと出た声。
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彼は一瞬だけ黙る。
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そして——
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「……それもわかんないなら、いい」
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そう言って、少しだけ顔を逸らす。
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でも、離れない。
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むしろ——
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「顔、こっち向けて」
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逃げ場がない。
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視線がぶつかる。
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近すぎる距離。
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呼吸が、重なる。
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「ほんと、無自覚」
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小さく呟く。
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そのまま——
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後ろから、そっと抱き寄せられた。
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バックハグ。
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でも今までと違う。
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逃げられない強さ。
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「他のやつのこと考えてる顔、すんな」
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耳元で、低く言われる。
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「……してないです」
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「してる」
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即答。
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心臓が、壊れそうなくらい鳴る。
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(なんでこんな…)
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でも——
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嫌じゃない。
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むしろ、離れたくないと思ってしまう。
コメント
1件
ああああもう25話読んだよおおお!!😭💕💕 距離の詰め方がエモすぎて心臓爆発しそうになったんだが!? 「ちゃんと好きじゃないから」って真っすぐ言うヒロインもいいし、それで一歩も引かずに壁際まで迫る彼も最高すぎる…バックハグで耳元「他のやつのこと考えてる顔すんな」は反則だよ!!🥺💖 「嫌じゃない」「離れたくない」って気づき始めてるの、尊すぎて倒れる… 次が待ちきれないよ!連載頑張ってねLiella先生!🔥