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──週が明けて、いよいよ矢代チーフと行く打ち合わせ時間が迫った。
ファイリングした紙資料や、パソコン内のファイルデータを確認していると、
「美都、デート頑張ってきてね?」
と、愛未から笑って声をかけられた。
「仕事だってば」と、苦笑いで返して、だけどデートという一言には、やっぱりちょっと意識しているからなのか、一瞬ドキッとさせられてしまった。
「川嶋さん、用意は出来たか?」
カバンを手にデスクを立ったチーフに、「はい!」と答えて、自分もあたふたと席を立つ。
「「いってらっしゃい」」
愛未と愛実の二人から手が振られて、「いってきます」と、片手を小さく振り返した──。
いざ打ち合わせに臨むと、今までは先方の要求を呑んで持ち帰るしかなかったのが、矢代チーフが「そこは、こうすれば──」と、その場に応じた対処をしてくれたおかげで、これまで停滞していたことが嘘のように話が進んだ。
「では、次回はグッズのサンプル案をお持ちしますので」
チーフが間を取りなしてくれたことで、なかなか通らずにいた構成案が受け入れられ、ようやく次の段階に移ることが出来た。
「はぁー、私が何度も先方と打ち合わせを重ねてきたのが、信じられないくらいです」
クライアント先を出た後で、安堵の吐息と共にそう口にすると、
「僕は、以前からあちらの体質を把握していたから、そこを突いて進めたに過ぎない。君の方こそ、今までよくやっていてくれただろう」
チーフは自らをおごることなく、部下の私をねぎらってくれて、本当にいい上司に恵まれたなと心から感じた。
「ありがとうございます。これからも頑張ります」
「ああ、君のことは評価している」
かけられた言葉に、矢代チーフのように理想的な上司に認めてもらえたことが、私には手放しで嬉しく思えた。