テラーノベル
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休憩したおかげで、だいぶ疲れがとれて歩けるようになった。だが、やはり夢のことが気掛かりだった。誰かに名前を呼ばれた覚えがある。声にも聞き覚えがあった。
「思い出せない。」
いつからだろう。こんな風に記憶が消えるようになったのは。小さい頃の記憶は、これっぽっちもない。最近の事さえもうろ覚えだ。でも、
「あ、そういえばあいつ、元気かな。」
唯一思い出したことがあった。それは、恋人のことだった。名前は思い出せないが、あの思い出だけは残っていた。
「ねえ、蛍。もし私たちどっちかが死んだり、消えたりしても、独りにさせないようにしようね。」
「え?それどういう、、、」
「あっ、もうこんな時間。かえらなきゃ。じゃあまたね。
「ちょっと、、、。どういう意味?」
あのあと、意味も聞けなかったまんま、死んじゃったんだっけ。
「元気かな。あいつ。」
やはり名前は思い出せなかった。でもあの場所に行けばなにか思い出せるかもしれない。そこに人もいるかもしれない。踵を返してあの場所へと向かって歩き出した。
「でも、どう行けばいいんだろ。」
辺り一帯ぼろぼろで道しるべとして覚えていた店や家はなくなっていた。だが、しばらく歩いていると、見覚えのある木があった。
「あの木は、、確か、あいつと待ち合わせした、」
たしかあの木を曲がってすぐのところが、あの場所だった気がする。歩く足が早くなる。懐かしいあの場所を早く見たくて、あいつがいるかもしれないということを信じて
真実を知るまで残り、、、
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