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ドワーフが放った幻獣が大口を開けて襲う。どうするべきかと身構えていたが、すでに奴の中に取り込まれ喰われていたようだ。
「……暗闇か? いや、幻獣の異空間ってやつだな」
自分以外何も見えない真っ暗闇な空間の中に放り込まれてしまったらしい。ダメージも無く何か異常を発しているでも無いが、少し油断が過ぎた。
右も左も暗闇で声も響かない。
恐らくこれがフォルネウスの技と思われるが、肝心のドワーフはコイツを制御出来ているのだろうか?
召喚する時、僅かだが迷っていた感じが見受けられた。召喚者が迷いを生じさせていたとなると、フォルネウスは自分の意思でおれを喰ったことになる。
「さてと、どうやるかな」
多少荒っぽくはなるが、爆発魔法で内部から破壊するのが手っ取り早いし炎属性でやってみるか。
……ということで早速発動させようとすると、微かに何かの音が聞こえる。
「はへぇぇ……誰かいませんかあぁぁ~」
助けを求めている声のようだが、この幻獣に喰われた者だろうか。そうだとすれば何者にもかかわらず喰らう厄介な奴とみなければならないが、何にせよ声の主を助けることにする。
だが、暗闇空間で反響も無くどこから聞こえているのかは正直分からない。感じるのは、声の主は相当な声量でずっと声を張り上げているだけ。そうなれば光魔法で相手に知らせることを試みるしか手はない。
「……闇を照らせ! 《ルーメン》」
光魔法に特別な力を持たせていないが、暗闇空間を照らすくらいは可能だ。この光に気付き、声の主が姿を現わしてくれるかどうかが問題だろう。
「ああぁぁぁっ! ひ、光です~! 光が見えますです!!」
意外と声が近いようで、すぐにでも会えそうだ。
「……ぐほっ!?」
そう思いながら待っていると、腰の辺りに鈍い衝撃が走った。
「ひゃあっ!? ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!! 何も掴まる所が無かったんですぅ」
「あ、あぁ、いいよ。そのまま落ち着いて、おれの正面に回ってくれないか?」
「お言葉に甘えまして~……」
「――というより、その声……」
どう考えても思い当たる娘のような気がする。必死になって動き回っていたのか、おれの腰にべったりとくっつきながら彼女は何とか正面に回って顔を見せた。
「おかげで命拾いしました。ありが――あれっ!? あ、あぁぁぁ……!?」
「わ、悪い、ルティシア」
まさか同じ所にいたとは。
「さ、探しましたよぉぉぉ!! アック様の言うとおり水耐性が備わっていたので、何とかもがいていたんです。そして気付いたら、こんな真っ暗闇な所に落ちてて。寂しくて悲しくて、グスッ……」
「ご、ごめん」
「本当ですよ~!! どれくらいここに閉じ込められるのかと思って、悲しくて悲しくて……」
「分かった、分かったから」
水耐性があることで放置していたが、まさかフォルネウスの中に落ちていたとは。どこかの海を彷徨っていなくて良かったが、もっと気を付けることにしよう。
「グスングスン……ア、アック様、もう大丈夫なんですよね?」
「も、もちろんだ」
「どうやって出られるんですかっ?」
「え~とだな……」
当初の予定どおり爆発魔法で空間ごと吹き飛ばすしか無いか?
しかしそうなると、いざ脱出した時に自分たちがどうなってしまうのか気になるところだな。