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「……わかっちゃいましたか?」
「ああ、これのことだろう?」と、チーフが家を出る時に締めてきた鍵を、手の平に取り出して見せた。
「はい、あの、それで……」
キーホルダーに付けた家の鍵を自分も手に乗せて、口を開く。
「言いにくいようだったら、僕から言おうか?」
その提案に、ふるふると首を振った。
「……私から言わなくちゃと思って、今日は心を決めてきたので」
「そうか、なら……、」と、彼が私の肩をさらにギュッと抱いて、「女性に言わせるのも忍びないが、君の決意もないがしろにしたくはないからな」と、呟いて、
「同時に、言おうか」
耳元に唇を寄せると、そう囁きかけた……。
「合鍵を、交換しよう」
「合鍵を、交換してください」
二人の声が重なり合い、くすぐったさにふふっと笑みがこぼれる。
「……チーフは、なんでもわかっちゃうんですね」
「君のことだからだ」
「えっ……」
「好きだから、君のことがわかるし、これからも、もっと君をわかっていきたいと、そう思っている」
迷いなく告げられた言葉に、愛されていることがひしひしと実感させられると、無意識の涙がこぼれた。
「……こっちを向いて」
泣いたことを隠そうとうつむいた顎が、片手で掬われ、涙の流れた頬にチュッとキスをされる。
「……あの私も、です。私も、もっとこれからもたくさん、あなたのことを、わかっていけたらって……」
私からも彼の気持ちにちゃんと応えたくて、つっかえつっかえではあったけれど、精一杯に伝えると、
「ああ……好きだよ、美都」
もう一度チュッと、今度は唇に柔らかくキスが落とされた……。