合鍵は、私は置いてきたカバンに入っているし、彼も家の引出しに保管しているとのことで、帰ってから交換をすることになった。
「早く帰って、君に合鍵を渡したいのももちろんだが、せっかく外に出たから、もう少しこうしていようか」
私の肩を抱いたままで言う彼の提案に、コクっと小さく頷いて、二人でベンチに座り、しばらく夜景を眺めていた。
「……こうして夜景を見ていると、これだけたくさんの人たちがいるんだなぁって思いますね」
ふと頭に浮かんだことを口に出すと、
「そうだな」と、彼が頷いた。
「これだけ多くの人たちがいる中で、君のように好きな人と出会って、そうして愛し合える確率は、どのくらいなんだろうな」
彼に「……本当に」と返して、その通りだと感慨深く思う。
私が矢代チーフを好きになったことも、チーフが私を好きになってくれたことも、奇跡みたいにレアな確率だったかもしれない上に、お互いに好きになったとしても、もしも二人の気持ちが少しでもずれていたら、今こうして付き合っていることもなかったのかもしれないと考えると、その確率は天文学的に稀なような気さえ、してくるようだった……。
変な時間にカレーを食べたこともあって、夕食は軽めに済ませて、マンションへと帰った。
彼が合鍵を持って来てくれて、私もカバンから合鍵を取り出すと、テーブルの上でさっそく交換をした。
「……私のキーホルダーに、チーフの部屋のカギが付いてるのが、なんだか不思議なくらいです」
自分の家と彼の家と二つの鍵がぶら下がったリコのキーホルダーを見ていると、自然と顔がほころんだ。
「ああ、不思議と夢が叶って。このペアのキーホルダーが、もしかしたら君と僕をくっ付けてくれたのかもしれないよな」
彼に頷いて返す。実際、矢代チーフを好きになったのにも関わらず、なかなか一歩を踏み出せないでいた私を、双子のこぐまのミコとリコが引き合って、彼と気持ちを寄り添わせてくれたようにも思えて、微笑ましくも感じられた。
「いつかは、このカギを一つにできたらいいな」
「……えっ、それって……」と、突然の彼からの言葉に、息を呑んだ──。
「そのままの意味だ。いつかは、きっと君と……」
チュッと口づけられた唇から、彼の想いの熱っぽさが伝わると、「はい、いつかきっと……」と、素直に応えられた。
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