テラーノベル
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うい、我です。
10,サイレンは、とーます視点のみです。
(以下略)
ーーとーます視点ーー
俺の言葉に応えてくれるように、かえるの指が動いた。
その瞬間、俺の目からは涙が溢れてきた。
かえるくんが生きている。
それが何よりも確かな事実。
応えてくれたその手を強く握りしめ、かえるくんに向かって語りかける。
「かえるくん…聞こえてるの…?
もう…大丈夫だから…。救急車がもうすぐで来るよ…。
だから…もうちょっとだけ頑張って……。」
「俺もずっとここに居るから…。」
何度も繰り返し伝えながら、玄関のドアに視線をやる。
犯人がまだ近くに居るかもしれないという警戒心が、胸の奥で警告を鳴らしている。
もし、犯人が戻ってきたら…?
そんな考えが頭をよぎる。
かえるを庇うように、自分の体を重ねた。
やがて、サイレンの音が近づいてきた。
ピーポーピーポー
徐々に音は大きくなっている。
マンションのエントランスに救急車が入ってきた事が分かった。
俺はかえるくんから手を離し、玄関のドアを開ける。
「ここです…!来てください…!」
救急隊員たちが駆け上がってくる。
彼らは手際よく、かえるくんの容態を確認し、担架に乗せた。
【電話をいただいた方でしょうか。】
【付き添いをお願いします。】
「分かりました…!」
ストレッチャーに横たわるかえるくんの意識は、まだあるか分からない。
俺はかえるくんの手を握ったまま、一緒に救急車に乗り込んだ。
車内では、隊員の方々が処置を進めている。
【今から病院へ向かいます。】
【ご友人は頭を強く打っているかと思われます。】
【精密検査が必要な状態です。】
【ですが、命に別状はありません。】
その隊員からの言葉に、俺はどれだけ安心する事ができたか。
今の言葉を、かえるにも伝えてあげたい。
「かえるくん、今の聞こえてた…?」
「大丈夫だって…。」
かえるの頬に触れ、優しい声で話しかけた。
けど、当たり前に返事は返ってこない。
顔も変わらず、穏やかなままだ。
救急車のサイレンが鳴り響く中、病院へ向かう道中で、再びかえるの手を強く握りしめる。
今度こそ俺が守るから。
もう2度とこんな思いはさせない。
そう強く誓いながら。
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