昔々、今とは違い、人々が栄え、魔法の使えるすてきな世界に、金髪の勇者と、緑髪の賢者がいました。
心優しく、想像力豊かな勇者と、賢く、器用な賢者は、幼い頃から仲良しでした。
勇者は武術、賢者は魔術の才能があり、2人は周りとは一線を超えた強さでした。
やがて2人は成人し、世界中に蔓延る魔物と、それを生み出す 魔王 を倒す為に旅に出ました。
旅の途中で2人は天使を従えたり、神様とされる存在と仲良くなったり、様々な心強い友達を各地に作っていきました。
その最中、2人は魔物の中でも最も強いとされている 青鬼族 が人々を困らせていることを知り、早速退治に向かいました。
多くの友達の力を借りて、2人は全ての青鬼族を滅ぼしました。
しかし、数日たったある日、2人はボロボロになった青鬼族の生き残りを見つけました。
賢者は 「 災厄の種になる、殺してしまおう 」
と言いましたが、
勇者は 「 可哀想だ、仲間にしよう 」
と言いました。
そしえ、話し合い、仲間にすることになりました。
2人は青鬼族の生き残りを捕まえて、初めに言葉を教えました。
その次に、2人はそれぞれの得意な剣術と魔術を教えました。
青鬼族は覚えが早く、その両方を2人と同等まで扱えるようになりました。
そして、2人は青鬼族と一緒に諸悪の根源、魔王を倒しに行くことにしました。
3人は激しい戦いを経て、魔王を倒すことが出来ました。
しかし、青鬼族はその後裏切り、国々を滅ぼして回りました。
青々と茂っていた森は荒れ果て、美しかった街並みも形を留めていませんでした。
勇者と賢者は自らの命をもって青鬼族を封印し、永遠の眠りにつきましたとさ。
ら 「 なに、これ…… 」
全く知らない、少し変わった御伽噺。
たったそれだけなのに、涙が止まらない。
「 読み終わった? 」
ら 「 誰!? 」
「 僕のこと…忘れちゃったの? 」
え、初対面じゃないの…?
「 まぁいいよ、着いてきて。 」
「 ここからは僕が説明するよ 」
一体何なんだ…?
見た感じ、人間では絶対無さそうだし…
でも、多分味方、なんだよな…?
「 そうだよ。記憶でも飛ばしちゃったの? 」
え?思ってたこと口に出てたのかな…?
「 いや、出てないよ。 」
「 この力も、君がくれたものなのにね… 」
いや、初対面だと思うし、人違いでは…?
って、まさか、思考を読まれてる…!?
「 気づくの遅いよね、相変わらず 」
え、なんか申し訳な…
えと、何か話題……
ら 「 あ、名前は…? 」
「 名前…? 」
「 まぁ、こぼせくん、とでも呼んでよ 」
くん までがセットなんだ…
ら 「 わかった、こぼせくん 」
ら 「 俺はらっだぁ、よろしくね 」
こ 「 …ッ……知ってるよ。 」
こ 「 この世で1番、呼び慣れた名前だよ… 」
やばい、マジでわからん。
俺は何か、忘れてしまっているのか…?
ら 「 い”っ゙っ…… 」
こ 「 …無理に記憶を辿ろうとしない方がいいよ 」
こ 「 でも、君は凄く大切な事を忘れてる 。 」
こ 「 ……思い出しても、死のうだなんて思わないでよね… 」
そんなに大変な事を忘れているのか…?
いや、考えない、考えない。
また頭痛がしたら嫌だし。
ら 「 ところで、どこに向かってるの…? 」
沢山の曲がり角を曲がって進む度、どんどん不気味になっていく周囲を警戒しながら進む。
俺の10分の1くらいしかないのに、どうして同じペースで歩けるんだ…?
いや、よく見ると少し浮いてる…?
……これはこれで考えると頭が痛くなりそうだ
扉を開け、更に入った先の部屋にある扉を開けると、ガラッと雰囲気が変わった。
コンクリートで全面出来ていて、質素と言うにはあまりにもシンプルな部屋だった。
いや、鉄格子に囲まれた部屋が並ぶそこは、間違いなく牢獄だった。
こ 「 僕には生憎と力は持ち合わせていなくて… 」
こ 「 君なら助けられるでしょ? 」
「 誰だ…って、らっ、だぁ……? 」
「 嘘、封印解けたの…!? 」
「 俺達、ずっと待ってたよ…ッ 」
牢屋の中に閉じ込められた人達、いや、鍵はかかってないから閉じ込められている訳では無いのか…?、が一斉に話しかけてくる。
黄色い着ぐるみ…?に緑髪の人、茶髪に赤、青、黄のメッシュが入った人、白髪に雪だるまのピンをつけた人…
個性が強すぎる。
なんかチャラい…
ら 「 えと、誰、ですか…? 」
こ 「 らっだぁは記憶を失っているみたいなんだ… 」
「 ……そっ、か… 」
「 嘘だろ…?嘘って言ってくれよ…ッ 」
ら 「 なんかごめんなさい… 」
こ 「 無理に思い出そうとすると、脳に負荷がかかっちゃうみたい… 」
「 そうなんだ… 」
「 …本当に何も覚えてないの? 」
ら 「 はい、すいません… 」
「 …ッ…… 」
「 敬語なんて使うなよ……ッ 」
こ 「 …とりあえず、自己紹介して? 」
「 …オレはるなりあ、よろしく 」
「 俺はみこだよ、みこ、でワンセットじゃなくて、みこだよ、まででワンセットだから! 」
「 俺はおいよ、よろしくね、らっだぁ 」
ら 「 えと、…よろしくお願いします…? 」
る 「 タメ口じゃなくていいよ、むしろ敬語やめて? 」
ら 「 はい…じゃなくて、、うん、分かった 」
こ 「 まず、彼らはら民…君の眷属なんだ。 」
ら 「 けんぞく…? 」
み 「 すっごい気に食わないけどね 」
こ 「 眷属って言うのは、簡単に言うと…手下?みたいな感じ 」
ら 「 手下…… 」
なんか凄そう…
こ 「 で、この3人は色々あって敵に捕らわれてるんだ 」
ら 「 でも、この牢屋簡単に出れそうじゃない…?扉空いてるし。 」
こ 「 まぁ、そうなんだけど… 」
こ 「 敵は僕達の味方を操って、人質に取ってる。 」
こ 「 だから、僕達はここから出れないんだ。 」
み 「 でも、らっだぁなら敵を倒して彼らを救える 」
る 「 ヒーローになるチャンスって訳〜 」
ら 「 成程…? 」
多分彼らの言ってる敵は今俺達が追っている敵と同じだろうし、なんか知り合いだったらしいし、丁度いいのか…?
こ 「 まぁそうだね。 」
お 「 じゃ、待ってるから行ってきて〜 」
こ 「 あ、そうだ。 」
こ 「 ―――――――――――――。 」
こ 「 ――――、―――― 」
ら 「 …わかった。 」
こ 「 多分アイツはステージにいる。…頑張って。 」
ら 「 ……行ってくるね。 」
一旦別れを告げ、俺は部屋を後にした。