【星野家】
あの事件から数年後、俺とルビーは4月から中学生になる。入学までの春休みにある事が起こった。
ーアイが吸血鬼だった
アイ)アクア、話聞いてるー?
アクア)き、聞いてる、けど……
ー意味が分からない
ルビー)ママ、吸血鬼なの!?かっこいい〜!
アイ)でしょ〜?
ーもうダメだコイツら…あれ、でもなんで今?
アクア)アイ、なんで吸血鬼だってことを俺とルビーに言ったんだ?
俺がアイにそう聞くと、アイは真面目な顔をして姿勢を正した。それを見て俺も自然と姿勢を正す。
アイ)…アクア、ルビー。今から大事な事を言うからよく聞いて
アクア)……
ー緊張する
アイが今から何を言うのか。アイドル活動をしている時とは違う意味で目が離せない。
アイ)まずは、私の吸血鬼としての血はルビーに遺伝してる
ルビー)えっ?
アクア)ルビーが…吸血鬼……?
遺伝…だろうな。アイとルビーは容姿が似ているから殆どのDNAを受け継いでる。
アイ)そう。それでアクアの方なんだけど……
ドクン
ー嫌な予感がする
アクア)っ……
聞いてはいけないという恐怖心と、気になってしまう好奇心がある。アイは少し言いづらそうに口を開く。
アイ)アクアの血はね、凄くいい匂いがするの
アクア)…は?
ー血が美味しいって事で合ってる、のか?
急に怖くなった。この世界には吸血鬼がとれくらいいる?さっきの説明の知識量からすると、吸血鬼なのはアイとルビーだけじゃない筈だ。
ルビー)っ、お兄ちゃん…?
アクア)ルビー?どうした、熱でもあるのか?顔が赤いけど…うわっ!?
ドンッ
後頭部にズキズキとした痛み感じる。両手首はルビーに拘束されており、強く握られる。
アクア)ルビー、痛い…!
ルビー)お兄ちゃん、いい匂いする……
首元を嗅がれる。恥ずかしいのと恐怖心で無理に抵抗できない。ルビーを傷つけるのは嫌だ。そんな事を考えている間にルビーの顔が首筋に近づき、すーっと匂いを嗅がれる。
ーなんだろう、頭がくらくらして、何も考えられなくなる。
そっと、行為を初めてする女性を相手するような優しい口付けを首筋にされる。吸血鬼の特性なのかは分からないが、それだけで蕩けるような気持ちにされる。
ー駄目だ、このままじゃ流される…!
アクア)た、助けて、アイ…!
アイ)ルビー
ルビー)っ!
アイ)アクアから離れて。じゃないといくらルビーでも許さないよ。アクアはそこから動かないで。すぐに助けるから
ルビー)っ、あ、ごめんママ……
アイ)ルビー、大丈夫だよ。まだ吸血鬼って知ったばかりだもんね。もっと早く教えた方が良かったかな〜
ルビーがアイに後ろから抱きしめるのを見る。もし、アイがあのまま何も言わなかったらと思うと…いや、これ以上考えるのはやめておこう。
アイ)アクア、大丈夫?
そっと頭を撫でられる。ルビーは俺たちから少し離れたところでそれを見ていた。なんか、申し訳なさそうなルビーを見ると、少し落ち着いてきた。
アイ)その調子だよ、アクア
アクア)え…?
アイの言葉の意味が分からず、思わず聞き返した。
アイ)アクアの血は元々は普通の人とほとんど変わらない。でも、感情が昂ったりすると、甘くなったりして美味しくなるし、いい匂いがし始める…って感じ?
なんで疑問形なんだよ。まぁ、僕が吸血鬼について全く知らなかったから、それが出始めたのは最近なんだろう。産婦人科医だったのもあるだろうが、それにしても情報が少なすぎた。
アクア)大体の事は分かった。俺も色々と調べてみるよ
アイ)よし、じゃあご飯作らなきゃ!アクアは部屋で休んでて良いよ!怖かったでしょ?私とルビーで美味しいの作るから、楽しみにしてて!ね、ルビー?
ルビー)え、あ、うん!
アクア)……
─不安だなぁ
料理が地味に下手な2人に任せるのは少し…かなり不安しかないけど、ミヤコさんに電話掛けて事情説明しよ。
アクア)分かった。じゃ、よろしくな
ルビー)あっ、待ってお兄ちゃん!
呼び止められ、振り向くと思ってたより近くにルビーがいた。驚いて数歩下がろうとしてが、後頭部をルビーの手で優しく抑えられる。
アクア)んぅ…!?
口にキスされた。何故か舌も入れられ、身体に快感が走る。アイに見られているのが恥ずかしくて、目を瞑った。
ルビー)ごめんなさいのチュー。私、もうあんなことしないように頑張るから!
アクア)お、おう……
過去一キスの時間が長かったのに疑問を持ったが、聞かない事にした。
【アクア 部屋】
部屋に入った途端、ズルズルと床に座り込んだ。腰が抜けて立てない。なんとか堪えきれて安心したのか、眠気に襲われる。
アクア)妹とのキスが気持ち良かったなんて、言えるわけないだろ……
終わり