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漱…どうすんのさ…
「 そんな焦らさんなや。 」
トン。
漱はツーブロックを入れる。
細川けいと sid
このツータッチ。なんだか嫌な思い出が蘇る。
「 豊岡漱です3歳からバレーボールには触れてました。ミドルブロッカーです。よろしくお願いします。 」
中学1年の一番最初。ただ者ではない何かを持って豊岡漱はこの華虎学園中等部に入ってきた。
「 細川けいとです。6歳からバレー始めました。セッターです。 」
「 え、細川って、千咲の弟?! 」
「 セッターなんや!千咲と一緒や無いんやな!でもええやんセッター! 」
いつもいつも、俺を話すときには千咲の弟から入る。
俺は細川けいとじゃなくて細川千咲の弟としてみんなの中で存在が確立される。
そして極めつけは
「 豊岡くんさ、セッター。向いてるんじゃない? 」
から始まる。俺の屈辱感との闘い。
3年の初めての公式試合。スターティングメンバーに俺はいなかった。
屈辱。刺さる中継の声。
「 華虎学園中等部。セッターである豊岡君は元はミドルブロッカーだそうですが、
セッターとして育て上げられたと思ってもなんの不思議もない程の実力です! 」
あー。ムカつく。なんでこんな。こんなやつに、俺が。俺が劣るんだ。
俺は才能も体格も別に優れた方ではない。それに加えて少し喘息持ちというのもある。
だけど一切努力を惜しまなかった。努力は報われるなんて嘘かも知れない。
だけど俺は努力でしか人との差を埋めれない。才能のある人間と何もない人間。
元から差があるのは当たり前で仕方がなくって。
だけど、仕方が無いからって割り切れる程、俺のバレーへの執着は軽いものじゃない。
兄と比べられ、色んな人に比べられ。比べられていつも劣って。
だけど、俺は比べられようと、劣っていようと、俺の真剣な感情は無駄じゃないはずだ。
「 無駄じゃない…無駄じゃない… 」
ベンチでそっと、呟いてみた。
だからって何も今は変わらないけど。
「 ん、けいと。お帰り。試合、どうだった? 」
「 …うっせ。 」
「 … 」
反抗期だ。自覚はしてる。兄にも申し訳ない思いでいっぱいだ。
「 わりぃ…兄ちゃん。 」
俺の視界はぼやけていた。涙の粒が俺の手の甲に落ちるのが分かった。
「 …けいと。俺はけいとになにもしてあげる事ができない。
それに俺はけいとじゃないから、けいとの気持ちの全部は理解できない。だけど、けいとは。 」
ぎゅっと、温もりを感じた。
「 俺の、永遠の相棒で、最高のセッターだよ。 」
優しく撫でる兄の手は、ものすごく心地よいもので涙はもっと落ちる。
「 あ゛ぁ゛、なんでそんなこと、平常心で言えんだよ…クソ兄貴…! 」
「 あ、またいつものけいとだ。 」
その日の晩飯はなんだか美味く感じた。
細川 けいと ほそかわ けいと
ポジション:ミドルブロッカー
背番号:6
身長:188.7
体重:68.3
誕生日:9月2日
クラス:2年
好物:高野豆腐の煮物
最近の悩み:豊臣君、頼りがいある。あと兄貴は黙れ。
細川 千咲 ほそかわ ちさき
ポジション:ウィングスパイカー
背番号:1
身長:182.3
体重:64.9
誕生日:8月23日
クラス:3年
好物:煮込みハンバーグチーズ乗せ
最近の悩み:弟が反抗期。