テラーノベル
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ちょっと始まる前にワンクッション!!
※吐血表現が出てきます
※エセ関西弁です
よろしければ、どうぞ!
第1話 ERROR
side:保科宗四郎
[緊急怪獣警報。緊急怪獣警報。]
….真夜中、
寮の静寂を切り裂く、どデカいアラーム音。
叩き起こされるように向かった通信室のモニターには、
眼を疑うような無数のエラー表示が真っ赤に点滅していた。
「これは…..どないしたんや」
「保科副隊長!」
「それが、よくわかっていなくて….」
別のオペレーターが口早に叫んだ。
「今回の規模、出ました!」
「本獣の推定フォルティチュード………..8.4!」
「クラス、大怪獣です!!!」
その言葉に、眉をピクリとひそめる。
(よりによって、亜白隊長がいないこんなタイミングで…?)
「映像、映します!」
その声に反応して、ドローンから送られてくる映像に目を向ける。
(……引っかかるところが多い怪獣やな。)
いくらなんでも再襲撃が早すぎる。
前回、立川に怪獣が現れたのはつい一ヶ月前のことだ。
怪獣の発生周期は不規則とはいえ、この頻度は異常。
そして、不可解な点は、もう一つ。
怪獣の見た目が妙だ。
…..送られてくる映像に映る怪獣の皮膚は、
明らかに自然発生とは思えないほど人工的で、歪な形状をしている。
無数のエラー表示の正体はこれだろう。
早すぎる再襲撃。歪な外殻。
そして何より——主砲である第3部隊隊長、亜白ミナが不在のタイミング。
(まるで、………狙い澄ましたみたいやな)
そう思い立ってはじめて、背筋にゾクリと悪寒が走った。
…….最近現れた、ヒト型識別怪獣・怪獣9号。
仮に今回の襲撃に、奴の思惑が働いているのだとしたら。
そして。
……その嫌な予感は、見事に当たった。
当たってしまったのだ。
side: 防衛隊第3部隊 隊員
土砂降りの雨。
息を吸うたびに、仲間の血の匂いが鼻を満たしていく。
「はっ、ぁっ……!」
泥に足を取られて、新人隊員はアスファルトを転がった。
ドォォォォン…!!!
直後、さっきまで自分がいた場所を、崩落したビルの一角が轟音と共に押し潰す。
すんでのところで躱すのが精一杯で、泥まみれの銃を構え直す余裕すらない。
「撃て! 撃ち続けろ!!」
誰かの金切り声が響き、青白い銃線が闇を縫う。
だが、対怪獣用の徹甲弾が分厚い外殻に触れた瞬間、パァンッと乾いた音を立てて無情に弾き返される。
普段なら、着弾と同時に雨水に混ざって散るはずの怪獣の血飛沫は、一滴たりとも舞わない。
自分たちの持つ全火力が、文字通り「傷ひとつ」つけられていないという残酷な証拠だった。
ジジッ….
『A地区、B地区、ともに壊滅!』
『防衛ライン突破されました! 討伐区域を、F地区まで拡大します!!』
『全隊員、直ちに後方へ退避! 繰り返す——』
通信から飛んでくるオペレーターの悲痛な声が、雨音にかき消されていく。
「………..防衛ラインが、蹂躙、されて……..」
「……あ、ぁぁ!」
不意に、後方で短い悲鳴が上がった。
次に聞こえたのは、ドサリ、と肉が泥に沈む音。
続いて、主を失った重いライフルが、硬いアスファルトにカランッと虚しく転がる音が、ひどく鮮明に鼓膜を打った。
….血の気が引く思いがした。
音のした方向を振り返る勇気すらない。
ただ、足元を流れる雨水が、急速に赤黒く染まっていって、自分の足をつたう。
地獄絵図だ。
「…..亜白隊長がいないだけで、こんな………」
_________本来なら、遠距離からの超高火力でこの巨大な標的を打ち抜くはずの部隊の『矛』が、今夜に限って不在。
私たちにはどうすることもできない。
その事実が、隊員たちの心を急速に折っていく。
『…本獣、F区域のバリケード破壊…!』
防衛ラインが、いよいよ完全に瓦解した。
ぬちゃり、と怪獣が巨体を揺らして一歩踏み出す。
巨大な尾が天高く振り上げられ、新人小隊の頭上に、無慈悲な死の影が落ちた。
もう駄目だ。誰もがそう目を閉じた、その瞬間。
——シュパァァァンッ!!
雨音を切り裂くような、鋭く、そして美しい刃音。
迫り来る巨大な尾と新人隊員たちの間に、見慣れた小柄な背中が割り込んでいた。
「……まったく。新人があんまり無理したらあかんで」
振り返った保科副隊長は、いつものように糸目で、飄々とした笑みを浮かべていた。
「副隊長……!」
「無事で何よりや。」
「ここは僕が片付けるから、お前らは後方で仕留め損ねた余獣の対処に回れ。」
そう告げる保科の視線の先で、超大型怪獣が耳障りな咆哮を上げた。
さっきの攻撃は牽制にはなったが、怪獣の歪な皮膚には浅い傷しか刻めていない。
(なるほどな。こりゃあ、僕の刀とは相性が最悪や)
次々と飛んでくる攻撃を躱しながら、保科は冷静に敵の戦力を分析する。
……….「面」で斬り裂くには、相手は大きすぎ、硬すぎる。
ならば、装甲の継ぎ目という「点」を正確に穿ち続けるしかない。
「解放戦力……83%」
スーツの出力が跳ね上がり、保科の姿が掻き消えた。
神速。その言葉すら生温いスピードで、巨大な怪獣の周囲を縦横無尽に駆け巡る。
装甲の隙間、関節部、眼球の死角。
「保科流刀伐術、2式——『交差打ち』!」
硬質な装甲を削り取る火花が、雨の中で幾重にも弾けた。
圧倒的な技量。
少しずつ、でも確実に怪獣の動きが鈍っていく。
このままいけば、倒せる。
そう確信した一瞬の隙だった。
________怪獣の巨体が、不自然に大きく膨張した。
『副隊長! 対象の生体反応が急激に変化——全方位への棘皮(きょくひ)攻撃が来ます!!』
通信機からの小此木の声と同時に、怪獣の背部から無数の巨大な棘が、散弾のように射出された。
「ッ……!」
保科の反射神経ならば、回避するのは容易い。
だが、その視界の端——後方へと退避しようとしていた新人隊員の一人が、泥に足を取られて転倒しているのが見えた。
無数の棘と、怪獣の薙ぎ払うような極太の尾が、無防備な新人へと迫る。
間に合わない。
そう脳が理解するより早く、保科の体は動いていた。
「副隊……!」
「——伏せとけやぁ!!」
ドンッ! と新人を力任せに蹴り飛ばして射線から外した瞬間。
メキョッ……!!
鈍い、絶対に人体から鳴ってはいけない音が響いた。
怪獣の尾の直撃。
防衛隊最強クラスのシールドを展開してなお、強烈な質量が保科の脇腹を容赦なく粉砕した。
「が、はッ……!」
一瞬、目の前が真っ白に染まる。
口の中に生暖かい鉄の味が広がり、
膝から崩れ落ちそうになるのを、無理やり堪えた。
「ふ、くたい……ちょう……?」
「……早く、行け。足手まとい、や……」
泥まみれの新人に背を向けたまま、保科は絞り出すように命じる。
隊員が泣きそうな顔で後方へ走り去る気配を感じてから、保科はゆっくりと怪獣に向き直った。
いつもの笑みは、もうない。
薄く開かれた目に、氷のような冷たい殺意だけが宿っていた。
「……さて。お楽しみの時間や。」
滴る血をビッと払って、双剣を握り直し、
保科は、絶望的な体格差の敵へと向かって跳躍した。
つづく
コメント
1件
逃がされた隊員も生きた心地しないだろうなぁって、私も思う。