テラーノベル
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「まず最初に。 『少数派』と『廃棄物』は全く別の組織だ。 共通点は、どちらも仮面持ちによって構成されているという点だけ」
オレをここまで連れてきた秀次郎……、ここではキャンディーだったか。 キャンディーは奥のデスクの上に座って、携帯をいじり始めた。
本当に、マイペースな奴だ。
「『少数派』とは、世の中に異を唱えた持たざる者たちの集まり。 あいつらはEXEという旗頭によって組織に招待され、仮面の力を与えられ、自身の願いを叶えるために付き従う、異能の私兵団チームだ。 その活動はテロリズムもどき。 あんな中途半端で、自分たちを抑圧してきた社会に報復しているつもりだ」
「……お前たちはテロリストじゃないと言いたいのか? オレの学校を占拠したディオは『少数派』じゃなかった。 お前たちの仲間だったろ。 あれがテロじゃなきゃ何だって言うんだ?」
「俺たち『廃棄物』のほとんどは、元々は『少数派』の構成員だった奴が多い。 EXEから仮面を貰って活動していたが、思想のズレを感じて離反した者たちが集まった小さな集合、最後の居場所。 それが『廃棄物』。 『少数派』はEXEが全統括して組織の形を保ち、メンバーにテロ活動を遂行させているのに対して、こちらは明確な指導者を決めず、メンバー各々が好きに動き回っている。 責任も自己責任、『廃棄物』とはただの居場所なんだよ。 テロ活動を組織で画策したりなんかしてねえのさ。 その辺り、認識しっかりしておいてもらわなくちゃな」
「じゃあこう言いたいのか? ディオは身勝手に行動しただけの単独犯、『廃棄物』は全く関係がないと?」
「イエス、その通り。 それどころか、一度は『少数派』と考えが合わないって離反してきたはずのあいつは、『廃棄物』からも出ていった。 無所属の状態だったのさ」
「随分とお前らに調子が良くないか? あいつは事件後に逮捕された。 今話していたことが事実かどうか、審議できるのはお前らしかいない。 それに、ディオは自分の口で『分派』と言っていたんだ。 無関係だなんて信じられないな」
「あー、確かに無関係とは言えないかもな。 実は事件前、俺たちのメンバーの一部が奴に操られたらしい痕跡があった。 そいつが言うには、数週間の記憶がなく、気がついた時には3Dプリンターの前で、合成樹脂を基本素材にした手造り銃を大量生産していたらしい。 お前なら見覚えあるんじゃねえか? ヒーロー」
勿論、知っている。
あの事件の日、学校中でディオが乱射していたカラフルな単発銃の数々。
一発撃つだけで機構が破裂してしまっていたのは……、金属ではなく樹脂素材を使っていたからだ。だからあんな色合いだった。
ディオの権能『悲劇の誕生』は相手を役職で縛り、洗脳操作する能力。
もしそれを使って『物言わぬ銃職人』なんて役職を他者に振り与えていたのなら、ジョン・ドゥが言っていることは実現できるだろう。
てことは、あの占拠事件は『廃棄物』を権能で利用したディオによる、本当に個人で行われたものだったのか……?
いや、責任を追われたジョン・ドゥがディオを切り捨てるためについた、辻褄合わせの嘘かもしれない。
矢張り、まだ信じられない。
「まだ疑ってるって顔だな」
「当然だ、あいつに殺されかけたんだぞ。 もしあの事件が本当はお前らの命令だったとしたら、今オレは危険のど真ん中にいるっつーことになる。 そりゃあ、疑い深くなるだろ」
「友好度マイナスから始まる攻略対象は嫌いじゃない。 クリアのし甲斐が有るからな」
「……ゲームの話か?」
「ああ、俺はゲームが好きなんだ」
それと信頼回復のために言っておくけど、とジョン・ドゥは続けて、
「俺たちはテロなんてする気無えんだぜ? これまでもしたことはないし、これからもするつもりはない。 証拠を提示できるわけじゃけえけどな、そこは『廃棄物』っつー居場所ができた目的を聞いて、信じてもらうしかない」
「『廃棄物』の、目的……?」
『少数派』の目的は、自分たちが気に入らない世の中に反逆すること。
かなりぼんやりした狙いだから、ずっと明確な目的が定められているのかも知れないが、根っこは同質のはず。
それに対して、『廃棄物』はジョン・ドゥの話によれば、『少数派』に異を唱えた思想違いの者たちの集まり。
そんな奴らの目的……、自然に考えれば「世の中に反逆するなんて馬鹿らしい」というのが正反対の主張だが、そんな考えを持つ組織にしてはかなりアングラ感が強い。
それに、そういった正義的な考えを持つなら警察なんかに権能や仮面持ちの情報を漏らしちまった方が早い。無駄に集まって、居場所がなんだと言いだす必要はないはずだ。
「俺たちはひとつだけ、どうしても『少数派』を許せないことがある。 それは、権能のホワイトリスト制だ」
「ホワイト……? なんだそれ?」
「EXEの配下には、権能ってのは特別な力だって考えが蔓延している。 君もロビンソンちゃんからそういう話聞いたことないか?」
”『少数派』は権能を持つ者
だけが集まる組織だけどね、
だからって互いの権能の情報を
不用意に共有することはないんだ。
権能は、この不条理な世の中で抑圧され続け、
持たざる者となってしまった
私たちにとっての最後の取り柄、
最終兵器なのだからね。
それを人においそれと語る奴はまず居ないよ”
仮面持ちにとって、仮面の能力は他者に知られるワケにはいかないとっておき。
秀次郎が『そして誰もいなくなった』の話をしていた時にも、マジかこいつって顔をしていたのを憶えている。
「あいつらはさ、権能を……、やっと得ることの出来た自分だけの特別な個性とでも思い込んでいやがんだよ。 誰にも渡したくはない専売特許だと。 俺はそれが、どうしても許せない。 新作ゲーム機が転売ヤーのせいで全然手に入らない状況より許せない」
「『少数派』が権能を使えるのが許せないってことか?」
「違う、権能を使うこと自体はいい。 問題は独占していること。 あいつらが権能を得るにはEXEの『鍵』を使わなきゃあならない。 逆に言えば、『鍵』によってEXEから許可を受けなければ、権能を得ることが出来ない。 こんな不平等なことがあっていいわけねえ、そう思うだろ?」
不平等……?
まさか、こいつら『廃棄物』がやりたがっているのは、権能を振るって自分たちの融通を通すなんて言う身勝手なテロなんかじゃなくて――――、
「……俺たち『廃棄物』の目的は、
『鍵』の世界的共有、そして……、
仮面を拡散し、権能を全人類の資産にすること。
誰しもが特別になれる世界を作ることだ」
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