テラーノベル
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「この子可愛い!」
僕はその一言で生活が一変した。まだ僕が2ヶ月ほどの頃、ペットショップというところで色々な犬とともに売られた。それから少しして小さい子供のいる家庭に飼われることになった。ペットショップの人と別れるのは寂しかったけれど人間の家で生活するのは幸せだった。暖かい部屋にもふもふのベッド。大盛りのドッグフード。仔犬ということもあってか僕はいつも撫でられ輝かしい目で見つめられた。5歳頃になった時、小2だった息子は中1になり僕への態度は前より冷たくなった。そこまで構ってくれなくなった。おもちゃを持っていっても遊んでくれない。いつも「ゲーム」「ゲーム」と言っている。両親は最近生まれた0才の娘の世話に夢中で構ってくれない。いつの間にか僕は一人遊びばかりするようになった。
そんなある日、僕は段ボールに入れられた。そして、どこかわからない草の生い茂った木陰に置かれた。
「ごめん」「ごめんね…」
いつも世話をしてくれたお父さんとお母さんは僕にそう言い残してどこかへ行ってしまった。それから僕は帰ってきてくれる。そう思って待ち続けた。暑い昼も寒い夜も。雨の日も風の日も。お腹がどんどん減ってくる。でも動かなかった。帰ってくると信じていたから。
そんなある日。僕は見知らぬおじさんに保護された。おじさんは建物に連れてくるなり僕を大きな檻の中へ入れた。そこには多くの犬がいてどのコも角にいた。そして大盛りのドッグフードと水をくれた。僕は美味しくて美味しくて夢中になって食べた。でもここは寒くてわんわんとそこらじゅうから鳴き声が聞こえてくる。それも寂しそうだった。これから僕はどうなるのだろう。不安でいっぱいだった。でも僕はまた飼い主さんに会えるためにここで待ち続けた。
いつだろうか僕はある日、苦しそうな辛そうな犬の鳴き声を聞いた。僕もこれからこうなってしまうのかな。そんそん僕を不安が襲ってくる。
そんなある日、僕目当てなのかとある夫婦が訪れた。その夫婦の奥さんが僕に手を近づけた。僕がその匂いを嗅ぐ。悪い感じはしなかった。それから僕は夫婦の家に引き取られることになった。そこでの生活は今までと違った。ちゃんとご飯はくれるしいつも遊んでくれる。その生活は前の家の生活と全く違って幸せだった。そして僕が15歳になった頃。どんどん体力がなくなりやがで倒れた。そしてそのまま息を引き取った。その時も僕のそばには夫婦がいて、いつまでも頭を撫でてくれた。この家庭に来れて良かったな僕はそう思った。何度生まれ変わっても……
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