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私はウエイトレスが持ってきてくれたコーヒーに手を伸ばしたが、すぐに手を引っ込めた。呉林の顔を覗いた。恐怖と混乱の再来で視線に力が入った。
「怖いこと言わないで!」
安浦が、ジャイアント・パフェを頬張るのを止め、また泣きそうな顔になる。けれど、めげずにジャアイアント・パフェに挑む。
「でも、実際問題として、また起きる可能性は誰も否定できないわね。それに私には解るのよ。また、こんなことが起きると。それに、きっとこれは……始まりに過ぎないわ」
呉林は冷静に言った。さすがに呪い師の先生というだけあって、説得力のある雰囲気を纏っている。けれど、それが今では戦慄を覚えさせる。たんなる商売道具だった。まるで、解らないことは私に聞きなさいと言っているようにも取れた。
私はとある事に気が付いた。
「呉林。このことの原因はいったい何なのかな。解ることは何でも教えて欲しい」
呉林は少し溜息を吐いてから、
「私にも解らないわ。……でも、こんな体験がまた必ず起きるわ」
そう断言した呉林の顔は自分の言葉に心酔しているようだ。
「君のやっている占いみたいな事でも解らないかな? 金は無いけど」
私は少し強めに言った。呉林は臆することなく、
「昨日の雨の日。喫茶店でコーヒーを飲んでから、どうも調子がおかしいのよ……」
「そうか……」
そういえば、私も昨日の雨の時、喫茶店でコーヒーを飲んだ。……何か引っ掛かる。
「安浦は?」
私は心の引っ掛かりを何とか取り外そうとした。
「え、あたし? コーヒー飲んだよ。真理ちゃんと一緒に」
「そうね。確か頑丈そうな赤レンガのお店だったわね。あれから私、家に帰ってからいくつかの書類の依頼をこなそうとしたけど、全然駄目だったわ。力が出ないのよね。困ったことに」
と、少し疲れたような顔をして俯いた。
「え、頑丈な赤レンガの喫茶店だって!? それって、ひたちの牛久にあって、林の中にポツンとある喫茶店かい。確か名前は笹井喫茶室!」
驚いた私は叫んだ。
「そうよ。私と恵ちゃんはあの日。ひたちの牛久の店で買い物をして、住宅街を通って家に帰ろうとしたんだけど、急に土砂降りになったんで、仕方なく近くの喫茶店に逃げ込んだのよ。折角の買い物袋を濡らしたくないから。共通点があったわ!」