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【おい滉斗、今すげぇ可愛い子見つけたんだけど。今ナンパしてる!やばい、超タイプなんだけど!!見て!!】
ゲイの友人・崚介から、お調子者らしいメッセージに、一枚の写真が添付されて送られてきた。
仕事帰りの車内で、スマホが鳴らす通知に目をやる。返信しないと面倒臭そうなので、一度道路の端に車を停めてメッセージ画面を開く。
「またナンパしてんのかよ…」と呆れながらも写真を開くと同時に、思考が停止する。
信じられないことに、写真に写っていたのは、困り顔でアタフタしているあの元貴だった。
胸の奥がざわつき、すぐに崚介に電話をかけた。
「……っ、もしもし?そこどこ?」
「……うん、あー…今すぐ行くから、絶対その場所動くなよ!」
そう告げて電話を切ると、急いでハンドルを切った。
俺は、元貴のことを傷付けたことを後悔している。この数週間、ずっと逢いたかった元貴に会えるかもしれない。そんな期待が頭よりも先に身体が動かせた。
数分後、崚介に伝えられた駅に着くと、車を降りて二人の姿を探す。やがて崚介と困り気味に話している元貴が見えた。俺は足早に二人の元へ向かう。
「……おい、崚介!お待たせ、」
「おお、滉斗!見てよこの子!超可愛いでしょ!?」
そう言って得意げに振り返る崚介。
その向かいには、俺の声を聞くなりハッと顔を上げる元貴。俺の姿を認識すると、その瞳を大きく見開いた。驚きと、期待が入り混じったような表情。
「あー……、うん。」
崚介が元貴の肩に腕を回そうとした瞬間、俺は迷わず元貴の腕を掴んで、崚介の手から元貴を庇うように引き寄せた。
「ごめん、この子もらっていい?」
困惑して固まっている崚介を置いて、元貴の腕を引いて車へと促した。
後ろから崚介が「なんだよ急に!待てよ!」と声を飛ばすが、振り返らない。久しぶりに触れた元貴の肌は、相変わらず柔かった。
車内は外の喧騒が嘘のように静寂に包まれていて、何だか気まずい雰囲気になる。元貴がシートベルトを締め、俺はエンジンをかける。
「…っ、急にごめん、強引に連れて来ちゃって。」
「ぅ、ううん……。むしろ、助かりました…。」
「…そっ、か…!ごめんね、俺の友達が…」
「平気平気!…急に話しかけられてビックリしたけど笑」
再び車内に気まずい沈黙が訪れる。隣に座る元貴は、視線を色んなところに泳がせてモジモジとしている。
一度息を吐いて、ゆっくり口を開いた。
「……、元貴」
名前を呼ばれた途端に顔を上げて、俺を見つめながら首を傾げる元貴。俺は胸がトクンと鳴るのを感じながら、丁寧に言葉を紡いだ。
「あの日は…ごめん、俺…本当は「ばいばい」なんて書くつもりなくて…!」
「っ、……う、ん…」
「それに…DMも、既読無視したみたいになってるけど、本当に違うから!」
「すぐに返信したかったんだけど……な、何て返そうか迷ってるうちにタイミング逃して…本当にごめん、」
「……っいいの、今日逢えただけで…嬉しい、から…。//」
「…でも……返信来なくて、不安でした…。」
少し照れたような、拗ねたような表情で見つめられる。その艶やかな唇を尖らせて、いじけているような姿は、堪らなく可愛かった。
同時に胸がキツく締め付けられ、元貴を不安にさせてしまったことに罪悪感を抱く。
「…そう、だよね。本当に、俺が悪かった…。でもね、俺はずっと…元貴に逢いたかったよ。」
元貴の瞳から一筋の涙が零れる。
「僕も…っ、滉斗さんに逢いたかった、です…。ずっと……ずっと忘れられなくて…。」
元貴の震える声と頬を伝う涙を見て、俺は堪らず元貴の涙を指で拭った。俺の手に頬を擦り寄せる行為が、あざとくて可愛くて理性が吹き飛びそうだ。
震える指で涙を拭いながら、俺は次の言葉を探していた。逢いたかった、ずっとそう思っていたのは本当。でも、この先どうするべきなのか明確な答えは持ち合わせていなかった。
「…もう、嫌われたかと思った、あ……、」
涙を堪えながら、眉を寄せて小さく呟く元貴。その言葉に、思わず苦笑した。
「…そんな訳ないでしょ、あの日から、他の人と会ってないんだからね。」
元貴は目を丸くして俺を見つめて、それからふわりと笑った。その笑顔に、俺の胸の奥がジンと温かくなる。
「…よかった//」
そう言って俺の手に自分の手を重ねてきた。元貴の「よかった」という言葉が、俺の胸を僅かに弾ませる。
少し冷たい指先が、俺の体温の混ざってじんわりと温かさを帯びていく。その感覚に、俺は無意識に指を絡めた。
「…行こっか。元貴の家まで送ろうか?」
一応そう提案してみたが、正直なところ、このまま元貴を解放したくはなかった。
元貴は小さく首を横に振って、
「……、/か…帰りたくない…///」
…と呟く。あの夜と同じように、少し照れながらもまっすぐに俺を見つめている。
「滉斗さんの、家に…行きたい、の」
その言葉に、俺の心臓はドクンと音を立てる。思考が停止し、色んな感情が俺の中を駆け巡る。
元貴はその言葉が持つ意味を、本当に分かっているのか?俺の家に来るということは、つまりそういうことだ。もう一度、身体を重ねたいと、そう言ってくれているのか…。
俺の心臓は、耳元で聞こえるかと思うほど激しく脈打っていた。指先が、僅かに震える。
深い意味があるかないか、どちらにせよ、このまま元貴を家に返すなんて選択肢は無かった。俺は元貴の本当の気持ちを確かな言葉で聞きたいし、俺も伝えたい。
車は住宅街を抜け、大通りに出る。俺の自宅マンションへと続く道。
「元貴…ほ、本当に俺の家行くけど……いいの?」
ハンドルを切りながら、最後の確認で尋ねるが、元貴は静かに頷いた。
マンションの駐車場に車を停め、エンジンを切る。
静寂が訪れると、途端に鼓動が大きく聞こえる。元貴に聞こえてしまいそうだ。
元貴がシートベルトを外し、俺の方を見る。その潤んだ瞳には、もう迷いはないようだった。
先に車を降り、元貴の助手席のドアを開ける。
「…あ、りがと……、/// 」
元貴は少しはにかんだように微笑み、車を降りた。その仕草一つ一つが、俺の心を締め付ける。
エレベーターに乗り込むと、密室になった空間で、一層緊張が高まる。あの日のホテルでのエレベーターを思い出させるようで、鼓動が高鳴っていく。
階数を示す数字が上がっていくのを見つめながら、俺は隣に立つ元貴の肩が僅かに触れるのを感じた。
元貴からは、あの夜と同じ、甘い香りがした。
一旦切るねー✂️
コメント
8件
あ〜…好き、最高すぎますよ!
うあああああぁ!!!!キタ━(゚∀゚)━! ガチで楽しみにしてました ガチで嬉しいです 最高ぉお!!!!(゚∀゚ 三 ゚∀゚)