テラーノベル
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俺の部屋のドアを開けると、玄関に置いているアロマキャンドルの匂いが漂う。
元貴は部屋に足を踏み入れるなり、ゆっくりの部屋を見渡す。
「……、っわ…すご、っ…広いですね……!それに、お洒落…。」
元貴がそう呟いた。元貴の声には驚きと高揚が混ざっていて、あの夜のホテルではしゃいでいた元貴の記憶が、鮮やかに蘇る。
営業マンとしてそれなりに稼ぎ、住む場所にはこだわってきた。この部屋は、もう俺にとっては当たり前の光景になっていたが、元貴の無邪気な感動を見ていると、俺まで嬉しくなった。
「…そんなことないよ、ほら…上がって?」
「ぁ…、お邪魔します…!」
元貴の荷物を受け取ると、元貴がそう言って靴を脱ぎ、ご丁寧に脱いだ靴を揃える。そしてパタパタとリビングに向かう背中を見送ってから、俺は静かにドアを閉めた。
リビングのソファに腰掛けた元貴を見守りながら、荷物を適当に床に置く。元貴は少し緊張していているようにも見えたが、何処か安心したような表情も浮かべている。
「元貴、…先手洗ってきな?」
「あっ、はーい……っ!」
ハッとしたように立ち上がって洗面所に向かう元貴。洗面所まで案内してあげた後、洗面所を見回して再び目を輝かせる元貴を微笑ましく思いながら、コーヒーでも淹れようかとキッチンに向かう。
棚からカップを取り出して、ポットに水を入れようとしたその時、服を引っ張られる。
「っ、ん…?」
後ろに振り向くと、手を洗い終わった元貴が、小さな手で俺のシャツを握っている。その指先は僅かに震えている。
元貴は潤んだ瞳で真っ直ぐに俺を見上げていて、俺の行動を制止するようだった。その瞳に吸い込まれそうになり、俺は息を呑む。
「……………コーヒーはいいから…」
「…っ、…離れたくなぃ、///」
それを聞いてしまったら、もう理性で抗うことはできなくて、俺の腕が吸い寄せられるように元貴の背中に回る。その華奢な体を抱き寄せると、元貴の頭が俺の肩にそっと埋められる。
「……うん、っ分かってる、」
「ぉ……俺も、だから…っ//」
元貴の身体を強く抱き締めると、元貴の腕が俺の背中に回る。俺はもうこの温もりを二度と手放したくなくて、この夜がただの一夜で終わらないことを強く願う。
俺と元貴の身体は、まるで溶けるかのようにピッタリと寄り添っていた。あの夜以来、ずっと求めていた温もりと柔らかさ。俺はこの感触を全身で味わうように、元貴の首に顔を埋める。
元貴の柔らかい髪が俺の鎖骨から首をくすぐる。すぐ近くで微かに聞こえる、元貴の呼吸が心地良い。
どれくらいの時間が経ったのか、数秒にも数分にも感じられたその抱擁を、ゆっくりと解く。元貴の肩に手を置きそっと距離を取ると、元貴は潤んだ瞳をさらに大きくして、真っすぐに俺を見上げていた。
元貴の頬は赤く染まり、長い睫毛が震えている。その瞳に吸い込まれるように見つめていると、次第に熱い視線が絡み合い、言葉にならない感情が込み上げる。
「……、元貴、」
「っ、…ひ、ん…んむっ、……ぅ」
元貴の柔らかい頬に手を滑らせて、名前を呼ぶ。そしてゆっくり唇を重ねると、元貴が一度震えてからそれに応えるように唇を寄せて来る。その行為が堪らなく可愛くて、そっと腰に腕を回す。
「ずっと、ずっと……、ん、ちゅ、…逢いたかった、……。」
絞り出すように本音を告げながら、元貴の首を撫で下ろす。元貴は小さく身震いして、頬を更に赤らめた。ゆっくり唇から離れると、元貴が小さな口を開く。
「……僕も…っ、滉斗さんのこと、忘れられなかったです……//」
「連絡がなくて、もう逢えないんだって…何度も自分に言い聞かせようとしたけど、……ダメだった…。」
元貴の震える声が、俺の心を震わせる。元貴もまた、同じように苦しんでいたことを知った。俺が抱えていた後悔と、元貴の寂しさが、この瞬間ようやく繋がった気がした。
「元貴も、……同じ気持ちだったんだ…?」
俺が嬉しさを隠せずに問いかけると、元貴はこくりと頷く。
元貴をそんな気持ちにさせてたのが申し訳なくて、でもそれ以上に元貴と同じ気持ちだったということが嬉しくて。堪らず元貴を抱き締める。
もう、これまでの自分だとか、プライドとか、そんなことはどうでもよかった。ただ、目の前にいる元貴が俺の全てだった。
俺は元貴の手を取り、ゆっくりと寝室へと向かう。元貴は俺に手を引かれるがまま、俺の隣で少し恥ずかしそうに俯きながらも、その手を強く握り返してくれた。
部屋のドアを開けると、穏やかな照明が二人を迎え入れた。
元貴は、部屋に入ると少しきょろきょろと周りを見回した。基本的にシンプルな内装だが、壁に飾られた抽象的な絵画や、棚に無造作に置かれた洋書などが、俺のパーソナリティを物語っているのかもしれない。
「……ほんと、滉斗さんって…お家まで素敵なんですね…//」
元貴が感嘆の声を漏らし、少し照れ気味に呟いた。
俺は元貴の手を引いてベッドの側まで導く。互いに向き合うと、さっきリビングで交わした思いが再び胸に湧き上がってくる。
「…なんか、緊張する……笑」
思わず本音が漏れた。少し恥ずかしくなったが、元貴は俺の言葉に小さく微笑んだ。その表情には、俺と同じように緊張の色が見える。
これまで数えきれないほどの相手と肌を重ねてきたはずなのに…元貴を前にすると、まるで初めての夜を迎える少年のように心が騒ぐ。
…こんなに大切にしたいと思うのは、元貴だけだった。
「ぼ、くも……少しだけ…//」
そう言って、元貴は俺の握る手に更に力を込めてきた。その温もりが、俺の不安を和らげていく。
俺は元貴の手を離し、その頬にそっと触れる。滑らかで温かい肌の感触が、指先から伝わってくる。
元貴は目を閉じ、俺の指に頬を擦り寄せる。その仕草が、堪らなく愛おしい。
「っ、……元貴、いい?」
元貴がその言葉に、照れがちに頷く。互いの気持ちは、もう十分に通じ合っていた。
俺は、元貴の頬を撫でていた自分の手をそっと離し、元貴のYシャツのボタンに指をかけた。
キタ━━━━━━━
作者が一番喜んでます
コメント
7件
ずっと待ってました!ありがとうございます!最高です!次も楽しみにしてます!
スマホが復活した! 久しぶりだったから見れてなかった分を一気見してきました。 最高です…次回が楽しみ!
ふぉああああ!!!!!キタ━(゚∀゚)━!サイッッッコウ!!!!!!神!!!