コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
そうこうしているうちに、あっという間に夏季休暇が終わり、明日はいよいよホグワーツへ戻る日だ。しかし、情勢は混沌を極める一方で、各地で子供が相次いで失踪している。最後の晩の夕食どき、祖母が私に告げた。
祖母「明日、菊田先生が送って行ってくださるって」
イ「先生が?」
祖父「こんな世の中だからな。お前を1人で行かせる訳には行かない」
祖母「明日の朝、家まで来て下さるそうよ」
イ「ふーん、わかった」
夕食を終えてベッドに入る。そして祖父母が言ったことを思い返した。世間は今どうなってしまったのだろうか。もしかしたら、私の友人もいなくなってしまったかも。不安が堂々巡りして、その晩はなかなか寝付けなかった。
気が付くと、カーテンから漏れる朝日で目を覚ました。いつの間にか眠っていたようだ。
身支度を整え、荷物をまとめて1回に下ろす。祖父母と朝食を取り、いよいよ家を出る時間だ。
祖母「今度帰ってくるのはクリスマスかしら、待ち遠しいわね」
祖父「気をつけるんだぞ、頑張れよ」
イ「ありがとう!また手紙書くね」
祖母「待ってるわ」
そんなこんなしているうちに、玄関のドアが叩かれた。
祖父「時間通りだな。」
時計を一瞥した祖父がそう言うと、祖母がドアを開ける。
菊田「おはようございます」
祖父「久しぶりだな、先生」
菊田「お久しぶりです。お元気でしたか?」
祖父「お陰様でな」
祖母「おはよう、イーヴァをよろしくね」
菊田「もちろんです、イーヴァ、おはよう」
イ「おはよう先生」
菊田「では、行ってきます」
祖母「元気でね」
祖父「手紙忘れるなよ」
イ「いってきまーす!」
そう告げて私たちは駅へ向かう。
道中は他愛もない会話を続けていた。
菊田「休暇はどうだった?」
イ「2人が、あんまり外には出るなって。少し退屈だった。皆との文通だけが楽しみだったよ。先生は?」
菊田「あー俺?俺は…仕事が嵩んで忙しかったな」
イ「先生たちはどれぐらい知ってるの?」
菊田「知ってるって、なにを?」
イ「失踪事件のこと」
菊田「……まだハッキリとした情報が入ってないんだ。でも、既にホグワーツ生でも失踪者が出てる。」
イ「ほ、ほんとに…?」
菊田「残念なことにな…」
イ「みんな無事だといいけど…」
菊田「イーヴァも気をつけろよ」
イ「うん、わかってる…」
仲のいい友達がもし失踪事件に巻き込まれていたとしたら?そんな一抹の不安を抱え、列車に乗り込んだ。列車が発車してしばらくした後。揺れるコンパートメントの窓をノックする音でふと我に返った。するとそこには、大きな体躯を少しかがめて、私の様子を伺うような素振りを見せる有古くんがいた。彼の姿を見て、嬉しいと同時に安心感を覚えた。
イ(有古くんは無事だったみたい…)
有「ここ、座っても?」
イ「もちろん!」
この休暇の間、文通でのやり取りだけで、彼と顔を合わせることは出来なかった。そのためか、私は無意識に頬を緩ませていたらしい。
有「何かいいことあったのか?」
イ「えっ…なんで?」
有「その……笑ってる、から」
咄嗟に頬に手を当てて、誤魔化そうとした。
イ「いや…会えてよかったと思って」
そう言うと彼は一瞬目を見開き、耳を赤らめて俺もと答えてくれた。しかし、彼は僅かな違和感に気づいていたらしい。
有「何かあったのか?少し…不安そうな顔をしている…」
私の不安の種について、話そうか迷った。しかし、世の中がこれほど混迷しているのだから、有古くん然りホグワーツ然り事の重大さには気づいているだろうと思い、口を開いた。
イ「最近起きてる失踪事件のこと…知ってる?」
有「…ああ」
イ「ホグワーツの子も…」
有「そう、なのか」
イ「みんな無事だといいんだけど…」
有「学校に通っている場合じゃなくなるかもしれないな」
イ「せっかく新学期が始まってみんなに会えると思ったのに…でもいまは安全が優先だもんね」
有「でも、イヴァンナに会えてよかった。手紙が来るから無事だと分かったけど、少しでも遅れると不安だった…」
イ「実は私もだよ。皆の安否が不安で…」
有「どうなるんだろうな、これから…」
私たちの胸に不安が募り始めた。