「実は、歩君。今日の全校生徒が体育館に集まる時に、大事な時にトイレに行ったんだそうで。その時に亜由美ちゃんも4年3組だったと思いましたが、席を随分空けてたんだそうです。でも、私は信じていますよ」
僕は首を捻って不思議に思った。けれど、あまり気にしないことにした。亜由美なら本当にトイレに行ったんだと思う。きっと、トイレで本を読んでいたのだろう。
羽良野先生が帰ると、午後の五時半だった。
僕はおじいちゃんの部屋へと向かった。
「おじいちゃん?」
和室には、いつの間にか家に来た幸助おじさんとおじいちゃんが将棋を打っていた。一階から亜由美が階段を上ってきた。多分、4年の担当の先生に送ってもらったんだと思う。
澄ました顔をして、自分の部屋へと入る亜由美はいつものように僕の顔も見なかった。
まるで、周りの風景は自分とはなんの関係もなく、見たい時だけ見て、触りたい時に触ればいいと思っているのではないだろうか。
「あー!! やられた!」
幸助おじさんの叫びが聞こえた。僕はおじいちゃんに聞こうとしたことを、幸助おじさんに聞くことにした。
「幸助おじさん。例え話だけれど、大人が建物の三階から地面に飛び降りることはできるかな?」
溝が深い顔がこちらに向いた。
「可能でしょう。素人でも受け身くらいはとれば大丈夫」
「固い地面でも?」
「固いとダメ。固いコンクリートでなければ、三階の高さなら着地だけしっかりしていればね。でも、実は三階などの高さから飛び降りることは、非常に危険なんだ。丁度、転落した場合だが、頭部が真下に向きやすい」
「うん。解ったよ。ありがとう」
幸助おじさんは歯を見せてニッと笑うと、目線を将棋に向けた。
僕は三階にある放送室の窓から、犯人は飛び降りたと考えている。三階の高さだけれど、大人なら可能だと幸助おじさんが言った。子供だと多分無理。放送室の窓の下には柔らかい土の花壇があるんだ。
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