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「”プロイセンについて教えてくれ”だぁ?」
ある日の会議後、バイエルンは不愉快そうに眉をひそめ、質問者であるドイツを睨みつけるようにしてその質問内容を反芻した。
会議後話があると呼び止められてみたらこれか、というバイエルンの心の声がその不快そうな目元から読み取れる。
「あんな奴、ただの田舎モンだ。忘れろ」
「しかし…」
「忘れろっつってんだあんな奴!!!」
元々会議で機嫌が悪い日だったのも相まってか、机に拳を叩きつけて吐き捨てる。
元々バイエルンは独立心が厄介なほどに強いから、ドイツ統一を達成させたプロイセンは嫌いなのかな、とドイツは考えつつ、ここまでバイエルンが毛嫌いするプロイセンとは何者なのかと興味を抱いていた。
機嫌が悪いバイエルンに言うことを聞かせる術は心得ている。
「本当に話す気はないのか?」
「あんな奴のこた思い出したかねぇ。数日前にザクセンと話したんだろ。それで十分じゃねぇか。」
「そうか…お前ならきっと含蓄に溢れた素晴らしい話を聞かせてくれると思ったんだが、どうやら見当違いだったみたいだ。仕方ない、プファルツにでも尋ねに…」
「だぁぁ分かった!!分かったよ!!話せば良いんだろ話せば!!」
「快い返事、大変助かる」
そのプファルツへの異常な対抗心は何処から湧くのやら。
ドイツは半ば呆れつつも、バイエルンの隣に座り話を聞く体制を整えた。
「かっこいい英雄譚とかそういうのを期待してんなら失せろよ」
まずもって断っておくが、プロイセンはドイツじゃねえ。
最初の領土見りゃ分かんだろ、どっからどう見てもポーランドの辺境だ。
今でこそドイツの国家ヅラして教科書に載ってるがな。
俺は元から「ドイツのバイエルン」だった。
由緒正しき名門ヴィッテルスバッハを君主に頂く公国となり、常にドイツで存在感を放ち続けていた。
対してアイツはどうだ?
神聖ローマ帝国の範囲内に無い、国としての歴史も浅い、ぽっと出の田舎者!!
そんな奴がいつの間にかまたまた北の辺境ブランデンブルクと組んで、我が物顔でドイツに居座るようになった!!
王国を名乗り始めてからだ。アイツが「プロイセン王国」になってからはすべてが気に食わなかった。
北の辺境国、皇帝のお情けで成立したに過ぎない国のくせに、馬鹿でかくしやがった軍隊を振りかざしていっちょ前に大国ぶり始めたんだ。
俺の継承戦争が始まった時だ、アイツは俺をオーストリア牽制のコマとしか見ていなかった!
だからこそ、フランス帝国にボコボコにされているアイツを見た時はせいせいしたぜ。
ティルジットの和約でまぁ見事に落ちぶれちまって…本当に、面白かったなぁアレは!
…だが、その直後からアイツは俺たちを見なくなった。アイツが見ていたのは更に先、「統一されたドイツ」だった。
それからは、ずっとプロイセンが全ての中心だった。
ずっと、ずっと、ずっと!!
ドイツですらないくせに!!田舎出身のぽっと出のくせに!!
ずっと高く舞い上がって、全てを見下ろすように、陽の光を隠すように羽ばたき続けていた!!!
まぁ、1918年にアイツの歩みは止まるわけだがな。
そこからは没落の日々だ。
ナチスの台頭だよ。
遅れてきた敗戦のショックと恐慌の中で、プロイセンは異様なまでに英雄化され、神格化された。
なんやかんやアイツは自身の作り上げたドイツを見捨てることができなかったんだろうな。
あの時はドイツの全員がナチスに逆らうことはできなかったが、プロイセンはその中でも苦しみながらナチスに協力し続けた。
ま、そうやって、ナチスという悪魔の寵愛を受け入れてしまったプロイセンは、1947年に「断罪」されたんだがな。
悲惨な最後だったぜ。
…「お似合いな最後だな」と言ってやる気にもならない程にな。
あのまま、北の辺境で大人しくしてりゃあ、あんな最期を迎えることは無かっただろうによ。
「結局、プロイセンを認めていたんじゃないか」って?
バカ言え。最初に言っただろ。アイツはドイツじゃない。俺はプロイセンをドイツと認めたことはない。仲間だと思ったこともない。
アイツはずっと空を飛んでいた。地上を這いつくばって歩く俺を見下ろし、悠々と進む鳥だった。
そんな奴と友達だとか仲間だとか言えるものかよ。
勝手にドイツを名乗って、勝手にそのドイツの責任を感じて死んでいった出しゃばり野郎だ。
それで十分だ。それ以上、話すことはねぇ。