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さて、お次のお題は……。『模型世界を体験せよ』か。やはり確実にチュートリアルのような内容をやらせ感覚を麻痺させてのめりこむように仕向けてきている。主催者の思惑までは分かんないが、少なくともろくなことを考えてるやつではないだろう。こんな狂った場所から出るためには皮肉にもこのゲームをクリアしないといけない。その中で私が感じたわずかな違和感。『彼』はこの模型は現実世界に影響すると話していたが、果たしてそれは本当なのか?単に私達を狂わすための嘘なのではないか?そんな説が私の中で浮上した。
実際、そんなことが可能なのかと言われたら不可能のはず……。それこそ神の御業というべきだろう。しかし、彼は『神様ゲーム』と題した。これはゲームだと彼本人が言い放ったのだ。ならばこれはただのゲームではないのか?もちろん、彼があえてそうやって言うことで罪の意識をかき消そうとしている説もないわけではない。それでもやはり、違和感は残るものだ。それを確かめるためにお題の『模型世界』に入る。この先のことを知るためには必要なことだ。それに、どうあがいてもこの模型世界を使った『命令』『行動』は馬鹿みたいに来るだろうからね。
最後、入る前の懸念点はある。それは『片道切符』なのかどうか……。声の主、彼は模型世界に入れるとは話していたが出れる方法は語っていない。入れるからと言って出れるそんな固定概念は捨てた方がいいかな。なので入るのは躊躇しているのが今の状態だ。ここでとる策はいくつかある。うち一つ、彼に連絡を取る『黒の端末』を使う方法があるがこれを使えば枷が増えてしまう。ほかの方法は自分以外の参加者から情報を得る方法だが、これも難儀なものだ。仮に私が欲している情報を持っていたとしても交換条件を渡されるはずだ。この場にいる以上私含めた参加者はろくでもないやつなのは確実。なので、この方法をとるのは最終手段としたい。変にこんな奴らと交換条件するくらいなら主催者『悪魔』に力を借りる方が幾分かマシだろう。カード二枚を引くのは恐ろしいが‘‘その程度‘‘なら別に必要経費と割り切れる。
「……。もしもし?」
「おや?こんなに早い段階で私に連絡をするものがいるとは……。」
「聞きたいことがあるの。」
「えぇ。お答えしますが、もちろんわかってるな?」
「はい。カードの件ですね。」
「うん。分かっているならそれでいい。それで?聞きたいことは?」
「模型世界について」
「模型世界の何を?」
「行き来について。確かあなたは模型世界には行けるがそこからの帰還については何も話していないからそこが疑問でね。」
「おぉ!そういえば話していなかったか?」
「そうですね。それが不明では私もあなたも困るでしょ?」
「確かにそれを説明しないと君のような慎重な方が行動できないか。」
「それで?その方法は?」
「……。答える前に私から質問がある。」
「なにか?」
「私が嘘を言う可能性は考えなかったのか?」
「一度は思考したが、言ったところであなたに利益がない。違います?」
「……。信頼してると?」
「信頼はしていない。が、他の参加者と比べればマシってだけ。」
「なるほど。君は意外と利口なのか。」
「とにかく私が知りたいことを教えてくれる?」
「あぁ、教えよう。が、君単体ではなく全体に、だ。」
「では、私が聞いたのは他の人を助けることに?」
「どうかなぁ?それが助けかどうかは感じ方次第だ。」
「で?私は例のカード二枚引く効果を適用されるのかな?」
「……。いいや?これに関してはこちらの説明不足だ。特別になしでいいだろう。」
「そう。それじゃあ全体連絡を待ってる。」
「うん。待っててね。」
そういい電話を切る。ペナルティを受けるかとも思ったが意外と話は通じるみたいだった。だが、そのおかげで私の中で確信に変わったことがある。それはこの『神様ゲーム』は本当にゲームで、何かしらの実験に使われているということだ。そうでないと私の質問に対して本来ペナルティをつけるべきなのにそれをしなかった理由がわからない。説明を失念していたとしてもここにいる人間ならそんなのなしでも行う奴は絶対いる。なぜならここにいる奴らは『自分の望む世界』を欲しているのだから。リスク承知で『駒』を使う奴だってゼロではないはず。そして、その大半が欲に駆られた馬鹿ども……。そんな奴がいるだろうと把握したうえで、模型世界から出る方法を伝える意図は?
彼は確かに、『慎重な方が行動できないか』と話していた。つまり、私以外にも慎重に行動をしている人が存在することを指しているはず。もしそうなら、彼的には困るのだろう。恐らく狙いは『模型世界での暴れ様と模型をどのように動かすか』この二点に主軸を置いて人間観察でもするのだろう。そのためにはデータが必要でそのデータをより多く手に入れるために私のあの質問を受けて、全体に公表し赴いて貰うように誘導するのだろう。行きたくなくても、ここから出るには主催者が考案したこのゲームをクリアしないといけないのだから……。まったく、いいように使われてるのが最高に腹が立つかな。
思考を巡らせていると、スピーカーから彼の声が聞こえてくる。
『あーあー。はい、エー皆さんに説明し忘れたことがいくつかございます。まず一つは、ご察しの通り駒使っての模型世界の行き来はどうするのか、についてですがこちらはまず行きたい場所に駒を置きまして、楽な姿勢で念じますと意識はその駒に飛ばされて視界も駒が見ている世界に変わります。もし、駒からの憑依をやめる場合は模型世界で左手を出しスマホをスクロールするように空でその動きをしてください。そうするとメニュー画面が出ますので、そこからという項目を押しますと、リアルの世界に帰ってこれます。これがまず一つですね。
続いて二つ目、仮に模型世界で外傷を負ったらどうなるのか?ということですがこちらなんと駒に皆様の意識が飛んでますので痛いとかの感覚は適用されます。が、本体は無事ですので駒からの憑依を解きますとその痛みは感じることはありません。ただし、再度駒に憑依しますとその傷による痛みが発生しますのでそちらはお気を付けください。
三つ目は、先ほどの説明の補足みたいなものになりますが模型世界内での傷の治癒は模型世界での『アイテム』によって治せます。この、アイテムですが医療系に限らず様々なものがございますのでそちらはぜひ模型世界でご確認ください。
四つ目、意識を飛ばすとお話ししましたがこの時現実で物を持っていますとその物が模型世界の『アイテム』として適用されることがございます。例えば、お貸ししている端末を持っていればそれを模型世界にお持ちできます。まぁ、一応あちらの世界でも現実の端末たちと同じ機能をもつ項目を用意しているので使用することははとんど無いとは思いますけどね。
そして最後に重要なことをお話しししますね。皆様の目の前にある模型はあなた方のゆかりの土地だと説明しましたが、同じ模型を提供されている方が複数名存在します。例えば、AさんとBさんが同じ町の出身だとしたら、駒を使い模型世界に入ったとき、相手も入っていると遭遇する可能性がございます。しかしこれはランダム要素になりますので一つの息抜きくらいに考えておくといいでしょう。
以上で私の方から説明は終わりますが、何かご説明が足りない箇所質問等はございますか?』
なるほど。やはりこれは実験だ。私らを使った人体実験みたいなものだ。極限状態にすることによって人間がどんな行動をとるのかを観察したいんだ。見えてきたぞ主催の狙いが、ただ疑問が残るのは『模型世界の傷』についてだ。あちらで怪我すれば遺体などの痛覚があると話しており、そのあとに『他の参加者が乱入するかもしれない』とも話していた。あまり考えたくないが参加者同士がもし出会って殺し合いを始めた場合、あの世界での死はどういう扱いになるのだろう?もしあの世界でも死ねば現実の自分も死ぬとなると、この模型世界も一つの『現実』になるのか?
もしそうなら、とんでもないことになる。簡単に言えば『模型世界の自分』と『模型世界の外の自分』の二つが混同して発狂するかもしれないことだ。区別がつかなくなって精神が狂うなんて話はVRが普及しだした頃に騒がれていた事件の一つだし、あれはあくまで専用の機械を頭に装着してあたかもゲーム世界にいるかのような体験ができる、を売りにしているがこれはその域を超えた。あたかもではなく、実際にその場に『自分』が存在しているのだ。まだ入ってないからなんとも言えないが痛覚があるということは五感すべてがこの『模型世界』にもあることを指すんじゃないのか?別の狙いがあるならこの線も怪しい。主催は一体何を考えているんだ?私や他の勘のいい人間がこうやって思考の海に囚われるのを狙っているのか?
だめだ。考えれば考えるほどこれは沼になる。一旦情報を整理し紙に記してそれから模型世界に入ろう。今入るのは得策ではないだろう。