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1週間が経過した
そろそろ、彼とまともなコミュニケーションをするべきだ。
もう1週間が経過するのに、未だに彼とまともな意思疎通がとれていない。
私が一方的に何かを伝える形になってきている。
このままではいけない。きちんと、彼の気持ちを知りたい。
昼休み、彼を呼んで(呼ぶといっても日本語が伝わっているかわからないので手招きで)どうすれば意思疎通がとれるかいろいろ実験してみた。
その結果、まず、彼はしゃべるのが困難らしい。人間と舌や喉の構造が違う上、そもそも聞き取れている音声すらも人間とは違うらしい。
そこで私は筆談を考えた。筆談なら、概念と文字を結びつけて教えれば、近しい意思疎通が取れるかもしれない。
それからは、昼休み、毎日彼と筆談の練習をした。漢字を教えた。持ちうる限りの言語力を駆使して、日本語の文法を教えた。
「お はょ う」
私の机に、歪な形の文字、の書かれた紙が置かれていたのは、そんな日々を過ごしてから、1ヶ月後だった。
ノートをちぎる。「おはよう」と書く。彼の机に置く。彼はそれを見た。そして
ふふっ、その顔、前に初めて林檎を食べた時の顔と、そっくり。
私は、彼との意思疎通に成功した。