テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「羅刹の噂知ってるか?」
自室に向かう途中でそんなことを耳にした、上級生か、職員か…発言元は定かでは無いものの興味本位で遊摺部は物陰へそっと隠れた。
「噂って?」
「羅刹のどっかに制服でも、隊服でも無いヤツが居るって話」
「あー…無蛇野さんとかか?確かにあの人は噂になるレベルですげぇ人だけどよ…」
なるほど、そう言う話か…大方保険医の花魁坂先生か無蛇野先生と見間違えたのだろう。娯楽になるかと思った噂話は生憎ただの見間違えだったのだと少し肩を落とした。
「いや、ちげぇんだって!」
「その人…女性なんだよ!!しかもめっちゃ美人って噂で!」
『女性』
『美人』
この二つの単語で遊摺部は男子高校生らしく帰ろうとした足を再び止めて、より一層聞き耳をたてた。
「…まぁ幽霊じゃ無いかって説もあって、なんかとある場所にしか出ないって」
「なんかあやふやだな…」
「噂どまりだからな、そんなんで良いんだよ」
実体がないかもしれない、という噂まで浮上してきたけれどそれ以上の事は全く分からないらしく、いつの間にか会話は別の物に変わっていた。
男子高校生の暇潰しとしては多大な功績をあげた噂の人物はよっぽどの美人らしい…
是非会ってみたいと遊摺部は多少ながらも気分を上げたようで自室に戻る足取りは軽かった。
「あの…無蛇野先生」
授業開始よりも前に教室に来た無蛇野に遊摺部は律儀に手を挙げて声をかける。
「なんだ」
「先生は羅刹の卒業生なんですよね」
何を当然のことをと表情も変えずに無言の圧で肯定した。
「あの…この学校に女性の幽霊が出るって本当ですかね…」
「どこで聞いた」
冷たい。感情が乗ってない声じゃ無く鋭い殺意が籠った声だった。
「……き、のう廊下で…誰かが話してるのを聞いて」
「…そうか」
肌がビリビリと粟立って震える声で遊摺部は答えた。空気が冷えている教室で唾を飲み込んだり汗を拭いたりと反応は其々だった。
「見る方が早いな…付いてこい」
生徒と目を合わせることをせず教室を出た無蛇野。
え?マジ??と顔を見合わせる遊摺部と矢颪。
幽霊と思われる存在にガタガタと震えて死ぬかもと溢す手術岾、それを温めてやると近付く漣。
顔面蒼白でなんか無蛇野先生怒ってなかった?私のせいだ…と自己嫌悪に陥る屏風ヶ浦。
1人面倒くさそうに意味がないと溜息を落としながら後をついて行く皇后崎。
その皇后崎に置いて行かれまいと歩く遊摺部ら。
「遅い」
傘を使って筋トレをしていた無蛇野がいたのは最上階。しかもその奥、2枚扉の前に居た。
最上階は基本使われていないし、あっても学園長の部屋のみ。
ここに幽霊(仮)が居る…固唾を飲み込む面々。
無蛇野はゆっくりと扉を開けた。
コメント
2件
続きがすごく気になる!!
めっちゃ続き気になります!!続きくださいお願いしますm(_ _)m