「雨栗さーーん!こっち!」
可愛く、でも男の子な声が聞こえる。
彼の方へ駆け寄ると、もう1人の男が口を開く。
「おせーよ。雨栗。1週間くらい待ったわぁー。」
彼はそんな冗談を言いつつも、内心、私が無事で良かったと思ってる。優しいヤツだ。
「ごめんごめん。ちょっとバスが遅れてて。」
「まぁ、雨栗さんいつもそんなに遅刻しないし良いか。」
彼は可愛い声で言う。声は可愛いが、見た目は男が好きなオシャレ系の服を着こなす。これがギャップ萌えというやつ。
天才肌で、天然。でも、それとは反対に謙虚で紳士。ナイトのようにかっこいい私だけど、彼に守られたら老若男女問わず恋に落ちる。
かなり前からの友人で親友。でも、私とは違ういい所がたくさんあって、それを最大限に発揮できてる。彼を見てくると、努力してきた私が馬鹿みたいに感じてくるほど天才。
「ま、そうだな。雨栗はちょっと家遠いしな。」
耳が悲鳴をあげるほどの美しい低音が鼓膜を揺らす。世界中の女性が胸を高鳴らせてしまうほどのかっこいい声の持ち主。
元々イケボでイケメンな私よりも、イケボでイケメン。私には持ち合わせてないエンターテイナーなところも、彼は当たり前のように持っている。最高の努力の天才。
近くにいるのに、どこか遠く感じてしまう。この2人は私にはもったいないほど、遠くにいる人。
「ありがと、2人とも。」
2人の優しさには敵わない。どんな無茶を言っても、賛成してくれるし、完璧にこなしてしまう。
私が2人に勝てるところなんて、果たしてあるのだろうか。
「それで、今日は俺のプレゼン!!今からここ行く!」
スマホの画像を指さしながら率先して歩き始める彼。
それに着いて行くもう1人。私は、足を踏み出せないまま棒立ち。
2人が私の動かない気配を不思議に思って、振り向いた。
「雨栗さん?どうしたの?」
「もしかしてここ行きたくないか?じゃあ違うところにするか!」
優しすぎるよ、2人とも。私の異変にすぐ気がついて、改善してくれる。
私は、きっと、2人がいなきゃ生きていけない。でも、2人は私が居なくてもどんどん遠くへ行ってしまうんだ。
「…なんでもない。2人が成長したなーって思っただけ。」
「誰目線だよ。」とツッコまれるも、2人とも嬉しそうに笑っていた。
その時、私は何かの異変を感じて、2人にこう言った。
「私、2人と一緒じゃダメ人間になっちゃうかもな。2人とも優しすぎるからね。幸せだよ、私は。」
2人がどういうこと?と聞く前に、私は2人の前に走って飛び込んだ。
飛び込んだ私の元には、制御が効かなくなった車が勢いよく突っ込んだ。
周りの人の悲鳴と、2人が私の名前を大声で呼ぶ声だけが最後に聞こえた。
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え、Amさん、タヒんッ...!?