「交通事故で、意識不明なんだよね、今。思い出したよ。」
私は2人を庇って事故に巻き込まれた。2人がここにおらず、気配だけということは2人は生きているんだろう。安堵の息がこぼれた。
意識不明の私は、どれだけ無様な格好なんだろう。笑ってやりたいくらい不細工な顔で寝てるんだろうな。2人に負けるくらい、男らしさを失ってるんだろうな。
「私は、本来は死ぬ運命だった。でも、2人の意思が強すぎて神様がチャンスをくれてるんだよね。」
2人のことは最初は分からなかった。死んでしまう運命だったから。2人のことを思い出せなければ、私はとっくに死へと一直線だったんだろう。
でも、思い出せたのはきっと、2人のおかげ。絆だけが頭の中にこびりついて、記憶を呼び覚ました。私が、君たちが運命を変えてくれた。
「私、2人のことが大好き。忘れられない。幸せな日々を忘れることなんて、死んでもない。」
私たちの絆はこの赤い糸のように永遠に繋がっている。どんなに離れようとも、絆の糸は幸せだった日々を永遠に映し出している。
「今、そっちに行くからね。」
まるで、大切な人を追って死ぬ人みたいなセリフ。だけど、そんなセリフの運命も塗り替えて、私は生きている君たちの元へ行く。
2人の気配は握ったまま、私は湖に身を投げた。
ドボン大きな音を立てた。私たちを拒む水に揺れる赤い糸。どんなに鋭い刃が突き刺さろうと、どんなに膨大なお金が目の前にあろうと、この糸は切れることの無い。永遠の糸となる。
ただ、少し思い出せないことがあった。
君たちの顔と、名前。
優しい顔だったかな。たくましい顔だったかな。
名前は長かったかな。あだ名で呼んでたかな。
私は雨栗。風が吹いても、大雨があっても、雷が鳴っても雨栗。事故に遭っても、湖に飛び込んでも、仲間を忘れても雨栗。
君たちが愛してくれた雨栗。君たちと思い出を作り上げた雨栗。
何があっても、何をしてても、私は私。君は君。
私が愛した君たち。私と思い出を作ってくれた君たち。
今から会いに行く。あったら1番最初の言葉は笑った顔で君たちの名前を呼びたい。
だから、君たちも笑顔で私を呼んで欲しい。
前に感じてた寂しさはきっと、君たちがいないからだ。
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