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翌日、『竜の餌場』には『北の魔術師』バストロの悲鳴が鳴り響き続けていたのである。
悲鳴を上げさせているのは昨日レイブ達が三頭倒した魔物、巨大なウサギのモンスター、ジャッカロープだ。
如何(いか)に強力な魔物相手とは言え、熟練の魔術師が一方的にやられるとは思えないのだが?
ふむ、少し時間を戻って観察してみる事にしよう。
…………
なるほど、納得した……
この事態の切欠(きっかけ)は、朝食時のバストロ自身がレイブに訊ねた質問であったようだ。
「なあレイブ、昨日は聞きそびれちまったが、一体どうやってジャッカロープを倒したんだ、それも三頭だろ? 揃って頭部を破壊していたよな? それも噛み千切られたみたいになっていたじゃないか、どうやったんだよ?」
レイブは豆ガラで嵩(かさ)増しされたカチカチのパンを咀嚼しながら答える。
「呪文を唱えたんだよ、『反射(リフレクション)』てね、そしたらあのウサギが勝手に死んだんだよ」
「ほー呪文ねぇ、リフレクションなんて魔法聞いた事も無いが…… そんな物どこで覚えたんだ? 元々知っていたのか?」
レイブはまだ咀嚼を続けながら首を左右に振って答える。
「ううん、ウサギから逃げている時にね、神様に教えて貰ったんだよ、『ロードランナー』って呪文をね、そのお蔭で逃げられたんだけどさ、ウサギを倒したいって神様に伝えたら教えてくれたんだ、ウサギの前で『反射(リフレクション)』って言えば勝手に死ぬからやってみろって、んでそうなったって訳、あ、それと倒したら『解除(リリース)』って言わなくちゃいけないんだって、絶対だ、って言ってたよ、ゴクンッ」
固いパンをやっと飲み込んだレイブは躊躇も見せずに次の一口を噛みとって再び咀嚼を始める。
勢い良くモグモグモグモグ噛み続けているレイブを見ながらバストロは言葉を続ける。
「兎に角、だ、ジャジラト・アルティニン、『竜の餌場』に行けば神様が居るんだよな? 一つお目に掛かって直接話を聞いてみる事としよう」
「いないよ」
「何? んじゃあどこに居るんだ? 住処(すみか)の場所とか聞いているのか?」
レイブは片方の頬に詰め込んで噛んでいたパンに加え、もう一方にも噛み千切った豆ガラパンを押し込みながら答える。
「どこにも居ないよ、だって神様だもん! 頭の中に直接話し掛けてくれるんだよ! 判るでしょ? おじさ、師匠?」
バストロは即座に答えた。
「なるほどな、全く訳が判らん」
こう言ったやり取りを経た結果、論より証拠、百聞は一見に、ってやつで、ジャジラト・アルティニンへとやって来たバストロは気楽な感じでこう言ったのだ。
「とりあえずやってみるか、『反射(リフレクション)』だったな? お前ら少し離れて居ろよ? 怪我でもしたらつまらんだろ!」
そう告げた後、皆に先行しながらふらふら歩き周り、エンカウントしたジャッカロープの前で、無防備なままたった一言だけを唱え続けたのであった。
『反射(リフレクション)』
と……