ぼくの友達は、時々この話をする
『この学校の屋上には、時霊殺とゆうものが存在する、ぼくは見たんだ』
じれいさつ、時霊殺とゆうのは、よくある都市伝説の一つ
時霊殺に出会う方法や条件は、どの都市伝説が載っている本にも書かれていない
謎が多い存在らしい
ただ容姿だけは、特定の本にのみ書かれている
『
肌は色白、ワンピースのような服を着ている
少女
』
これも大まかな情報だけどね
そして顔は、どの本にも書かれていることが違う、きっとデマだらけなのだろう
そもそも顔はないだとか、驚愕するほどの美少女だとか
友達も、顔はよく見えなかった、としか言わない
出会ったなんて嘘なんだろお?なんて話しつつも、ぼくはこの頃時霊殺に興味を抱いていた
調べることにした
時霊殺について、もっと詳しく
まずはネットで時霊殺について調べた
いろいろな情報がでてくる
けれど、どの情報を調べても、それは時霊殺に出会った人々の呟きばっかり
友達と同じで、顔は覚えていない人がほとんど
容姿も覚えておらず、出会ったとゆうことだけ覚えているとゆう人もいた
時霊殺に出会った後のケースは、だいぶ人それぞれのようだ
そしてこのこと以外の情報は、深く言及する者がいなかった
ただ一つ、特別な情報を得ることができた
時霊殺と出会う時、予知としてなのか視界に映るものすべての色が見えなくなる
とゆうものだ
私はそれを気にしてか、学校の屋上へ向かうことにした
予知の症状もでていないけれど
『もしかしたら』とゆう謎の期待に賭けたのだ
まあ…案の定、時霊殺は姿を見せなかったわけだけど
そんな時霊殺の都市伝説が噂され始めてから、
2年が経った
急展開だなだって?思い出話だなんてそんなもんさ、常に急展開だもの
それはさておき、なにか事件でも起きたのか、時霊殺の詳細や本に載っていた情報が全て消えた
時霊殺のページだけ取り消し、発行しなおした物だけ並ぶようになった
それのせいか、時霊殺の都市伝説は、徐々に徐々に…忘れ去られていった
仕方がない、ネットでも本でも、すべての情報が消えたのだから
そんなあるとき、いつもの学校の帰り道で
声をかけられた
二人の女の子だ
一人は青い髪、もう一人は赤い髪
双子のようで、顔立ちがそっくりだった
青い髪色の子は私に向かってこう言う
『学校で、緑色髪の、黒いワンピースを着た子は見かけませんでしたか?』
その瞬間はっとした
この特徴は、時霊殺と全く同じだ
この子達は時霊殺のことを調べているのだろうか、いやでも…時霊殺の髪色緑とは言われていないし…
でも緑髪の女の子なんてここ付近は早々 いないだろう
そもそもここ田舎だし、都会ならわかるけど
いや田舎に派手髪な子がいないとは限らないけど、この子達も結構明るい髪色だし
どっちにしても、時霊殺のことも、緑髪の女の子の居場所も、私は知らない
『ごめんね、その子は学校で見かけなかったよ』
そう声をかけると、礼を言ってからぺこりと頭を下げ走り去った
まだ小さいのに、礼儀のある子達だなあ
そう考えていると、突然視界が黒一色で埋め尽くされた
驚いて体勢を崩す
何回か瞬きをすると、いつもの帰り道が映る
何秒か安心していた自分もいたが、その安心はこれまた一瞬で砕け散った
あたりの色がなくなっている
これは…時霊殺の予知だ
私は体を立て直し急いで学校へ向かった
部活のおかけで外はだいぶ暗くなっていたから、同じ学生の子は見かけなかった
閉まっていた校門をこじ開け上履きも履かずに屋上へ向かう
なにかに取り憑かれたかのように私はこの時
時霊殺に会うことだけを考えていた
今思えば、なぜそこまで時霊殺に対して関心を持っていたかわからないけれどね
階段を爆速で登り、屋上の床の一歩目を踏むとそこには
時霊殺であろう者がこちらをみて立っていた
瞳も口も、真っ黒
ずぅっと口角は上がっていて、こちらを見続けてくる、口も開きっぱなし
恐る恐る足を動かして時霊殺に近づくと、
彼女は開きっぱなしの口を動かして言う
『久しぶり』
??
困惑した、頭の中が困惑で埋め尽くされた
久しぶり…??僕は時霊殺に会ったことはない
時霊殺の都市伝説をみなければ、彼女の存在を知ることもなかったはずなのに
『し、失礼なんですが…僕たち、会ったことありましたっけ?』
う…我ながら失礼すぎる質問だ…と、自分から言っておいて後悔する
けれど時霊殺は目元を優しく緩めて、話してくれた
『覚えてない、うそ、きた
赤髪、青髪、みた、げんき』
この子は話すことができないのか
言葉の単語を一つ一つ並べて伝えている
赤髪と青髪、このフレーズを聞いて思い出す
そっくりさんな双子のことを
双子の子達はこの子を探していて、この子は双子の子達を探しているんだ
伝えよう、どこにいたか
『みたよ、ここから…西に曲がって、駄菓子屋があるんだ、そこからまっすぐ進んだところにいたよ』
元気だったかを聞かれているのになんで場所を教えているんだ、と自分のコミュ力の低さに凹む、すると案の定こう返される
『げんき』
『う、うん!君のことを探していたよ』
そう言うと、時霊殺は嬉しそうな顔をした
けれどその表情には、どこか悲しみの感情も感じ取れた
『そっか、わたし、がっこう、でる
ともだち、ばしょ、いく』
友達、双子のあの子達がいる場所へ帰るのだろう
この学校から出て…
『うん!いいと思うよ、きっとあの子たちも、君が帰ってくるのを待っている』
僕はそう声をかける、なぜ屋上にいたのかも
都市伝説になっているのかも
まったくわからないけれど
そろそろお別れの時間、とゆうことはなんとなく察することができた
『久しぶり、ありがとう、むかし、まってた
大丈夫』
『昔…?』
昔…だめだ全然思い出せない
小学校低学年の頃の話か…?でもそんな前から時霊殺の都市伝説なんて
あっ
『忘れていなかったから?ってこと?』
そう言うと、時霊殺はこくり頷き
フェンスに腰をかけた
『わわっ、危ないよ』
思わず声が出る
時霊殺は変わらない笑顔を向けて、なにかを呟きながら飛び降りた
『あっ』
あの子はおそらくもう…幽霊となっているはずだ
しなないとゆうことはわかっている
双子の子達に会うために、飛び降りたのだろう
まったくお騒がせ幽霊だったなあ…そう考える
時霊殺だなんて怖い名前がついていたが、当本人はとてもいい子だ
やっぱり、噂なんて信用しない方がいいんだな
そう呟くと、視界がまた黒一色に埋め尽くされた
不思議と、この時は安心感を覚えた
いつも通りの、少し古くなった屋上
上を見上げると、美しい夕焼けが映る
僕も帰ろう、家に
お母さんとお父さんがいる場所へ
それぞれ帰るべき場所がある
あの子は帰る場所を見失って、迷子になっていただけなのだろう
けれどもう平気さ
屋上にいたあの子は
きっともう大丈夫だから
ぼくはフェンスによじ登って、時霊殺にまつわることが書かれた本を、手から離し落とした
もう彼女は自分の存在を、忘れ去られて欲しいはずだから
双子のあの子たちも
彼女は双子に会えたなら
『あっ、そういえば
時霊殺…覚えてる?最近聞かなくなったよなー』
『ん、あぁ…いや、そんなの…あったっけ?』
『えぇ!?夢だったのかなあ』
『はは、そうかもね』
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